オマケという名の愚痴大会
そして今回も2話構成でした。
舌を噛みそうな名前だと判明した飼い主は、作業の途中で『ウザイさん書斎へ襲来』を知らされて来たらしく、私の花を指でくるくると回しながら去って行ってしまった。
残されたのはイイ笑顔を浮かべたイケオジだ。
顔文字で言うと(≧∇≦)bみたいな顔をしてる。
飼い主がウザイさんへ言い返したのが、それだけ嬉しかったんだと思う。
『この部屋…………いや、この屋敷のものは、人であろうと物であろうと私の物だ。──私はもう何一つ大切なものを君へ譲る気はない。
そもそも君に私の屋敷のもの自由にする権利など欠片もない』
そうビシッと言い放つ飼い主は凛として格好良かった。
あととんでもなく綺麗な微笑み付きで言ったせいで自然と煽ってるっぽくなって、ウザイさんの顔色が面白い事になってた。
思い出して面白くなった私が上機嫌にゆらゆらと葉を揺らしていると、イケオジがグッと顔を近づけてくる。
「マンドラゴラさん、聞いていただけますか?」
そんな感じで話しかけられたので、無言でゆらゆらと頭の葉を揺らしておく。
あ、もともと私の声は聞こえてないんだから喋ってても一緒だろ? とかいう無粋なツッコミは無しで!
「あのク……ウーザイ様は、誠に遺憾ながらうちの旦那様と血が繋がっているのです」
鑑定で見たから知ってるよという言葉は飲み込んで、うんうんそれで? とばかりに葉を揺らす。
「異母弟といいまして、父親は同じですが、母親違いの弟にあたります。旦那様のお母様は数年前にお亡くなりに……」
ここに来て気配を感じなかった飼い主の家族の話を聞いてしまい、私は興味津々に葉をピンッと立ててイケオジの次の言葉を待つ。
「ここだけの話ですよ? ウーザイ様の母親は後妻となりますが、旦那様のお母様がご存命の頃からの関係となります」
イケオジがキラッキラの笑顔で感情を押し隠して言葉を濁したが、つまりはウザイさんのお母さんは愛人さんだった訳だ。
飼い主とウザイさんの年齢差から見てもバレバレだよね。
多めに見積もったとしても、五歳ぐらいしか離れてなさそうだ。
数年前に本妻が亡くなって、まだ子供がよちよちならギリギリ亡くなった後からの関係とか誤魔化せたかもなのにあれだけ無駄に育ってるとねぇ……。
飼い主が落ち着いてるからもっと離れてそうに見えるけど! そもそも飼い主の実年齢知らないけど!
とりあえずこれは、よく脳内で呼びかけている幻のご近所の奥さんが、好奇心で顔を輝かせて『あらあらまあまあ』って大喜びする案件だって訳だ。
私が脳内ご近所奥さんへ向けてうむうむと葉を揺らしている間も、イケオジの私相手の独白というか愚痴は続いている。
いいよいいよ、私いくらでも聞いてあげるし、口は堅い女(雌株)だからね。
イケオジが私相手に話すのって、たぶん『王様の耳は〜っ!』てやつだね、きっと。
「旦那様の父親にあたる方は『本当に愛しているのは彼女だ』と、旦那様のお母様が亡くなった直後に愛人であった女性を屋敷へ連れて現れ、葬儀が終わったと同時に旦那様をこの屋敷へ一人で住むようにと言って追い出されたのです」
懐かしい童話の一幕を思い出してほっこりしていた私だったが、イケオジの言葉を聞いて「(はぁ!?)」と声を上げてしまった。
もちろん私の声はイケオジには聞こえないから、イケオジは気にもとめず話し続ける。
静かに聞き続けた結果──。
外見と実力と性格の良さで人生勝ち組だと思ってた飼い主は、なかなか苦労人だったと知って、かなりの衝撃を受ける事になった。
実の父親から捨てられるような形で一人暮らしを始めた飼い主。
それでも最初は使用人もたくさんいて、この屋敷はもう少し賑やかだったらしい。
けれどそこへ何をどう勘違いしたか、あのウザイさんが突撃訪問して来たのだ。しかも、父親にあたる伯爵家当主を連れて。
