たどり着けない海珠村
ミラ、レティア、ダリアは凋落の街へと向かった。
ヘレボルスの馬は、魔力を込めて全力で走らせると
普通の馬の5倍は速く走るため、
本来なら歩いたら2日かかる凋落の街も、
数時間で着きそうだ。
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レティアはミラの後ろに乗り、
ダリアはミラと横並びで馬を走らせている。
凋落の街へと向かいながら、
3人は会話をしていた。
ダリア『ミラとレティアは何歳なの?』
ミラ『俺は17歳。』
レティア『私、人間界での歳がわからないの。
天界にいた頃は、人間に例えるなら小学生くらいと言われていた。
だけど人間界では、ミラと同い年くらいに見えると言われたから、17歳くらいかしら。』
ミラ『天界と人間界は時間軸が違うんだったな。』
ダリア『そっか。
アタシは16歳だから、2人の1つ下かな。』
ダリアの 高く結かれたサラサラな赤髪が
風で靡いていた。
レティア『ダリアは、何歳の時にティルケ国に‥‥?』
ダリアは少し視線を落とした。
ダリア『10歳の頃だった。
もう6年も暗殺者やってるんだ‥‥‥』
ミラ『その間、一度も家族に会えていないのだろう?』
ダリア『うん‥‥さっきも言ったけど、
任務以外でティルケ国を出るのは
許されてないからさ。』
レティア『それで今回、凋落の街に向かって大丈夫なの?』
ダリア『‥‥平気。命じられた任務の時は、何処に行こうが遂行さえすれば咎められないよ。』
ミラ『自分の故郷の海珠村には
帰らなかったのか?』
ダリアは悲しそうな顔を浮かべた。
ダリア『何度も行こうとしたよ。
海珠村にいた頃から持っていた地図を見て向かうんだ。
でもね‥‥不思議なことに、一度もたどり着けないの。』
ミラはダリアの顔を見た。
ミラ『どういうことだ?
でも、お前の知り合いの盗賊は、
ダリアの弟に薬を届けてくれているんだろう?
様子もついでに見てくれているんだよな?
任務の時にそいつに連れて行って貰えばいいんじゃないのか?』
ミラの提案に、ダリアは首を横に振った。
ダリア『アタシの任務の時と、あの子の取れる時間が全く被らないの。
それにね、アタシも伝えたの。たどり着けないこと。
詳しい場所を聞いたよ。目印とかさ。
だけど‥‥』
【ダリアは‥‥方向音痴なんだから‥‥‥。
私は‥‥‥ちゃんと‥‥辿り着けるわよ‥‥。
私のいない時に迷って‥‥‥もしも、
時間内にティルケ国に戻れなかったら‥‥
大変よ‥‥‥。】
ダリア『そう言われたの。アタシ
本当に方向音痴だからさ。
そうなのかなって思って‥‥。
それに、その子に言われた通り‥‥
迷って、時間内に帰れなくて殺されたらたまらないし‥‥』
ミラはダリアの話を聞いて、首を傾げる。
ミラ『妙だな‥‥‥
色々と怪しいしおかしい。
やはり一回行ってみる他ないな。』
ミラは、今度は険しい顔を浮かべた。
レティア『ラガー達やアケミママなら、海珠村のこと、知ってるかもしれないわね。』
ミラ『そうだな。聞いてみよう。』
レティアとミラの会話の後で、
ダリアはレティアに質問を投げかけた。
ダリア『あのさ。レティア。ラナンは元気?』
レティアは虚な顔をする。
ダリアはレティアの表情を見て
すぐに嫌な予感がした。
レティア『生きているけど、植物人間状態‥‥』
ダリア『うそ‥‥!なんで?』
ダリアは驚きと悲しみの表情を滲ませた。
レティア『私を庇って、ラナンの実の母に攻撃されたの。』
ダリア『!!!!!!
そんな‥‥!!!』
ダリアは一瞬、瞳に絶望を浮かべる。
ダリア『‥‥ラナンはさ。
翼、見えなかったけど、天使なんだよね。』
レティアは静かに頷いた後、口を開く。
レティア『幸せを産む天使ってわかる?』
ダリア『知ってる!!
人間界と天界を繋ぐ存在で、出会った人は幸福になれるっていう伝説の‥‥!
