6話目
シリーズ合体作業終了いたしました。
こちらから新たな投稿となります。
皆様、まだまだ暑い日が続いておりますので、ご自愛くださいm(_ _)m
本編には全く関係ありません!
わたくし、先日飼い主の苦労人な過去の一端に触れたお節介な自称大根、他称マンドラゴラですわ!
名前までウザイ感じの異母弟には、ウザイさんというあだ名をつけましたわ!
もう二度と会いたくないのです! でも、万が一外で会ったらヤツの頭髪の最後となるのですわ! 今のうちにしっかりと別れを惜しんでおくのですわ!
そんな決意を心に秘めた私が今現在何をしているかって?
深夜の極秘ミッション中ですわ!
もちろん極秘というからには飼い主には秘密のミッションですの!
女性は秘密を着飾って綺麗になるっていうし?
脳内でお嬢様っぽい言葉遣いでテンション高く宣言しながら、とてとてと廊下を歩いていく二足歩行自称大根。
お供は使い魔になってくれたミラージュゲッコーのラジュくん。
壁や天井を自由自在に移動して前方の安全を確認してくれてるので、私は気兼ねなくとてとてとてと石造りの床の上を歩いていく。
コッソリと練習したかいはあって、今のところ順調に真夜中の屋敷を一人と一匹──もとい一株と一匹で進む。
え? 扉はどうやって開けたかって?
ふっふっふ! よく聞いてくれました!(誰も聞いてない)
私がこう魔法でふよっと浮いて、葉を巻き付けて、体を重力の魔法で重くして…………ごめんなさい、嘘です。
魔法でふよっと浮いて、葉を巻き付けるまではなんとかなったんだけど、重力がねぇ、上手くいかなかった。
制御間違ったら床をぶち抜く未来しか見えなくて、結局ラジュくんに開けてもらったよ。
扉のノブに前足をかけたラジュくんは、どうやったかわからないけど器用にノブを回して廊下へ続く扉を開けてくれたのだ。
綺麗に掃除されている床に土とか落とさないように、シュポーンとした時点で自身の体へ魔法をかけてある。
何の魔法かって? それはとても便利な洗浄魔法だ。
これはこの前飼い主が使ってるのを見てたら使えるようになった。
私って結構魔法得意なのかも! とか自信を持ちかけていたのに、先ほどは重力の魔法を上手く使えなかった。
これは練習あるのみだ!
ちなみに洗浄魔法の方はというと、風呂好き遺伝子のありそうな元日本人な私に合ったのかすぐ使えたし、なんだったらそこそこ広範囲を洗浄出来てしまった。
気合を入れるとなんとウイルスとか菌的なモノまでヤれるのだよ、私。
目には見えないけど、鑑定でそう出たから。
私が『そういうモノがある』と認識出来てるのが重要なんだと思う。
コレって結構チートだし、これから突撃する現場では使い道が多い魔法だ。
そんな私のチート(笑)っぷりは今まで誰にも伝わらなかったが、現在の私にはラジュくんがいる。
葉を揺らしながら魔法を使う私を見たラジュくんはというと。
「ぴぴ」(あるじ、やばい)
って誉めてくれました。
私は誉められたら伸びる子!
つまりウイルスとか菌的なモノの浄化まで出来るようになったのは、ラジュくんのおかげだ。
「(ありがと、ラジュくん! ラジュくんもヤバいくらい素敵だよ!)」
見事な先導役をしてくれてるラジュくんを誉め称えながら、私が案内してもらったのはこの屋敷のキッチンだ。
ラジュくんは飼い主以外なら看破されないであろう『完全隠形』スキルの持ち主だから、昼間この屋敷の中の間取りを探ってもらって、キッチンを見つけてもらってあった。
元からなのか私の使い魔になったからかわからないが、ラジュくんはかなり頭が良いので私の拙い説明でキッチンがどんな場所か理解してくれて、決して狭いとは言えない屋敷の中から探し当ててくれたのだ。
あとはコッソリとキッチンの中を探索して、この世界の料理レベルについて学ぶ。
そのつもりだった。
しかし、たどり着いたキッチンの入り口からは、ぼんやりとだが明かりが洩れている。
廊下は魔法のランプ的なので照らされているが、あくまでも真っ暗にならない程度の明るさなので、キッチンから洩れている明かりは少し離れた場所からでも認識出来てしまった。
明かりが点いているという事は、どう考えてもキッチンに人がいるようだ。
悩むまでもなくいるのは『ちょっと不器用な』料理人さんだろう。
日を改めるかとも思ったが、せめて料理人さんの顔だけは拝もうと思い立ち、入り口からコソッと顔(?)を覗かせてキッチンの中の様子を窺う。
そこでは、
「あー、もう、どうしたらいいんだ。俺の料理なんて、料理と呼べる代物じゃないのに、旦那様はお優しいから何もおっしゃられない……俺なんてクビにすればいいのに……」
てな感じで、思いの外思い詰めた感じの料理人さんらしき人が、大きな声で独り言を呟いて天を仰いでいる。
料理人さんだと思われるその人は、最低限の清潔感はある朴訥な雰囲気の…………ギリギリ青年って年齢な見た目をした男性だ。
発言を聞く限り、本人も自らの料理に問題意識は持っているようだ。
飼い主はあまり食べる事に重きを置いてないから気にしてない感じなのか、優しいから気にしないで食べてあげてるのか。
でも、どうせなら飼い主には美味しい物を食べてもらいたいよ!
