後輩達
『エアちゃん。ただいま』
『主。お帰り』
『今、どこにいるの?』
『タイカと一緒』
『そう。また後で』
『ピッ』
寄宿舎に着いたら、みんな引っ越し中で雑然としている。本当にすれすれなんだと感心する。
しかし駐車場代が寄宿舎費の半分は高い。ゴーレム馬車の半分の長さしかないのにおかしい。
夏休みは取られなかったから、よしとするか。
タイカの部屋にエアちゃんを迎えに行くと、部屋の中に気配が無い。
あまり念話を使いたく無いが仕方が無い。
『タイカ。今、大丈夫か?』
『お帰り、カサヲ。今は忙しいから後で』
珍しい。けど、声の感じは心配する必要はなさそう。
フォルテもランさんもいないな。
バイトかな?
お隣さんも今日引っ越しか。
「リン。久しぶり」
世間は狭いな、二つ下の知り合いだった。ホテルでやっているマナー教室で一緒に勉強した仲。双子の兄もいるのかな。
「カサヲムさん?何でいるの?」
「たぶん、俺がお前の部屋のお隣さんになったからだ」
「それは嬉しいです。知ってる人だし、紳士だし。転校ですか?」
「どうだろう。予定では道路挟んだ所」
「研究所ですか? さすがです。もう好きになってもいいですか?」
「残念ながら、彼女が二人いる」
「ちっ。別れた時の予約をお願いします」
「せっかく綺麗なんだから、残念なことするなよ」
「もしかして、今、私のことを口説きましたよね」
「口説いて無いから。てか、ボーもいるんだ」
後ろから気配を感じ振り返ると、前髪パッツン真ん丸お目眼の美少女がいた。この娘もマナー教室で一緒だった。
三人とも名門中の名門で何でマナー教室にいるのと思ったくらい、こいつ(リン)の兄には助けられた。
「久しぶり、ボー。教室の時はありがとう」
「カサヲム様。お久しぶりです」
綺麗なお辞儀にこのフェロモン、16歳が出したらダメでしょ。
「しっかし、お前の色気はスゲーな」
涙目?やば。
「ごめん。いや、ごめんなさい。そう言われるの嫌だったんだな。本当にごめんなさい」
「ううん。大丈夫です。ただ嫌なことがあって」
もしかして、ランさんが言ってたやつか。色気も気だから、いくら凄くても木剣派の初心者を超えたら問題無いレベル。
いや一般人でも色っぽいと思うくらいで行動に移さないな。
「そういや、兄貴は?」
「「・・・・・・・」」
「まさか、最後の魔法にかかったとか」
「そのまさか」
「嘘」
「本当。あのバカ。私に襲いかかってきた」
「えっリンさんに?」
双子の妹に? ボーじゃないの?
「何で、さん付けにした」
「リンも綺麗だ。うん。10人中99人は振り向く」
「バカにしてますか?」
「本当に綺麗だと思っているよ。ボーもそう思うだろ」
「リンちゃんは綺麗だよ。私の自慢の友達」
「ボーちゃんに言われたら信じる」
ふー
「でもカサヲムさんは信じられないのです。壁ドンは分かりますか?私が壁際に立ちますので、先輩は手を壁に、私の耳の脇に辺りにおいて、左手もおいてください、手の位置を肩幅に広げて、そう、それで、目を見て綺麗になったねって言え」
笑いたい。けど、我慢する。笑ったらリンが傷つくと思え。
「・・綺麗になったな。リン」
えっ下に落ちた。
「リン。大丈夫か?」
「うん。腰が抜けただけ」
「本当に大丈夫か?」
「ボーちゃんにもやって、私との差を調べる」
「いやいやいや。なあ、ボー」
「はい。私にもお願いします」
「ウソ、やる気」
「是非」
「わかったよ。セリフは同じな」
「はい。どうぞ」
「・・綺麗になったね。ボー」
あっ落ちた
「えっと、立てるか?」
「しばらくは、ここで」
「そう、荷をほどくから部屋に行くよ、二人ともこれからよろしくね」
「「また、よろしくお願いします」」
「やらないよ」
部屋に入ると二人の悲鳴が上がる、驚くからやめてくれ、でも歓迎されている感じがして悪くない。
洗濯ついでにシャワーを浴び、乾燥の魔法を使って服を乾かしてクローゼットにしまったら、部屋の前に後輩達の気配がした。タイミング良いから、どちらかは透視持ちだな。
ランさんが言ってた毒ではなさそうだから部屋に入れてやる。
「お茶とお菓子を持ってきたので休憩させてください」
セリフだけ聞くと図々しいけど、リンは相変わらず甘え上手
「まだ、片付け終わらないのか?」
「私達は通いなので今日中にやる必要もないし、あとはゆっくりやります」
「私はここには最低限の物だけなので、ほとんど終わりです」
それならボーの部屋でも良いと思う。久しぶりに二人と会えて嬉しいけど
「先輩、お茶を冷やして欲しいな」
「やるのは良いけど、お前ら魔法学校生だろ」
と言いつつ、やってあげる
「はい。でも教室で作ってもらったお茶がおいしかったので」
「がっかりしなければいいな。はい」
「うん。おいしい。まろやかなんですよね」
「おいしいです。先輩みたいな彼氏が欲しい」
「リンなら選び放題だろ」
「やっぱり口説いてますよね」
「いや、してないから」
「それでカサヲム様はオーラを出せるようになったのですか?」
「様はもう勘弁ね。おかげさまで。ほら」
「はい。綺麗です。格好いいです」
「それは、どうも」
「私も出来るようになりたいです」
「タイカもオーラの可視化は無理だけど、なぜか気が使えるようになったんだよな」
「えっと恋人さんって、タイカ先輩ですか?」
「当たり」
「同じハチクです。許嫁さんですか?」
ボーちゃん?あー婚約者のことか
「えっと、幼なじみには違いないけど許嫁ではない、二人はいるの?」
「ううん。でも、先輩みたいな幼なじみが欲しい」
「許嫁は今時はないですね」
「そうだろ、でも今は兵役の準備した方が良いとも思うけどな」
「そうですね。まずは生きてこそ」
「はい。もし良ければ相談とかに乗って頂けたら嬉しいです」
「良いけど。ところで男はここを辞める人が多いのは本当なの?」
「はい。どのような噂を聞いたのか分かりませんがあっています」
「タイカ先輩みたいな綺麗な彼女がいるのに浮気はダメですよ」
「そうだね。ありがとう」
「でも二人と付き合える時点で浮気者です。契約魔法の準備をしてお待ちしますから、別れたら私でお願いします」
「ボーちゃんまで不吉なことを言わないで」
『カサヲ。お願いがあるの』




