ウハウハ
朝食後に食堂で待っていると、バライさんの部下さんが迎えに来たが、俺達は飛んで来て欲しいと言われ、俺とタイカは飛んで警察本部に向かう。
フォルテはエアちゃんのために、お留守番を買ってくれた。来ても退屈だよね。
到着したらバライさんが他の職員に説明するからと俺とタイカの飛行魔法具を持っていった。
ランさんに案内されて会議室に入ると研修でお世話になった特級工房主がいる。組合は優秀だ、俺が知る中で一位と二位を押さえてくれたことに感謝する。
木工の関係者もいてタイカがそちらに挨拶に行ったら、皆に連れられて飛行魔法具を見に外へ行ってしまった。
俺は残った特級工房主に挨拶をする。
特級工房主といっても二十代半ばと三十代前半、平面文字に慣れてしまった世代に特級魔法工はいない。
「カサ。やっぱ面倒なやつか?」
「先輩おはようございます。少し面倒かも知れません。これがレシピです」
「お前が面倒なやつなのか、見たくねえな」
「そうもいかないっすよ。どおれ俺に貸して見せろ、魔法陣を二つに分けたのか。んーこれだと運転するの難いから、お客さんのことを考えて昇降の方だけでも魔道具寄りにしたら良いと思うぞ」
「なるほど。これで大丈夫ですか?」
「分かりづらいから、魔法陣を展開させてくれ」
「はい」
「まあこれだったら、中段位でも操作出来るかな。俺達も外に行くから、レシピを追加で三枚は書いといてくれ」
「三枚だけですか?」
「うちの支部でこいつを確実に出来そうなのは、お前を入れて四人だから、三枚で足りるな。余れば組合提出に回せば良いだろ。まあ今回は魔法陣だけだから俺達だけで十分だ。頼むぞ」
「分かりました」
ランさんが残って飲み物の準備をしていたが聞こえていたらしい。
「カサヲさんは、魔道具は一級ですよね?本当はもっと凄いの?」
「一級でも凄い方ですよ。魔法具工は特級ですけどね。キャンバスが木材限定になりますが」
「身分証の写しは間違いなの?」
「魔法具工は身分証に載らないだけ。秘密でもないですよ」
「秘密にしてたら気がついたのに」
「秘密を知るのが好きなのか?」
「大好き。でも魔法具工がなぜ載せられないの?」
「魔道具工の国家資格に対して、魔法具工は組合の認定資格で、基準が頻繁に上昇するから載せられない。組合が仕事の振り分けに使うだけだから問題ないですよ」
「やっぱり優良物件だった」
「どうやら早くも戻ってきたみたいです」
「カサに追加だ。喜べ」
「嫌です。何をさせるつもりですか?」
「風防を追加しろだと」
「それ魔道具を別に装着するだけでは駄目ですか?」
「魔道具カサヲムの追加か?」
「簡単に出来たな。俺は木工のやつらに頼んでくる」
「よろしくっす。それでハチクの姫は良いな。兵役が終わったら二人で、首都にでも工房を開いたらどうだ」
「俺一人では決められないですよ」
「まずはお前の決断だ。特級の美人さんになるぞ、逃げられるなよ」
「はい、気を付けます。二枚完成と」
「本当に凄いなお前」
「何がです?」
「その筆記具の魔法具もお前だろ。俺もだが一級の連中もウハウハしてたぞ。お帰りっす」
「ああ。そんで今の筆記具の話だろ。組合経由でカサに少しは金が入るし、今回の飛行魔法具の分も入るからカサもウハウハだな」
「そうなれば嬉しいです」
「それじゃ風防の仕様を決めるぞ」
「了解っす」
「はい。自分はとりあえずレシピを仕上げます」
◇◆◇
「それでは移動を御願いします」
組合の査定担当が役人と価格の交渉をしていたが決まったようだ。俺は組合を信用しているから、先輩と外に出てフォルテの飛行魔法具を見ながら風防の仕様を決めていた。
その他にも決まったことの連絡があったらしいが、タイカと一緒の班だと聞いてからは、任せたつもりで聞いていなかった。
「ダーリンは私と一緒だよ」
「その呼び方は仕事中は無しだよ」
「そうだぞ嬢ちゃん。仕事中はイチャイチャは無しだ。だがそれ以外なら幾らでも、うち自慢の天才君と仲良くしてくれ」
