洞窟を調べよう!
予想通り、私もザインもいい感じに寝不足。まあ、あれはしょうがないよね……ほんとにドキドキしたし。
で、でも、たまにはやってもいいかも……い、いや、やっぱりダメだね!あれは封印しよう!うん!パンドラの箱みたいなもんだね!
「あんたら、それで探索とかできるの?」
ガリーナはでっかい隈を作ってる私達を見て呆れ顔。いや、面目ない。
「正直眠いけど、魔力とかは戻ってるから問題ないよ。リィンは?」
「私もだよー。めっちゃ寝たいけど」
「ま、それならいいけど。ただ、ちょっと探索行く前に一つ、いい?」
一体何だろうと、私もザインも首を傾げる。すると、ガリーナは私をビシッと指さしてきた。
「あんた、服装が野暮った過ぎない!?ていうか、ほぼ奴隷服じゃない!?なんでそんなことになっちゃってるわけ!?お洒落とかしないの!?」
「ん、最初は違ったんだよー。こういう服、最初は作ったんだけどさ」
言いながら、私はザインのメモ用紙とペンを借りてさらさらっと制服風コーデの絵を描く。
「絵、うまいね……」
「確かにね。で、なんでこれじゃないわけ?」
「ザインがさ、飛ぶとパンツ見えるからやめてって」
私が言うと、ガリーナはチベットスナギツネもかくやという顔でザインを見つめた。
「いやっ、ちょっ、だって、しょうがないでしょ!?スカートそれ短いし、リィンひらひら飛ぶし!」
「うーん、それはまあ、確かに。で、他には案は無かったの?」
「ワンピースも同じ理由で却下。体にぴっちりした服も作ってみたんだけど、逆に、その……クるって」
全部絵に描きながら説明していくと、ガリーナは呆れ切った表情になった。
「そこで体のラインを出しまくる服を作ろうと思うセンスは真似できないわ。さすがね」
へへー、ガリーナにも褒められちゃった!縦ロールはもうしばらく生き長らえさせてやろう!
「で、もういいやって思ってこれ作ったら、やっと合格って感じ!」
「なるほどねー。言われて見れば、作るのも考えるのも面倒になったってよくわかるわ」
そこまでわかるのか。お前は魔法使いか?魔法使いか。
「けどね、女の子がその恰好は、ちょっと残念すぎるでしょ。私、少し端切れ持ってるんだ。今いい服作ってあげるから、ちょっと待ってて」
「あ、いや、別に新しい服を求めては……」
私が言いかけると、ほぼ空気だったゼルがポンと肩を叩いて来た。
「ああなったら、お嬢は止まらねえ。諦めろ」
「お嬢って呼んでるんだね。名前では呼ばないの?」
「そう呼べって言われてるんでな。とにかく、待ってやってくれ。悪いようにはならないと保証する」
そんなわけで、私達は仕方なく服の製作が終わるのを待つのだった。しっかし、この子楽しそうに裁縫するねえ。
「じゃーん!男子乗馬服風、スカート付きパンツスタイル!これならお洒落だしかっこいいでしょ!?」
「う、うん。それは、うん」
真っ赤なジャケット……じょうらんとか言うんだっけ?に、胸元には白いフリルが付き、一見男用に見えてしっかり女の子らしさを強調。
下は赤と白のスカートだけど、その下にはしっかり白の乗馬ズボンを履いている。ザイン対策か、なるほどね。
服に合わせて、靴は長靴。西部劇みたいにくるくる回る拍車とかはついてない。ちょっと残念。
で、こんな手の込んだ服を作るのにかかった時間が30分てどういうことなの……服飾で食ってくつもりか?ドール専用服飾でもやるのか?
「うんうん、やっぱりかっこかわいいね!せっかく素材が良いんだから、お洒落しなきゃもったいないよ!」
素材の自慢か。確かに肌触り良いけど、私達が貧乏だと言いたいのか!?でもまあ、くれるんなら許す!
