【03】 残り少ない命
六郎「うん、見たこと無いのかい?」
金塚「ボートレースは知ってますが、予想屋と言うのは知りませんでした。今、初めて聞いた職業です」
六郎「そうかい。いつか死ぬまでに一度ぐらい見ておいてもいいと思うよ」
金塚「はい、ぜひ見たいですね」
六郎「嬉しいね。ところで肝心な話なんだが、俺の命は、もう残り少ないんだ」
金塚「えっ! どういうことですか?」
六郎「病気で手遅れらしい」
金塚「お医者様から余命宣告をされたということですか?」
六郎「うん、そう言うことだ」
金塚「余命宣告って、あとどれくらいなんですか?」
六郎「医者は、正確には言わなかった。言わなかったが、俺が思うにあと1か月じゃないかな」
金塚「そんなに! そんなに短いのですか?」
六郎「多分な」
金塚「そうでしたか」気を落とした。
六郎が見ても驚くほど
金塚が落胆した。
六郎「それでも、国民年金は納めないといけないのかい?」
金塚「まぁ年金も税金と同じ扱いですので、ルール上、納める義務がありますが……」
六郎「『病気』を理由に、免除にならないのかい?」
金塚「大変申し訳ないのですが、免除に該当する理由の中に『病気』は入ってないのです」
六郎「そうなんだ。随分なんだね」
金塚「すみません」頭を下げた。
六郎「絶対貰えないと分かっているのに納めるのかい? 俺、死んじゃうんだよ?」
六郎が金塚に疑問をぶつけた。
六郎「年金って、65歳を過ぎてもらうために掛けるんじゃないのかい?」
金塚「もし本人がもらえないとしても、ご遺族様がもらえる場合もあります。奥様はいらっしゃらないのですか?」
六郎「奥様か?」
金塚「はい」
六郎「遠い昔の話しなんだがな、」
金塚「はい」
六郎「ひとりの女性を男性二人が好きになったんだ」
金塚「はぁ~、そんな話があったんですね」
六郎「ああ、ずうっと忘れていたが、今、思い出したよ」
金塚「その女性を好きになった男性の内のひとりがあなたなんですね?」
六郎「そうだ」
金塚「それで?」




