帰還
全員は一旦、ヘレボルスに帰ることになった。
ダリアが、標的であるソフィアとアレヌスと共に行動していれば、
裏切りだと見做され 殺される可能性がある。
そのため、ミラとダリアが馬に乗って
先回りしてヘレボルスへ向かうことになった。
ニゲルが馬に乗り、ソフィアは馬車に身を潜めることになった。
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ーダリアとミラー
ダリア『本当にすごい。ミラ、何者?
何でそんなに足音が聞こえないの?
それに、すごく素早いわ。』
ミラ『野生児だったからな。』
2人は横並びに馬を全力で走らせながら
会話をしていた。
ミラ『‥‥ラナンに会えなくなってから、病気の弟は無事なのか?』
ダリア『ええ。元気にやってるみたい。』
ミラ『それならよかったな。
だがそれでも‥‥天界の水が欲しいのか?』
ダリア『マグナフォボスの妙薬を買って
送り届けているの。
でもすごく高くて‥‥‥』
ミラは目を見開いた。
ミラ『そうだったのか!?俺もマグナフォボスの妙薬を飲んでいるよ。高いよな。
そもそも、病院に連れてったほうが早いんじゃないのか?‥‥それとも、不治の病なのか?』
ダリア『よくわからないの‥‥』
ダリアの言葉に、ミラは疑問を抱く。
ミラ『よくわからないってどういうことだ?』
ダリア『‥‥アタシら暗殺者はさ、
ティルケ国から出ることは許されない。
任務以外でね‥‥‥。』
ダリアの顔は暗かった。
ミラは驚きの表情を浮かべる。
ミラ『なんだと?!
じゃあ、ダリアがティルケ国に誘拐された日から、もう弟とは会ってないのか?』
ダリア『そうよ。』
ミラ『それでなぜ弟が無事だとわかるんだ?』
ダリア『‥‥‥仲良くなった盗賊がいてね。
年も近くて。
‥‥その子がいつも、アタシの代わりに弟に薬を届けて、様子を見てきてくれるんだ。
それをアタシに報告してくれるの。』
ダリアはニッと笑顔を浮かべる。
随分と盗賊を信用しているようだ。
ミラは、少し顔を歪めた。
ミラ『信頼できる奴なのか?』
ダリア『うん。優しいしさ。
それに、盗賊の子にちゃんとお金払ってるよ。
あっちも仕事としてやってるんだ。
ウィンウィンでしょ。』
ミラは、ダリアの言葉に何も返さなかった。
しばらく考え込んだ後に、口を開く。
ミラ『‥‥‥。
その村がどこにあるかわかるか?』
ダリア『海珠村
っていう名前のところなんだけど‥‥
ティルケ国からそう遠くはないはずなんだ。』
ミラ『海珠村‥‥‥
地図見て俺が行ってみるさ。
弟の名前と見た目はわかるか?
あとで教えてくれ。』
ダリア『あはは。ありがとう。』
ダリアの笑顔は愛らしかった。
暗殺女子と知らなければ、
無邪気に笑う 普通の女の子なのだ。
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ーニゲル達ー
ニゲルは全力で馬を走らせながら、
ヘレボルスへ向かっていた。
それでもミラやダリアの姿はとうになく、
彼女たちの随分後ろを、ニゲル達は進んでいたのだった。
馬車の中から、ソフィアがニゲルに声をかける。
ソフィア『ニゲル。泊まる暇はないわ。
とにかく進んで。
魔法で応援を呼んだわ。
そのうち兵士たちがこちらに向かってくるはず。
私たちと合流するでしょう。』
ニゲルはソフィアの言葉を聞き、
前を向いたまま、威勢よく返事をした。
ニゲル『御意!!!』
アレヌスは、戸惑いながら馬車に揺られていた。
アレヌス『姉上。先ほどは何だったのですか?』
ソフィア『‥‥隠しても仕方がない。
暗殺者が現れたのよ。』
アレヌス『暗殺者‥‥!!!』
アレヌスは体を震わせた。
ソフィア『いい?一国の君主になるということは、
陰謀の渦巻く世界に
身を置くということよ。』
ソフィアは目を閉じて言い放つ。
その声は静かながらも、力が宿っていた。
ソフィア『これからも、あなたを狙う者が現れるかもしれない。
それはどこの国も一緒よ。
上に立つ者の前には、必ず‥‥
引き摺り下ろそうとする者が現れる。』
アレヌスは、真剣にソフィアの目を見つめて
耳を傾けている。
ソフィア『‥‥‥それでも、国王になるあなたは
常に堂々としていなければならないわ。
隙を与えないために。そして国を守るために。
幼いあなたにはまだ、難しいかもしれないけれど‥‥。』
アレヌスは、ソフィアに問う。
アレヌス『姉上は、怖くないのですか。』
アレヌスの声は震えていた。
アレヌス『あのディセントラを倒したと聞きました。
怖くなかったのですか?