ここで初めて、私は飼い主が伯爵家に連なる人間だと知った。
普通に考えれば長男であり、先妻との子である飼い主が伯爵家を継ぐはず……私でもそう思う。
でも、ウザイさんとお連れさんの常識は違ったらしい。
やって来て久しぶりの息子への第一声が、
『伯爵家はこの愛するただ一人の息子へ継がせる』
だったらしい。
私がそこにいたら目玉ポーンしちゃうよ、マジで。
飼い主もあんたの息子だろ! とかツッコめる人間はおらず、唯一出来たであろう飼い主は──なんか色々諦めた表情をしていた、そうイケオジは憂いを帯びた微笑み付きで語った。
そして、そこからウザイさん天下が始まり、定期的にこの屋敷へやって来ては、
『お前なんかにコレは勿体ない! コレは次期当主である俺が持つべき物だ』
とか言い放って、見目の良い使用人、能力や将来性のある使用人、高そうな装飾品などを毎回強奪していったそうだ。
なんてジャイ……ゲフンゲフン、強盗野郎だ。
しかしイケオジ、見目も良いし、能力も高いから、どう考えても強奪対象になってそう。でも、残ってるって事は、飼い主への忠義を取ったんだね。
麗しい主従愛ってやつに胸がジーンとして、思わず葉で胸(?)辺りを押さえる。
あ、決して腐ってる意味じゃないので!
「そうこうしまして、今のこの屋敷の状況となっております。ここに残っている使用人は、わたくしと少し歳を重ねたメイド長と、それと入って来たばかりのメイド。偏屈な庭師、そして少々不器用な料理人だけ」
「(え、すくなっ!)」
「新たに雇おうとすると、妙な横やりが入り、あまり質の良くない者ばかりが……」
そう言ってため息を吐いたイケオジがチラリと見たのは、私の背後の窓の方だ。
思い出すのは先日の飼い主の奥様希望だった独り言大きめの困ったちゃんなメイドだ。
見たのはこの部屋の窓を閉めに来て、窓を閉め忘れて出て行ったぽいアレが最後なので、まぁそういうことなんだろう。
イケオジなんか思い出してため息を吐いてるし。
ため息を吐いた事で気持ちを切り替えたのか、イケオジがまたキラッキラな笑顔を浮かべて、私の方を見てくる。
「今まで旦那様は全てを諦め、受け入れてウーザイ様に言われるがまま全てを手放してこられたのですが、今日初めて言い返された姿を見て、わたくしは安心してしまいました。主に対してとても失礼だとはわかっておりますが、幼い頃から見守っていたわたくしとしては……」
胸に手を当てて熱に浮かされたように滔々と語っていたイケオジの口が閉じられたのは、部屋の扉がノックされたからだ。
部屋の主である飼い主が扉をノックする訳ないし、誰だろうと思って見ていると綺麗なオバサマって感じのメイド服姿の女性がワゴンを押しながら入って来る。
「(もしや、少し歳を重ねたメイド長さん?)」
イケオジの例え通りの姿のメイド長さんに、私はゆらゆらと葉を揺らしてご挨拶をしておく。
イケオジの話によると、この人は残ってくれた使用人さんって事だもんね。
つまりは飼い主の味方! 媚を売るべき相手!
私が精一杯の愛想を振りまく中、メイド長さんへイケオジが話しかけるのが聞こえてくる。
「何故ここへ食事を?」
「旦那様の指示よ。あのクソガ……坊っちゃんが入ったせいで、部屋に何かあったか心配されていたわ。お食事されながら部屋の様子をゆっくり確認されるんじゃないかしら」
「そういう事ですか」
「ここにはその子がいるものね」
しっとり落ち着いた声音の二人の会話に聞き惚れてちょっとまったりしていた私は、その視線がこちらを見ている事に気付いて葉を傾げる。
なんと飼い主、私を心配してくれてた?
確かに私って自分で言うのもなんだけど結構貴重な感じだし、環境の変化(ウザイさん襲来)で何かあったかもと心配なのかな?
あいにくと、そんなか細い神経してません!
でも、心配されるのは嬉しいから素直に受け取るわよ!
