【36】 思い出の蓋を開けて
地獄耳の課長が近寄ってきて、
課長「なんだ、その『カフネンキン』って?」
美南「国民年金から出る遺族年金みたいなものです」
課長「ふーん。結婚してなくとも出るのかい?」
千歳「出る可能性はあります。他にもいくつか要件がありますので、ちょっと調べてみないと何とも言えないですけれど」
美南「でも、トライする価値はありますよね」
千歳「私もそう思うわ」
金塚「思い出したくないことまで、思い出させてしまい、すみませんでした」
客女「いいのよ。久しぶりに思い出したわ、あの頃を」
金塚「思い出したことは無かったんですか?」
客女「無かったわ。あの頃が、あたしの青春だったけれど、ちょっと苦い思い出だから、蓋をしちゃったのよ」
金塚「すみません」
頭を下げた。
客女「いいのよ。こんな時しか、蓋を開ける機会が無いから」
金塚「最後に、また六さんのことで聞きたいことがあるかも知れないので、お客様のお名前と電話番号を伺ってもいいですか?」
客女「ええ、いいわよ。でも、もう、話すことはないと思うけれど」
そう言いながら、金塚の差し出したメモ用紙に、
名前(橋田愛実)と電話番号を書いた。
金塚「長時間、ありがとうございました。六さんについていろいろ知ることが出来て良かったです」
愛実「六さんもきっと喜んでいるわ」
そう言って橋田愛実(はしだ・まなみ・52歳)は
帰って行った。