たくさんの兵士が、ディセントラについていました。
剣を向けられたと思います。
痛みや死ぬことへの恐怖はないのですか。』
アレヌスはまっすぐな瞳に
涙を浮かべて聞いた。
ソフィアは目を閉じてから、
アレヌスの頭を撫でた。
そして優しい笑みを浮かべて言った。
ソフィア『怖いわ。』
アレヌスは、ソフィアの言葉を聞いて、
目を大きく見開いた。
ソフィア『けれど、大切な者たちを失うほうがもっと怖いわ。』
ソフィアは一瞬、冷たい表情を浮かべた。
焼かれた森と愛した動物たち。
殺された親友と母ー‥‥
もう、失ったものは二度と元には戻らないし
生き返らないのだ。
ソフィア『だから戦ったのよ。
これ以上、何も失いたくないから。』
幼いながらに、アレヌスは気づいた。
ソフィアは少しも弱みを見せない。
でもたまに、一瞬だけ
美しい横顔が陰るのだとー‥‥
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ダリアとミラは、あっという間に
ヘレボルスへ辿り着いた。
ミラ『ここだ。
ダリアに刺客が現れたら困るから、
隠れておこう。』
ミラはヘレボルスの広大な森の中に
ダリアと共に身を潜めることにした。
精霊の国の祠の近くにやってきた。
ダリア『すごい‥‥これが精霊の国の祠‥‥』
ミラ『ああ。』
ダリア『‥‥‥。
ミラ。ティラ王子と因縁があるって言ってたけど、
どういうことなの?』
ミラ『それは‥‥』
ミラが口を開きかけた時、
マルメロが勢いよくミラの元へ走ってきた。
ミラ『マルメロ!!』
マルメロはミラの頬をペロペロと舐めた。
ミラもマルメロを撫でる。
ミラ『帰ってきたんだな。』
マルメロの方角を見ると、
ソフィアたちがやってきた。
ソフィア『早かったわね。2人とも。』
ミラ『まあな。』
ソフィア『ミラ、レティア、ダリア。
さあ行ってきて。
ニゲル、トーア、マルメロは
ヘレボルスに残ってちょうだい。
アレヌスを他の兵士たちと共に守ってね。』
ソフィアの言葉に全員は返事をした。
ミラ『レティア。ダリア。行こうか。』
ソフィア『何か必要なものがあれば言ってね。』
ミラ『ありがとう。
なあ、ソフィア。
もしかしたらここに盗賊たちを連れてくるかもしれないが、構わないか?』
ニゲルは盗賊と聞いて眉をひそめた。
ニゲル『盗賊‥‥。
ミラ、お前の人柄はよくわかっているが
お前の知り合いの盗賊は大丈夫なんだろうなぁ?!』
ニゲルは警戒心を高めている。
ミラ『心配いらないよ。
盗賊って言っても、
人から盗んだりせずに
合法的な方法で依頼を受けているから
普通の盗賊とはちょっと違うんだ。』
ニゲルはそれを聞いてホッと胸を撫で下ろす。
ニゲル『それなら良いが。
それじゃ、盗賊じゃないだろ!』
レティアはそれを聞いて吹き出した。
レティア『ニゲルもそう思う?
私も初めて聞いた時は同じこと思ったわ。』
レティアの発言にみんなも一斉に笑い出した。
ミラ『じゃ、行くぞ。』
ミラ、レティア、ダリアは
凋落の街へと向い出した!