もしかして、ラナンはその、幸せを産む天使様の子供だったの?』
レティアは再び、こくりと頷いた。
ダリア『その天使様が実の息子に攻撃するなんて‥‥どう言うことなの‥‥。
レティアの双子のお子ちゃんは?』
レティア『殺されたわ。』
ダリア『なっ!?!?
嘘でしょ!?!?』
ダリアは肩を震わせる。
レティア『‥‥‥ちょうど、ティルケ国の刺客が天界に現れた日‥‥
私は母に、人間界に子供達を連れて逃げる様に言われたの。
そして‥‥言われた通り人間界に向かったわ。』
レティアは、ミラの背中に回していた手に、ぎゅっと力を込めた。
レティア『でも母の友人である熾天使から、
母が倒れたと聞いて‥‥
早く天界に戻る様に言われた。
双子の子供達は、私なんかよりずっと強かった。
とんでもない力を持っていたの。
だから、刺客のいる天界に2人を連れて帰るより、人間界で隠れさせた方が無事だと考えた。
‥‥それが私の間違いだった。』
ダリアは、言葉を失っていた。
レティア『‥‥無事に刺客が倒され、
私が人間界に向かった時には、
子供達は惨殺されていた。
息子のサンダーは心臓を抉り取られ
娘のソニアは全身を切り裂かれていた。』
ダリア『そんな‥‥そんなことが‥‥
一体ティルケ国は、誰から‥‥
天界に暗殺者を送り込む様言われたの‥‥』
ミラ『人間じゃないと言っていたな』
ダリア『うん。人間じゃない。
けど、誰かまではわからなくて‥‥‥。
‥‥‥きっと、魔界の奴だよね。
天界に暗殺者を送り込んで、レティアの子供達を殺すなんて‥‥
魔界の奴らしか考えられない。』
ミラ『色々とタイミングが良すぎるもんな。』
ダリア『うん‥‥
だけど、何の恨みがあってそんなこと‥‥』
レティア『私は、熾天使と悪魔の娘なの。』
ダリアは目を見開いた。
ダリア『そうなの!?』
レティア『ええ。
‥‥悪魔の父のことは、誰も教えてくれなかった。
だからどんな性格で、どんな見た目かすらもわからない。
だけど天界で、
悪魔は本当に忌み嫌われていたわ。
最も高貴な熾天使と、悪魔の娘だった私は、
毎日色んな天使から、呪詛の言葉を投げかけられていたわ。』
レティアは遠い目をして、ダリアに打ち明けるのだった。
ダリア『そんなに辛いことがあったんだね‥‥。
じゃあ‥‥やっぱり、犯人は‥‥‥悪魔かな‥‥‥。
悪魔本人じゃなくても、何かしら関与していそうだね‥‥‥』
ダリアは暗い表情で言った。
レティア『‥‥私は、全てを恨んで天界から飛び降りた。
そして今、我が子を殺した犯人を見つけ出すために生きているの。』
ダリア『そうだったんだね‥‥』
ダリアは言葉を失ったように、一瞬沈黙した。
ダリア『でもよくわかんないね。
ティラ王子みたいに、天使の秘技を持ってる人もいて、
人間でも天界に行くことができるし、
ラナンのお母さんみたいに、
我が子を手にかけようとする天使もいるんだし‥‥
悪魔は皆知っての通り
人間界で悪さしたり、邪悪な存在だし‥‥』
レティア『途方のない旅よ‥‥‥』
レティアはため息混じりにつぶやいた。
レティア『だけど、ティラ王子が天使の秘技を持っている理由や
あの日、誰から暗殺を頼まれたのかを暴ければ
かなり前進しそうだわ。』
ミラ『そうだな。』
会話しているうちに、
すっかり明け方になっていた。
本当は、マグオートからヘレボルスへ帰る途中で、
皆で一泊するはずだったのだ。
それを、全力で馬を走らせて当日中に帰って来て、
休む間もなく3人は凋落の街へ向かっていたのだからー‥‥‥。
ミラ『レティア。ダリア。鍛冶街パームラが見えた。
凋落の街もあと少しだ!』
ミラの言葉に、
一睡もせずに活動していて、少しだけ疲れを滲ませていたレティアとダリアも
元気を取り戻したのだった。




