初夏の昼下がり
7.
今日は午後から店を休みにして、彼女の家に遊びに行くこととした。
突然の来訪に、彼女は少し驚いていたが、急に話したくなったんだと言ったら仕方ないなぁという雰囲気で、そのまま部屋にあげてくれた。いつものように話をした後、彼女は晩御飯の材料を買いに行くことにしたらしい。
買い物なら一緒に行こうよと言ったが、晩御飯に何を作るのか内緒ということで、1人で行くことにしたらしく、留守番を頼まれた。
特にすることもないので、部屋のテレビをつけて、ぼけっと過ごすことにした。
ふと、机に置いてあった読みかけの手紙が目に留まった。普段であれば、人の手紙など特に気にしないのに、その時は何故かその中身が気になった。
彼女には悪いと思いながら、そっと手紙を取り、中身を見た。
封筒の宛名の記載は彼女の名前であったが、手紙の文頭に記載のある宛名は、最近自分達裏社会の中で密かに話題になっていた始末屋の女の名前であった。
そして、手紙の中身はターゲットである裏社会での自分の通り名と、始末に時間がかかっていることへの催促に関する内容であった。
彼女が自分に近づいたのはこういう目的があったからなのか。
あの時の出会いも、それからの出来事も既に仕組まれていたのか。
そうとも知らずに彼女のことを好きになっていた自分はなんだったんだろうか。翁に言われて、真面目に生きることも考えていたのに。
結局親にも捨てられ、生きる為に裏社会を歩いてきた自分のことを愛してくれる人なんかいないんだ。
いつしか自分の中の思いは彼女への殺意へと繋がった。
手紙を元と同じ状態にして、ただテレビを見ていただけといった雰囲気て、彼女の帰りを待った。
「ただいま〜」
何も知らない彼女が買い物から帰ってきた。
「もう初夏だけあって、外は暑いね」
「ああ、そうだね」
「晩御飯食べて行くよね。2人分の材料買ってきちゃったし。あ、何を作るかはできてからのお楽しみね」
「そっかぁ。それは楽しみだね」
買ってきたものを片付けている彼女の後ろにそっと忍び寄る。
「そういえば、夏といえば海だよね。今度一緒に海に行こうよ。花火とかも楽しいよね」
手紙を見る前の自分なら、一緒にどこに行こうか楽しく話していただろう。でも今はもう違う。
「ねえ、聞いてるの?」
自分は彼女の後ろに立ち、何も知らない彼女に対して、普段から隠し持っている拳銃の引き金を引いた。
銃声と共に彼女は崩れ落ちた。
最期に、なぜ?といった表情を浮かべながら。
そんな彼女のことをいつもの仕事の後のように眺めなた後、自分は彼女の部屋を後にした。
彼女宛の手紙と、そして何故かその横に置いてあった彼女の日記を手にして。
そしていつものように後処理を頼むために電話をかけた。
初夏の風が虚しく頬を掠めていった。