「はい。今後は気を付けます」
「俺からも一言。兵役が終わったら二人で首都に工房を開いてくれ、こいつが帰ってくると仕事が薄くなる。頼むぞタイカちゃん」
「ふふっ、なんですかそれ、私は首都よりこっちが好きなんです。地元だし海があるから」
「海は広いぞ大きいぞ、選び放題だな、どれ移動だ」
住む場所を決められたのか?でも先の話だ。
木工の工房に移動してから、二人でひたすら飛行魔法具を作製した。いやシートを担当している皮革工房を含めたみんなだな。
三班に分けていたから総数は分からないが、人数が一番少ないうちの班だけで祭りの前日には17台が出来た。
警察用に作った飛行魔法具はフォルテに送った飛行魔法具がベースだが、本体はハゼ型からサメ型になり、前方ライトと収納式の足を置くステップが追加され、シート部とハンドルが皮張りに変更、青をベースに白と赤と黒のラインの塗装が施された本体は木製には見えない。
タイカがフォルテの飛行魔法具にも塗装をしたいと言い出したのも当然だ。
ちなみにランさん用には俺とタイカが早出と残業して作り、赤とピンクのカラーリングはランさん自ら行い、タイカが仕上げた。
価格はゴーレム馬車の安いやつよりさらに安い魔動車並みだが、みんながウハウハの金額をもらった。俺はそのみんなに言えない位のレシピ代を一時金としてもらい、製作報酬も特級スゲーと思う位もらった。
打ち上げもやりたいが、今はどの店も予約でいっぱいだ。すぐには出来ないけど、今回の関係者で行う予定の打ち上げには、タイカと参加希望にしておいた。
俺とランさんは俺の地元の弁当屋で今まで手を出しづらかったものまで買って来て、寄宿舎の屋上で慰労会を行う。
その金はランさんに飛行魔法具代として出してもらった。材料費も実費でもらっているけど、酒代を含めて相当高い金額を払っても得した気分になっているみたいだ。
決してゴーレム馬車と比べたらいけない。
「お疲れ様でした。乾杯」
「「「乾杯」」」
スポンサーの乾杯で始まったが、スポンサーさんは疑問が多い。
「魔眼カメラは今回きた魔法工のイケメンお兄さんも出来るの?」
「俺が出来るのだったら、レシピがあれば出来ますよ。俺の中では一位と二位」
「へー凄い人なんだ。年上いいかも」
「何回か手伝いしたことあるけど凄いよ。魔法陣組むだけなら髪メッシュ、アゴヒゲはメーカー相手の大型製造装置の魔道具が得意で、フリー魔法具陣やセンサー魔道具などの開発者」
「フリー魔法具陣?」
「今回の飛行魔法具はその改良型を組み込んだけど、フリー魔法具陣を入れると、限定魔法具ならチューニングを緩くしても魔法使いならある程度は使えるようになる。以前は個人限定で体調次第でも動かなくなっていたの。逆にそれを上手く使えば鍵代わりに出来るかな?」
「奥さんはいるの?」
「どちらもいますよ。アゴヒゲの相手は男子の中では有名人」
「誰?」
「歴代トップの美人と言われた、三年前のミスコン優勝者」
「マジ!何で」「どこで!?」
「タイカのどこは、アゴヒゲが地区予選と最終予選の審査員だった」
「ふぅん、特級の人はそんなこともやるんだ」
「あの二人は特別」
「髪メッシュの人も?」
「魔法陣だけは間違いだった。魔法陣を誰よりも小さく組めるから、本体のデザインの自由度が高い。そのデザインのセンスも良い。だから最近になって工業デザイナーやインテリアデザイナーもやっている」
「カサヲには帰ってくるな、とか言ってたのに?」
「本人は魔法工のつもりだからね」
「でも、おしゃれさんだった」
「奥さんが有名ブランドの元専属モデルらしいからね」
「あんたらが首都に行け」
「誰でもそう思っている」
「私もタイカちゃんみたいな、大人ぽい服を着たいな」
「フォルちゃんも似合うよ。今度、買いに行こうよ」
「はい。タイカちゃんに選んで欲しい」
「分かった。約束ね」
