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共闘してアンデッドの群れを殲滅しよう!

 私達の現状は、濃厚な毒ガスに満ちた縦穴の中で、大量の、しかも強化されたと思しきアンデッド相手に、戦って勝たなきゃいけない。

 しかも、何のガスかわかんないから炎厳禁。頭の氷を破壊されたらザインとガリーナは死亡。時間がかかっても酸欠で死亡。かなり不利な条件だけど、生き残るにはやるしかない。

「ザイン、まずは私が露払いする!その後に来て!」

「ん」

「ガリーナ、炎以外の大規模魔法で一気に殲滅、できる!?」

「や、やってはみるわ!」

「ゼル、邪魔だけしないで!」

「俺だけえらく冷たくねえか!?」

 全員に指示を出すと、私は真下に飛び、アンデッドの群れに飛び込んだ。そして手を左右に突き出し、意識を集中する。

「リィン流魔法術『風刃 回転鋸』!ぶった切れぇ!」

 私の身体の周囲を、極薄の風の刃がグルグル回る。あっという間に10体程の首を切り落とし、ザインに声をかける。

「今だよ!」

「……」

 ザインはシャベルを引き抜き、無言で飛び降りてくる。着地前にウィンドブロウで衝撃を減らし、挨拶代わりにシャベルを一閃する。

「いいザイン!?頭にだけは絶対食らわないで!あと極力省エネで!私は照明係しつつ、隙を見て頭の交換するから!」

「ん、よろ、リィン」

 ザインはその場に留まり、襲ってくるアンデッドを撃退するやり方で戦い始めた。ガリーナはと言うと、さっきぶら下がってたところに氷の足場を作り出してそこに乗っている。

「ウィンドカッター!ザイン、後ろに2体回り込み中!でも一体撃破!」

 私も全体を照らしつつ、ザインに情報を送りながら援護をこなす。ザインはきっちりそれに反応しつつ、ほぼ動かないままに敵を撃退し続ける。

 このままなら何とかなるかと思いきや、ザインがスケルトンの一匹に頭を殴られるのが見えた。

「ザイン!?」

「っ……!」

 氷は……無事だ!かなりヒビいってるけど、何とか耐えられたみたい!

 見れば、そのスケルトンはメイスを持っており、身体にはボロボロになった鎧を着込んでいる。生前は騎士か戦士だったみたいだね。

「……動き、読めない」

 ザインの緊張した声が響く。そうか、完全に骨しかないから、視線も筋肉も読めないんだ。

「な、何とか頑張って!今、次の氷用意してるから……!」

「視線、切ったら死ぬ。無理」

 そ、そこまでやばい相手なのか。でも、絶対ザインの酸素残り少ないはず……ああ、やっぱり!何もしてないのに息が荒くなってる!

「ザイン、無理しないで!逃げても何でもいいから、氷の交換だけしなきゃ!」

「なら、倒すしかない」

 あああもう、ガリーナの魔法は!?今あっちは!?そう思って氷の足場を見上げると、驚くような光景が目に映った。

 へたり込むガリーナに、それを叱咤激励するゼル。やばいやばいやばいよぉ!ここで支援期待できないとか、ほんと死ぬんだけど!?

 下では、ザインとスケルトン戦士の戦いが再開されている。あのスケルトン戦士、魔法強化が為されてるらしくて動きが尋常じゃなく速い。下手したら生前と同じ動きしてるんじゃ?ってレベル。

「ああああああもう!もう!もう!ならザイン!私が勝手にやる!本当に一瞬だけ、氷消すからね!!」

 だったら、私が何とかするしかない!とにかく上から風を持ってきて、下の空気と混じらないようにその一団を保護しつつ、それをザインの顔の周囲に配置!

 そして氷解除!からの、氷生成!!よし、ギリ何とかなった!

