【02】 ボートレース予想屋、穴吹六郎
ある日。
余命数カ月と言われた男が
窓口にやってきた。
一年前から病気になり
国民年金の支払いも滞っていた。
病院の費用もバカにならないほど
支払っていた。
そこに日本年金機構から特別催告状が届き、
男は市役所にやって来たのだ。
よく見ると、
その特別催告状の文章には
『差し押さえをします』の文言も
入っていた。
このまま払わない場合には
差し押さえをする場合もあるということらしい。
その男の名前は、
穴吹六郎(あなぶき・ろくろう・58歳)。
職業は、
ボートレースの予想屋である。
窓口にやってくると
カウンターで金塚に話し始めた。
特別催告状を見せながら、
六郎「こんなもんが家に届いたけれども、国民年金の支払いを免除できないだろうか?」
金塚「ちょっとお待ち下さいね。免除申請ができるかどうか穴吹様の、去年一年間の収入や家族構成を調べますのでそのままお待ちください」
金塚は、席を外して他の場所でパソコンを使い
穴吹六郎の収入や家族構成を調べ始めた。
金塚「ひとり暮らしで、結構収入があるなぁ、免除は難しいかもしれない」と、つぶやいた。
金塚はカウンターに戻った。
金塚「お客様のご職業は?」
六郎「なんだと思う、予想してみて?」
金塚「予想ですか、何かヒントをもらわないと難しいですね」
六郎「予想だよ、予想。こう言っちゃなんだが、人生において、予想って言うのは大事だよ」
金塚「予想と言われましても全然思いつきません。ヒントをください」
六郎「ははははは。偉そうにしてゴメンな。ヒントねぇ、ヒントならもう出しているけれど、」
金塚「えっ、いつですか?」
六郎「答えは、予想屋だよ、予想屋」
金塚「えっ? 予想屋なんて、そんな商売があるんですか?」
六郎「うん、いっぱいあるよ。いろいろあるんじゃないの。大学入試問題の予想屋、運転免許取得試験の予想屋、競馬の予想屋、その中でも俺はボートレースの予想屋だけれども」
金塚「ボートレースの予想屋ですか?」