「約束しました。ところで、ランちゃん。魔眼カメラはちゃんと写ってたの?」
「もう出来てるはず、ごめん、まだ取りに行けてない」
「私が写真を受け取りに行くよ」
「フォルテちゃんに任せて良いの?」
「私が頼んでいることだよ」
「そうでした。でも見るのはフォルテちゃんだけにしてね。一般人に見せて良いか分からないものを撮ったから」
「だったらフォルテに魔眼カメラを任せたいと思うけど、タイカはどう思う?」
「私も魔眼の勉強をはじめたの」
「ならタイカちゃんも、でも私達では魔法具を作れません」
「外側はタイカに任せるよ。フィルムを使えるようにして、レンズとかいらない物は省いて作ってくれ」
「良いけど。カサヲは?」
それをタイカが聞くなよ。一番はお前のことなのに
「内緒。ヒントは俺は二人より先にエアちゃんの魔法を見ている」
「カサヲさん?ヤバい特級ヤバい」
ランさんまでエアちゃんの魔法を知っているのか
「主さん?いつ特級になったの?私を騙したの?」
「騙してなんかないよ。特級は魔法具作製の方で、魔道具は一級のままだよ」
ランさんに話をした内容と全く同じ話をしたら、フォルテは不満そうだけど納得してくれた。
「それ、外なのに消音になるの?」
「相を少しだけずらしたからね。周りが静かになったでしょ」
「本当だ、外に居るのに虫の声が聞こえない」
「この線みたいなのを越えたら五月蝿くなるの?出ても大丈夫?」
「これぐらいなら大丈夫だけど、疲れるから戻すね」
「本当に凄い人なんだね。カサヲさん」
「主さんは凄いでしょう」
「ありがと。二日間、エアちゃんの相手もありがと」
「エアちゃんはお友達ですから、お世話ではありません。それに今日はリンちゃんと三人で魔法盾の訓練をして楽しかったです」
「リンも来たんだ」
「はい。昨日はタルトちゃんとは別のお友達と一緒だったみたい」
「フォルちゃん、リンちゃんは成長したかな?」
「どうなんでしょう。私は今日が初めてだから分かりません。でも盾を三つ出せるようになったと喜んでました」
「それは凄いね。私にも気を注いで欲しい」
「お酒を飲んだら止めといた方が良いですよ」
「私も止めます」
「私はランちゃんの乱れる姿が見たい」
「残念ながら止めます」
「ランちゃんは明日もお仕事なんだよね」
「そうです、せっかく飛行魔法具を作ってもらいましたが交番応援です。思い出した。お祭り会場を飛ぶならば、王立病院より少し高い60M以上の高さか川の上をだそうです。あと物を落下させたら犯罪になります」
「完全に花火を見るだけになった。それなら海に出て沖から見ても良いかもね」
「でもお祭りといっても、出し物はあれくらいで、あとは花火と食べ歩きくらいなのに、何であんなに人が来るのは何でだろう?」
「タイカちゃんのあれは、いつもの歴史劇?」
「そう。学校の文化祭でもやっているし、音楽劇に人形劇。国語の教科書まで歴史だし。本当しつこすぎ」
「タイカちゃんはお祭りが楽しみではないの?」
「お祭りの食べ物を食べるより、このお弁当屋さんのお惣菜の方が美味しいし」
「でも川沿いの出店でなくて、地元の商店街では各店でも食べ歩き出来るよ。俺はいつもそっち」
「みんなで昼間はそちらに行きませんか?」
「魅力的だけど私達二人を連れてたらカサヲが襲撃されそう」
「それ楽しそう。出番が来る」
「俺は楽しくない」
「フォルちゃんだけでもヤバいかもね」
「花火だけでも良いですよ」
「こっちの商店街は通常なのか?」
「私は知らない。最近はどの祭りも家で過ごしていたから」
「リンちゃん家のお店にワンスプーン何とかとポスターが有りましたよ。バイトが有って私には関係無いから良く読みませんでしたので、詳しい内容までは不明です」
「主さん。昼間はみんなで興国町商店街を歩きませんか?」
「タイカは?」
「フォルちゃん、私も良いの?」
「私が誘ったと思いましたが?」
「そおだった」