「よぉし!それ、前以外は硬めにしてあるから!兜代わりに使って!」

「ありがと」

 シャベル対メイスの戦いは続き、合間に他のアンデッドも襲ってくるけど、ザインはうまく誘導して同士討ちを引き起こしている。

 けど、そんなの焼け石に水。アンデッドはまだまだいっぱいいるし、どれだけ頑張れば切り抜けられるか、見当もつかない。

「ガリーナお願い!早くー!」

 思わず叫んでしまう。それでついそっち意識を集中したのか、上の二人の会話が聞こえてきた。

「お嬢!あいつらが限界だ!助けてやらないと!」

「で、でも!もし失敗したら!?炎を使っちゃダメなんでしょう!?でも、あたしは炎のイメージしか持てないの……!」

「やれる!絶対にやれる!お嬢!もっと自分を信じろ!」

「信じてたわ!今までなら!でも、何もできないあたしを、同じく落ちながらでも守ってくれたあの二人を助けたいって思ったら……体が、動かない……!失敗したらって思ったら、怖いのよぉ!!」

 どうも、ガリーナは失敗恐怖症になってしまったようだ。何もこの場面で……とは思うけど、この場面だからこそか。

「二人が死ぬのは嫌……けど、私が二人を殺すのはもっと嫌なのぉ!!」

「だからと言って、見殺しにするつもりはないんだろう!?」

「ないわよ!でも、死なせたくないし殺したくないの!どうすればいいのよぉ!」

 ガリーナの叫びに、ゼルは急に落ち着いた声で返した。

「成功させればいいだけだ、いつもみたいにな」

「い、いつもとは全然……!」

「同じだ。いいかお嬢。あんたが、初めて家族に魔法を披露した時はどうだった?緊張してたはずだが、失敗したか?」

「い、いえ。成功したわ」

「じゃあ初めての実戦では?不意打ちを食らった時は?ゴブリンの群れを殲滅した時は?」

「全部……成功した、ううん、させたわ」

「なら、今回も同じだ。自信を持て、お嬢。あんたは失敗しない……俺はそう信じてるんじゃない、しないんだと知ってる。こんな奴等、余裕で片づけられるってな」

 ガリーナは二回ほど大きな深呼吸をすると、今までとは打って変わって落ち着いた声で答えた。

「そうね……勇者ガリーナは、こんなところで躓く人間じゃないわ。それに考えてみれば……炎以外でも、やりようはあるわ」

 ザインが攻撃を受ける。メイスがもろに頭に入ったけど、ザインは構わず首を刈り取り、スケルトン戦士を倒すことに成功した。その代償に、氷にはヒビが入った。

 けど、今度はやたら動きの速いゾンビが3体襲ってきた。咄嗟にエアカッターで応戦したけど、ゾンビはそれをかわした。

「……地獄を統べる死神よ。死を司る死神よ。その手を逃れ彷徨い歩く、哀れな亡者を捕まえよ」

 体勢を崩した一体の胸にシャベルを突き刺し、それを別のゾンビに投げつける。けど、最後の一体がザインの頭を殴りつけ、氷に亀裂が走る。

「地底に、地表に、その目は全ての亡者を捉える。その目から逃れる亡者などありはしない」

 ザインを襲うゾンビに、後ろからエアカッターで斬り付ける。ザインはそれを横目で確認して、さっきゾンビを投げつけて体勢を崩した奴の首を掘り、切断する。

 遠くから、別のゾンビが投石を開始する。ウィンドブロウで弾き返すけど、その間に別のゾンビが襲ってくる。さらにはスケルトンのお代わりまで来た。

「今この地に集うすべての亡者を、その目で捉えよ。お前が捕えるべき者を、しかとその目で見定めろ」

 やばい、これ以上はやばい!ザインがアンデッドの群れに飲み込まれる!これ以上は本当に無理!

「勇者、ガリーナの名において命ずる!コキュートス、顕現!」

 詠唱が終わった瞬間、アンデッド達が一匹残らず、びしりと凍り付いた。本当に一瞬のことで、私もザインも何が起こったんだかわからないほどだった。

「これ、は……ガリーナ、やってくれたんだね」

「そう……みたい」

 さすがに、ザインの声も心の底からホッとした声になってる。正直、今回ばかりは死んだと思ったよ、マジで。

「ザイン!リィン!二人とも、無事!?」

 上からガリーナの声が聞こえる。それに対して、ザインは手を振って答えた。

「何とか大丈夫!ありがとうガリーナ、助かったよ!」

「あ、当たり前よ!この程度、あたしにとってはなんてことないわ!」

 ザインを殺しちゃう~って泣いてたの、私は知ってるんだからな!?うちのザインをマジで殺しかけやがって!

 でも、まあ、許す。結果として、私達は生きてるし、アンデッドの群れは無事に殲滅できたし。

「やぁったね!天下御免の大勝利ぃ!いえーす!」

 氷で階段を作って降りてくるガリーナ達に駆け寄ると、私達は全員で拳をぶつけ合い、お互いの健闘を讃え合うのだった。

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