「ありがとねー。ザイン、どうかな?似合う?」
羽もしっかりばっちり出せるようになってるのが嬉しいポイント。全然邪魔にならないどころか、雑に作った貫頭衣より動きやすいかも。
「う、うん。すごく似合ってる。いつもと全然イメージ違うね」
「えっへへー!今日はアクティブリィンなのだー!」
「お前はいっつもアクティブだろ……」
黙れ空気。空気の自覚を持て。
「それじゃ、ちょっと遅くなっちゃったけど行きましょ。場所はわかってるから、案内するわ」
「わかった。ガリーナさん、よろしくね」
「この先は呼び捨てていいわよ。こちらこそよろしく、ザイン」
そうして、私達はようやくアンデッドが溢れ出したという洞窟へ向けて出発するのだった。
で、徒歩二分で到着。えれえ近い洞窟だなおい。
「ここ?なんか……腐臭が……」
鼻を押さえながら、ザインが顔を顰める。横を見ると、ガリーナも同じような顔になっている。
「ゾンビ共が溢れ出したからでしょうね……じゃあザイン、前衛は任せていいわよね?」
「うん、任せて。リィン、明かりよろしく」
「いいよー。それじゃあリィン流魔法術『LED懐中電灯』!」
アルディオの時と同じく、私は照明係。やっぱりというか、この魔法にガリーナが反応して、仕組みをざっと説明したけど、指向性のある光っていうのがイメージできなかったのか、珍しく悪戦苦闘していた。
でもザインが『リィンの真似すれば?』と言ったところ、あっさり成功した。でもすっごく不機嫌になった。自分で理解したいタイプなんだね。
そして、私達は慎重に洞窟内を進みだした。臭いは確かに強烈。しかも奥に行けばいくほど強まってくる感じ。
「しっかし、臭いなあ……頭くらくらしてきたよ」
「あたしもちょっと……眩暈してきたわ」
ん?何か、変な……というか、引っ掛かると言うか……いや、やばい。やばい気がする。いや、気がするんじゃない!これは確実にやばい!!
「ザイン!ガリーナ!すぐに戻って!今すぐ!引き返して!」
「えっ、えっ!?何、何なの!?」
「そっこーで戻らなきゃダメ!とにかく早く戻って!ほんと今すぐに!!!」
私が血相を変えて騒ぎ立てると、ザインが真剣な顔でガリーナに話しかけた。
「リィンがここまで言うってなると、相当危ないことがあるみたい。一旦引こう」
「で、でも!あたしがいればアンデッドなんて……!」
「たぶん、アンデッドじゃない危険があるんだよ。とにかく、一旦引こう」
ガリーナの手を引くようにして、ザインは元来た道を急いで戻る。入口まで戻ると、ザインとガリーナは大きく深呼吸をした。
「はぁ……ここまで来ると、臭いはマシになるね。気分もちょっとマシになった」
「それはあたしもだけど、何だったの?何の危険があるって言うの?」
「正直、確証まではなかったんだけど、確証得られたら手遅れだからね!だからみんな、何か小動物!小鳥でも兎でもいいから、一匹捕まえてきて!」
「え、なんで小動物を?」
「いいから!捕まえられたら実証に出るよ!」
そして、私達は手分けして何かいないか探した結果、ザインがホーンラビットを捕まえてきた。こいつほんとどこにでもいんな。
ザインにはそのままホーンラビットを持っててもらい、先頭を歩いて洞窟の中に入ってもらう。
角を掴まれたホーンラビットは実に活きが良く、じたばた大暴れしてたけど、二人がまた気分悪くなってきた辺りで、ホーンラビットの動きが小さくなってきた。
「あ、あれ?こいつ……弱ってる?」
「やっぱりね。ザイン、そいつを奥に放り投げてみて」
「え、危なくない?」
「危なくなくなるよ、予想通りなら」
半信半疑ながら、ザインはぽいっとホーンラビットを放り投げた。すると、ホーンラビットは受け身すらとることなく、地面にどさっと落ち、数回痙攣した後、そのまま動かなくなった。
「えっ!?し、死んだ!?」
「うそ!?な、なんで!?そんなに強く放り投げてないよね!?」
やっぱりか、危なかった。抗夫がカナリア持って歩いてたって話は聞いてたけど、やっぱり先人の知恵って大切なんだなあ。
「ゼ、ゼル!?どういうこと!?説明して!」
「い、いや、俺に言われても……」
いきなり話を振られた空気野郎は困惑している。ほんっとサポートしねえサポート妖精だな!!
