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(ジョニー・ビー・バッド)6

 モーリスとデビットが同時に槍を突き刺した。

ヘルハウンドの番の耳に。

耳の穴が小さくても、槍の穂先が錐の形状をしているので、

難無く侵入できた。

後は身体強化に任せて押し込むだけ。

そのうえ、モーリスとデビットは握る柄を回転させた。

抉って耳の穴を押し広げた。

一瞬の勝負であるので遠慮はない。


 ヘルハウンドにとってはこの短い時間は地獄であっただろう。

反撃しようにも、逃げようにも、《電撃》で足が固定されたままなので、

身動きが許されているのは身体を捩る事くらい。

しかし、その前に耳を極められた。

穂先の嫌らしい回転で押し広げられ、ついには頭蓋骨にまで達した。

ヘルハウンドには泣き喚くしか残されていなかった。


 ジョニーはМPは無論、HPにも問題はなかった。

ただ、気力が・・・。

子供なので耐性が不足しているのだろう。

あのアルカビルキング討伐の時と同じだ。

要するに経験不足なのだ。

護衛のアレックスが背中を支えてくれたので辛うじて立っていられた。

アレックスの心配りに感謝感謝だ。


 ジョニーは久々に《並列処理》を起動し、

その上で《サーチ》と《マップ》を重ね掛けした。

まずヘルハウンドを視た。

МPとHPの数値が緩やかに減少していた。

流石はヘルハウンド、簡単には死なない。

が、このままでは死に至るのみ。


 モーリスとデビットの槍が反対側の耳から顔を覗かせていた。

普通であれば勝利と思い込み、直ぐに槍を引き抜くもの。

ところがそこはAランクの冒険者パーティ。

槍を突き刺したまま手を離した。

ヘルハウンドを槍付きのまま放置した。

こちらの処置も流石はAランクの冒険者パーティ。

魔物によるが、治癒や再生のスキルを備えた輩が存在した。

それを慮っての処置。

槍が頭部に残ったままでは治癒も再生も中途半端に終わる。

残酷に見えるが仕方のないこと。


 ジョニーが《電撃》を維持したままなので、

ヘルハウンドはその場に膝を屈するように、して身を伏せた。

声はない。

ジョニーはそれを横目に、周辺を警戒した。

Aランクのマチュウが探知士なので、警戒しているとは思うが、

ダブルチェックは必須。

黙って《サーチ》と《マップ》で視た。


 デストリシアンからの念話が届いた。

『ギーギー、弱い魔物しかおらんわ。

こいつらで我慢するか』

 好戦的なポールらしい発言。

それにポロポロが呆れた。

『ゆっくんせえへんか、ギー』

 この二匹を周辺の警戒に当たらせていた。

ジョニーの影に潜むポーラが注意した。

『勝手に戦っては駄目よ。

人の目を気にしなさい』


 Aランクのマチュウの探知に引っ掛からぬように、

少し離れた高所を飛ばさせていた。

たぶん、探知されないと思う。

いや、そう思いたい。

ポロポロは良いとして、ポールは好戦的な上に無頓着なのだ。

ジョニーは念話に参加した。

『ポール、駄目なものは駄目なんだ。

聞き分けがないと送り返すよ』

 召喚主は送り返す事が出来た。

その送り返すが、どのような形になるのかはジョニーも知らない。

これにポールが慌てた。

『ギーギー、ギーギー、ごめんなさいごめんなさい。

言うことを聞くよ、だから送り返さないで』

 その低姿勢な言いようからすると、

召喚される側は実態を知っているようだ。

おそらくだが、塵芥の類での返送になるのかも知れない。

ポロポロが笑う。

『ポール、一度返して貰えば』

『やだよ、絶対にやだ』


 付近の魔物を視た。

こちらに近付いて来る様子はない。

明らかに、こちらの戦いに巻き込まれないように迂回していた。

それはそうだろう。

断末魔とはいえ、ヘルハウンドは腐ってもヘルハウンド。

この辺りでは見かけない上位の魔物。

加えてそれを倒したAランクの冒険者パーティがいた。

迂回するに如くはなし。


 ジョニーは、はたと気付いた。

デストリシアンのことだ。

初期から彼等は相手の耳を攻撃していた。

それは攻撃力が弱いからだとばかり思っていた。

確かに攻撃力は弱かった。

が、今回の事で思い違いに気付いた。

弱者には弱者なりの戦い方がある。

相手の弱点を突くのが正しい、と。

防御力の高い外皮や剛毛を攻撃するのが間違いなのだ。

無駄な攻撃ほど虚しいものはない。

 ただ、お尻の穴は嫌だ。

場合によってはウンコ塗れになってしまいそうで、怖い。


 ジョニーはそろそろ頃合いと思い、ヘルハウンドを視た。

予想通りに死んでいた。

ヘルハウンドの足を拘束していた《電撃》を解いた。

すると早速、モーリスとデビットが槍を回収した。

槍を抜いた途端、耳から血混じりの脳味噌が噴き出した。

予期していたのだろう。

モーリスとデビットは素早く身を躱した。

そこへAランクのアンドレが加わった。

「血抜きするか」

 得意の風魔法でヘルハウンドの番を宙に逆さづりにした。

Bランクのシモンも加わった。

解体用ナイフで番に傷口を開け、血抜きを手伝った。

それを見ていたアレックスが呆れたように言う。

「あれは巧いですね。

目立たぬところを切り開いています。

あの処置なら高く売れますよ」


 その場での解体はなかった。

その訳をデビットが説明してくれた。

「解体には時間がかかる。

売り物だから細心の注意が必要なんだ。

一つの失敗で、何枚もの金貨が飛んでしまう事があるからね。

あそこを傷付けちゃ駄目、ここも駄目、汚しても駄目、とね。

特に、こんな場所でやるのは自殺するようなものだよ。

いつ魔物が襲って来るかも知れない大樹海だからね。

一番良いのは、解体は本職の工房に任せること。

何が必要で、何が必要ないか良く理解しているからね。

我々でも本職には適わないよ」

 彼等は時間停止機能を持つアイテムバッグを所持していた。

超高価なので一つだけ。

それでも今回の狩りには十分だそうだ。

Bランクのシモンの肩掛けバッグにその番が収納された。

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