帰りの宿
新月の初日に入った宿がある町は火の番と呼ぶ行事があるそうだ。新月の夜に家の門前で夜間灯という魔道具を使って火を灯し続けるから空まで赤くなっている。
あるのは知っていたので最初から帰りはこの宿場町に泊まるつもりで予約しておいた。なんとか日が沈む前に入れて良かった。沈んでからだと町の入口にも火を灯すため町の中には余所者は入れないと宿の者に聞いていた。
新月と満月の間は昼夜問わず、黒い服を着たらいけない、酒を飲んだらいけないとも。
この町は大黒穴から直線にすると壁が有り守護兵基地が有り、教育隊と軍総司令が有り、木剣派の本山がある最近改名した木剣町が在る。木剣派は木の棒に火を付けて黒いものと戦っていたのが元らしい。
今は気を扱うのに木と相性が良いから木剣を使っている。
そこまでの戦力の後方に在るのに、油断しない町。闇払い町なら安眠できるだろ。
と思った時もあったが、防音の魔法を掛けたのに朝方まで気勢やら太鼓の音やらで中々眠れず、だからといって消音の魔法を部屋にかけたら、もし異常事態が発生しても気づかないからかけられず、夜中過ぎには空腹を感じて眠れず、まったく寝た気がしない。結局、日が出てから漸く寝られて昼前に宿の者に起こされた。酷い目にあった。
びびりの町だ。こんなに町はもう沢山だ。
朝に出たら夕方には戻れたはずなのに、今日中には帰れない。無理して事故を起こすわけにもいかない。
この先、大きな町が無いから郊外ホテルに泊まるか。でも時間制のホテルはいくらくらいかかるのだ。
一時間毎に休憩を取り100KMも走らないで諦めて宿に入ったらお連れ様は?こちらで準備しますか?とか聞かれた。
昨日は酷い目にあったからとにかく寝たい。食事がしたいと言ったら食堂はないけど、此処で頼めば部屋に運んでくれると言うので、ハンバーガーを頼んででっかいベッドに来るまで横になる。こんなでっかいベッドを三人で使いたいと思ったら宿のコンセプトを理解した。
意識の共有化は怖い。
念話の弊害だろう。
エアちゃんは種族が違うから混ざらない。
人と人だと混ざりやすいのか。
男と女だから違和感が出た?
女同士だとどうなる?
三人で魔法具を作ったときは俺の意思は無かった。
魔法具の知識は俺が上だろう。
知識だけを利用されたのか?
誰かの意思だったのか?
二人は意識が有ったのか?
ハンバーガーが来たようだ。
食べながら考える。
俺はどうしたら良いか。
どこまでなら許容できるか?
どこまでされたら二人と別れるか?
一人を選んだら駄目なのか?
俺一人で考えても仕方が無いな。
エアちゃんとの繋がりを感じる。
契約の魔法での制限を提案するか。