「鉱山の項目調べればいいよ!あと、ここじゃなくて外でやろうね!このままいると、次にああなるのは私達だよ!」
私の言葉に、全員がいそいそと出口に向かう。その間に調べられたらしく、ゼルが説明のために口を開いた。
「ど、どうやら毒ガスが充満してるみたいだな。種類まではわからんが……何にしろ、このまま進むのは自殺行為だ」
腐臭に紛れて毒ガスというトラップなのか、それとも臭いガスに腐臭を偽装してたのか。ただ、ここにアンデッドが大量にいたっていうのは、何となく人為的なものを感じる。
「ところで、リィンとゼル君は大丈夫だったの?その……かなり小さいけど」
確かにね!でも、そこは心配ご無用!ていうかサポート妖精が先に死んでたら世話無いからね!
「全然平気だよ!私達はね、環境の変化にはすごく強いの!それこそ毒とか、気温の変化とか、そういうので死ぬことはほとんどないよ!クマムシみたいなもんだね!」
「クマムシ?そんな虫いるんだね……あれ?でもリィン、宿屋の隙間風寒がってなかった?」
「寒いものは寒いよ!死にはしないけど寒いのは嫌いだよ!」
「そ、そうなんだ」
うーん、何とかして調べたいけど、それには酸素ボンベとかが欲しい所だよね。でもさすがにそんなものないし、どうしたものかな。
と思っていたら、ガリーナが胸を張って言った。
「じゃ、あたしが中に思いっきり空気を吹き込んでやればいいわね?これ以上ないくらいに全力で!」
「洞窟壊れるんじゃない?それはそれで一つの手だけど」
「調べる前に崩れるのは困るわね。じゃ、崩れない程度に加減してやりましょうか。ザインとリィン?も、もちろんやるわよね?」
「じゃ、私は逆に吸い出す係やるね。だからザインとガリーナは、上から空気吹き入れて」
「いいけど、なんで上から入れるの?」
「毒ガスは大抵、空気より重いんだよ!だから下から毒ガスを吸い出して、空いた部分に空気を送り込むって感じにすると効率いいよ!」
私が言うと、ガリーナは魔法の準備をしつつ、私のことを感心したように見つめてきた。
「あんたの妖精、知識量凄まじいわね……頭の中身だけ、うちのゼルと交換してもらえない?」
「お嬢!?」
「それは遠慮してほしい。リィンの見た目で中身がゼル君とか、割と嫌だ」
「言っておいてなんだけど、ゼルの見た目で中身がその子ってのもやばそうね……知識だけ渡せればいいのに」
「神様からの知識丸暗記すれば楽勝だよ!」
「丸暗記するまでに、お嬢の人生が終わると思うぞ……」
こうして、私達は洞窟に突入しないまま、洞窟換気作戦を実行する羽目になるのだった。
そして、この大規模作戦のせいで三人とも魔力を使いすぎたため、探索はさらに明日まで延期されるのだった。
今日の成果=お洒落な着替えを手に入れ、洞窟内を換気した。
ガリーナはお人形が好きで、着せ替えを楽しむうちに自分でも作るようになっちゃったんだとか。親からはやめろと言われてたけど、こっそり続けて腕を磨いたらしいよ。
親からやめろって言われても続けるとか、ちょっと親近感が湧くね!