ここは私が一肌……じゃなく、一皮脱いでお手伝いする流れだよね。
せっかく料理スキルもらって、ついでに指導力にバフみたいなのあるんだし。
あとはどうやって料理人さんに料理を教えるかだ。
私みたいな野良マンドラゴラが突然現れて、身振り手振りで料理を教えるなんて怪しさ満点だし。
そんな事を思っていた私……。
「こうですね! カブの妖精様!」
取り越し苦労でしたー!
しかし、犬耳とブンブン振られる尻尾が見えそうな料理人さんが私をキラキラとした目で見ながら包丁で野菜を刻んでいくという光景を、まな板の横で眺めているのは──なんでだろう。
遡る事、数十分前。
どうやって料理を教えるべきか悩んでいた私だったが、しばらくして重大な問題点に気付く。
そもそも料理人さんが私の指示に従ってくれるの? という、根本的過ぎる問題点に。
想像してみて欲しい。
突然深夜のキッチンに可愛らしい(自認)二足歩行の大根(?)が現れる。
なかなかのファンタジー案件だよ。
私が同じ立場になったら、即ベッドへ直行して眠る一択だね。
──睡魔の見せた幻覚だと思って。
「(まぁ、幻覚だと思われたら、夢枕で念でも送ってみるか)」
他にいい案は全く思いつかなかったのでそう呟いて、結局当たって砕けてすり下ろされる覚悟で行く事にする。
そうしてみたら、案ずるより産むが易しってこういう事だったんだなと実感してしまった。
魔法の手助け付きでキッチンの作業台に飛び乗った私の姿を見た瞬間、料理人さんは目を見開いて──その場に跪いて天を仰ぐ。
「(へ?)」
「ついに僕の嘆きが天に通じたんだ! 僕の目の前にカブの妖精様が現れるなんて!」
思いもよらない反応にキョトンとして葉を傾げていると、料理人さんは跪いたままキラッキラの眼差しで私を見上げてそんな事を口にした。
「(ん? カブの、妖精?)」
「カブの妖精様! 料理人とは名ばかりで、食材を無駄にしている僕を罰してください! そして、僕に正しい食材の使い方を教えていただけないでしょうか! 図々しいお願いだとは……」
目玉ポーンってなって最後まで聞いてなかったけど、どうやらなんとかなりそうな気配をひしひしと感じる。
でも、一つ言わせて欲しい。
「(私、カブの妖精違うよ!)」
「ぴ」(そうだね)
私の渾身のツッコミに応えてくれたのは擬態して壁に張り付いているラジュくんののんびりした声だけだった。
なんやかんやツッコミたい事は多々あったが、ひとまず私がアピールするまでもなく何故か私から料理を習う気満々の料理人さんを前に、真夜中の料理教室がスタートする。
始まってすぐわかった事だけど、私のスキルの指導力バフ効果なのか、もともとの料理人さんの資質のせいかわからないが、やたらと料理人さんの察しがいい。そして、飲み込みが早い。
私がピッと葉を立てて指してみせると即座に反応して、
「はい! こちらを切るんですね!」
みたいな感じで、どんな食材も私が指示した(い)通りに処理してくれる。
最初は包丁すらまともに持てていなくてギョッとしたのが嘘のようだ。
殺人鬼のように包丁を上段で構えて食材をぶった切る姿は、私に本能的な恐怖から「(ひぃっ!)」という悲鳴を上げさせる迫力だったとここに記す。
どうやらあのウザイさんになびいた恩知らずなこの屋敷の元料理人は、見て学べ! みたいな事すら目の前の彼にする機会をくれなかったらしい。
ただひたすらに野菜を洗わせ、食器や使った器具を片付けさせる。
ちょっとでも手を止めようものなら怒鳴られていたらしい。
私の指示で楽しそうに料理をしながら、料理人さんがポツポツと話してくれたよ。
