【28】 六さんの年金手帳
客女「はい、ご存知でしたか?」
金塚「はい、先日穴吹様がここに見えて、いろいろとお話を伺いました」
客女「そうでしたか。あなたも、ボートレースをやるんですか?」
金塚「いえ、やりませんし、ボートレースのことは良く知らないのです」
客女「そう、」
金塚「ところで、大変失礼な質問で恐縮ですが、亡くなった予想屋さんとは、どこで知り合われたのですか?」
客女「あの当たらない予想屋のいちファンだったんです。ふふふふふ」
金塚「『当たらない予想屋』さんだったんですか?」
客女「ええ。あたしから見ればね。ふふふふふ」
金塚「私恥ずかしい話ですが、ボートレース場に行ったのは、後にも先にも1回だけなんです。しかもつい最近」
客女「あら、こんなに近くにあるのに」
金塚「そのとき、『予想屋六さん』の前を通ったのですが、すごい人だかりで、びっくりしました」
客女「そのときだけ、友達を呼んだんじゃないですか? ふふふふふ」
金塚「ははははは」
金塚は、その会話で
この女性と穴吹六郎との仲が良いと推察した。
金塚(まさか、この人が隣の予想屋さんと取り合った女性? そんなはずはない)
金塚(予想勝負に負けて、そのときの女性は、隣の予想屋さんと結婚したはず)
自分で疑念を持ち、自分で打ち消した。
金塚(では、なぜ、この女性が、六さんの年金手帳を持っているんだろう?)
金塚「再度、失礼なことを申し上げるようで、大変恐縮なんですが、」
客女「はい、」
金塚「この年金手帳は、どのように入手されたんですか?」
客女「遺品を整理していて」
金塚「誰か穴吹様の、ご家族、ご親戚の方とかは、いらっしゃらなかったんですか?」




