【11】 逆転劇と八百長疑惑
後ろで、
美南「えーっ!」
美南がトイレから戻ると同時に叫び声を上げた。
美南「何があったの? 脳梗塞?」
千歳「えっ! もう戻って来たの?」
美南「はい」
千歳「なんて速いの」
美南「スロットルレバー、握りっぱなしですから」
千歳「ちゃんと流して来た?」
美南「あっ! 忘れたかも?」
六郎「ボートレース場のスタンドにいる観客全員がざわめいた。『オーッ!』と。この瞬間、当たり舟券は『4ー6』から『4ー1』に変わった」
金塚「……」
六郎「4ー1を買っていた客は喜びに湧き『4ー6』を買っていた客は声を失っていたよ」
金塚「……」
六郎がそのときのシーンを思い出していた。
隣の予想屋「光太郎」が青ざめた表情から一転して「やった、やった~!」と何度も雄叫びを上げた。
それは六郎の予想屋「六さん」に対して、情も容赦もない雄叫びだった。
その雄叫びを聞いたその女の子は「光太郎」の配慮のない雄叫び、相手に対する気遣いのない態度に少しがっかりした様子だった。
金塚「でも、まだゴールまで距離があるんでしょう?」
六郎「レースは、そのまま3周目第2ターンマーク、最後の旋回に入った」
金塚「まだまだ、あきらめないですよ!」
六郎「4号艇がトップで周り、続いてベテランの1号艇が小回りした」
金塚「6号艇は?」
六郎「他の艇にも抜かれた」
金塚「そんな!!!」
六郎「結局、6号艇は5着だった」
金塚「5着!?」
六郎「俺は、キツネにつままれたようだった。何がどうなったのか全く訳が分からなかった」
金塚「負けたんですか?」
六郎「うん。結婚を賭けた大勝負に負けた」
金塚「がっかりですね」
六郎「でも、舟券はハズレたけれど、俺の徹夜でした予想は完璧に当たっていた」
金塚「ええ、そうですね」
六郎「ボートレース場に来ていた観客の一部が『八百長だ!』と騒ぎ出した。しかし、結果が変わる事はなかった」