この料理人さんにとって、ウザイさんがウザイ上司を連れて行ってくれたのはラッキーだったかも。
料理を教えてるのが二足歩行の自称大根というファンタジーさえ気にしなければ。
私の身振り手振り(葉)だけでどんどん上達していく料理人さんを見ながら、私は一人でうんうんと葉を揺らして頷く。
私としても残ってくれたのがこんないい子な料理人さんで良かったよ。
ウザイさんになびいた料理人って、あんまり性格良さそうじゃないし、私の事を料理人さんみたいに受け入れてくれる気がしないもん。
そんな感じで過ごしていて、気付いたら結構な時間が経っていたようで……。
「あ! 朝の配達が来たみたいなので、妖精様は少しここへ隠れていてください!」
「(はーい)」
たしっと葉を上げて応えた私が押し込められたのは、野菜が入れられた籐っぽい素材で編まれた取っ手付きの籠だ。
ある意味お仲間な野菜達に紛れて料理人さんの動きを見守っていると、キッチンにある裏口的な扉を開けて誰かと二言三言話した後、木箱を抱えて戻ってくる。
「…………こんなに頼んだつもりはなかったんだけどなぁ」
そんな独り言を洩らしながら料理人さんが置いた木箱の中にはたくさんの卵が入っている。
ざっと二十個はあるだろうか。
一週間分だとしても多いかなと思いながら、籠から這い出して葉を一本ピンッと立てて見せる。
やたらと察しがいい料理人さんだから、これで私の聞きたい事がわかってくれると信じて。
「あ、はい。そうです。これ、一日分です」
「(通じたけどちょっと違うし、一日分にしては多いわ!)」
通じたけど通じてないという微妙なすれ違い感と、二十個の卵が一日分という恐ろしい事実に思わず大声でツッコむと、壁に張り付いたラジュくんから、
「ぴ」(びっくり)
という可愛らしい感想が聞こえる。
ラジュくんのいる方へ向けて葉を振って大声でのツッコミを謝ってから、改めて卵と向き合う。
卵って確か適切に保管すればかなり保つはず。だからといって、冷蔵庫も無さそうなこの世界でちんたら使ってたら悪くなりそうで心配だから、これは卵大量消費レシピの出番だね。
胸(?)を反らせてうんうんと頷く私の脳裏に色々なレシピがどんどん浮かんで流れていく。
私でも知っているようなレシピから、初めて見ましたけど! と言いたくなるレシピまで。
「(料理スキルってこういうのなんだ? 料理が上手くなるだけかと思ってたよ)」
素人に毛が生えた程度の私に料理スキル生えてどうするんだと思ってたが、これなら色々出来る事も多そうだ。
「妖精様! お知恵をお借り出来ますか!」
「(もちろんだよ! こき使わせてもらうからね)」
相変わらず聞こえてないはずなのに料理人さんはキラッキラな笑顔で大きく頷いて返してくれる。
飼い主みたいなとんでもない美形な訳じゃないが、好感の持てる朴訥な青年って感じの料理人さんの満開の笑顔。
ううむ、心の栄養になるねぇ。
親戚のおばさんじみた感情を抱きながら、私は脳裏に浮かんだレシピから今の料理人さんでも作れそうなものを選んで、材料と手順を確認する。
今の時間からなら余裕で飼い主の朝食に間に合うだろう。
少しでも飼い主に「美味しい」と思ってもらえるといいなぁ。
──結論として。
朝食は美味しく出来たようだが、この後ちょっとした問題も起きてしまったので、反省しようと思う今日この頃です……。
いつもありがとうございますm(_ _)m
感想などなど反応ありがとうございます(*´∀`*)反応いただけるととても嬉しいです(。>﹏<。)
連載っぽくなりましたが、主人公のテンションはこれまでと変わらないのであしからず。
短編のシリーズはそのうち外すかもです。