キリッとしたポーズ(私的に)を決めていると、メイド長さんがローテーブル? でいいのかな、ソファとセットの低めのテーブルの上にテキパキと食事(?)をセットしていく。
基本的に飼い主のお水とお日様でやっていける身なので、普通の食事を見るのは転生して初めてだと気付いた瞬間、好奇心から植木鉢からシュポーンしそうになって慌てて体を抑え込む。
見るだけならこの位置からでも十分見えるからね。
ここでシュポーンしちゃうと、心配しているという飼い主をさらに心配させちゃう。
飛び出したくてうずうずと葉を揺らしながらテーブルに並べられる料理を見つめていた私は、
「(初めて見る異世界の食事………って、これが食事?)」
思わずそんな呟きを洩らしていた。
初めて見るような生物の丸焼きがドンッとかしてる訳じゃない。
スープが虹色していたり発光もしてない。
皿の上が燃え盛っていたりする訳でもない。
よく言えばただただシンプル。
何もオブラートに包まず言えば………………。
「(コレ、食材を茹でたり焼いたりして、皿に乗せただけじゃない?)」
付け合わせなのか、白い皿の上に丸ごと茹でられたジャガイモがドンッ。同じ皿には丸ごとのトマトがドドンッ。
メインディッシュらしき皿には、分厚いベーコンが二枚、ジュジュッと焼かれてドドドンッ。
野菜を適当に切り刻んでお湯で煮込んじゃってみた感じのスープ。しかも、たぷたぷたぷと溢れる寸前。
植物な私から見ても美味しそうには見えない。
「(もしや、この世界ってメシマズというか料理が珍しい世界? 他の転生者とか転移者がマヨネーズ無双してそう?)」
そんなラノベあるあるを呟いていた私だったが、ふと先ほどのイケオジの発言を思い出してしまう。
今残っている使用人をあげていった際に、イケオジはこう料理人を表現していたような?
『ちょっと不器用な料理人』
この説明通りだとしたら、うん、まぁ、そういう事なんだろう。
「トーマも少し慣れてきたようですね」
「焦がさなくなっただけ進歩だわ」
「元は皿洗いしかさせてもらっていませんでしたからね」
「全くあの恥知らずが奥様への恩も忘れて……」
並んだ料理(?)を前に穏やかな笑顔を浮かべて語り合うイケオジとメイド長さん。
トーマはたぶんここの料理人さんの名前。
二人の会話と、先ほどのイケオジの愚痴から想像するに、ここにいた正規のシェフはウザイさんに強奪というかなびいて出て行ってしまった。
残されたのはウザイさんも欲しがらないような下働きの料理人さん。
今はその料理人さんが頑張って料理(?)をしてくれている、的な感じで合ってるはず!
「(いや、さすがにこれだと私の方がまだ料理出来るかも……)」
お節介かもしれないが、これはタイミングを見て夜中にコッソリとシュポーンとして、キッチンへ潜入してみよう。
マジで料理人さんがちょっと不器用なせいか、それともこの世界の料理レベルがこんな物なのか確認してみたいし。
『料理スキルを獲得しました。他人へ指導する事への効果アップいたします』
よくわからないタイミングで、まさかのスキルがポンッてきたよ。しかも、今までとは何か違う雰囲気の一言付き。
もしや、私のスキルって、私が望むモノが生えてくるんだろうか?
一瞬自分を鑑定しようとして……やっぱり怖くなって止めておいた。
しばらくしてやって来た飼い主は、置かれた料理へ特にリアクションする事もなく、腹を満たすため、って感じで黙々と食べ進めていく。
その少々侘しい姿を見た私は、やはりいつかはキッチン凸する! と心に決めるのだった。
あと、時間差でとてもとてもウザイさんにイラッとしたので、禿げますように! と心を込めて祈っておいた。
効果はないはず。ただちょっと気分は晴れた。
今日もぐっすり眠れそうだ。
いつもありがとうございますm(_ _)m
相変わらずテンション高め女子な主人公です。
動きがうるさい! って言われそうなぐらいもっさもさと動いてます(*´艸`*)
次があるか未定ですが、これからもよろしくお願いしますm(_ _)m




