アサシンガールになった理由
ダリア『‥‥‥‥‥。
アタシ、さ。
幼い頃 弟がいたんだ。
ティルケ国に来る前に、
村に住んでて‥‥‥。』
全員は静かにダリアの話に耳を傾けた。
ダリア『病気だったんだ。弟。
でも家族は貧しくて‥‥
治してあげられなかった。』
レティア『そんなに辛いことがあったのね‥‥‥。』
レティアは悲痛な顔を浮かべた。
ダリアは、一緒に悲しんでくれるレティアに
眉を顰めて頷いた。
レティア『アタシは毎日
天使様がいると言い伝えがあった神殿に通ったの。
手を合わせて祈り続けたんだ。
弟の病気が治りますようにって。
そしたらさ、ある日
不思議な男の子がアタシの前に現れたの。』
ダリアは優しい笑みを浮かべる。
ダリア『その子は、不思議な水をくれた。
天界にある水で、魔力が込められているって教えてくれたの。
体に足りない成分を補ってくれる神聖な水だと‥‥』
レティアはそれを聞いて口を開いた。
レティア『聖なる玉泉の水ね!?』
ダリアは驚いたようにレティアを見つめた。
ダリア『そう!!そうそれ!!!
やっぱり本当に、天使様なんだ。』
ダリアは目に涙を滲ませる。
ダリア『その子のくれた水を飲ませたら、
弟はすごく体調が良くなったの!
会うたびに男の子は、その水をくれた。
だけど‥‥‥
ある時から、男の子に会えなくなった。』
ダリアは寂しそうに下を向いた。
ダリア『ある日、アタシは
いつものように神殿に向かっていた。
会えなくなっても、通い続けたんだ。
お礼も言いたかったし、やっぱりその特別な水を飲まない日が続くとね、
弟は、体調が悪くなったから‥‥』
ダリアは自嘲気味に笑う。
皆は真剣にダリアの話を聞き続けた。
ダリア『その時から記憶がないの。
神殿に向かう最中に、
頭を殴られて鈍い痛みを感じた。
目覚めた時にはもう、ティルケ国にいたんだよね。
そんなこと、すっかり忘れてた。
トーアに呪いを解いてもらえなければ
アタシ ずっとこのこと忘れてたんだね。』
ダリアの表情は怒りに満ちていた。
ダリア『弟を助けたい、あの水が欲しい。
そして、あの男の子に会いたいって思いだけは
忘れなかったはずなの。
誰かに話そうとしたから、
呪いで記憶を抑えられたのかな?』
ダリアは拳を握りしめた。
殴られて ティルケ国に連れ去られ
記憶を呪いで消されていたのだから当然だ。
ミラ『‥‥。
レティア。ソフィア。
ディセントラは、王子を知っているような口調だったけど
今回の暗殺の件も、生前にディセントラが
何かしら関与していたのかな。
ディセントラは黒魔術を使って、国王達を操っていた。そして天使の剥製を持っていた。
ティルケ国では暗殺者育成。
そしてダリアに呪いがかけられていた。
天使の秘技を持っている。
何か似てる気がする。』
ミラの表情は険しかった。
ダリアも、ミラの話に耳を傾け、
少しだけ肩を震わせた。
ソフィア『ミラの言う通りだわ‥‥‥。』
ソフィアは囁いた後、すぐにハッとした。
ソフィア『ごめんなさい、話が逸れたわね。
推理は最後でいいわ。
ダリア、続けて。』
ダリアは 気にしないで、と呟いた。
続きを話し出す。
ダリア『その子ね、一瞬で色んな場所に行くことができる男の子で‥‥』
レティアが ダリアの方を向いて声を上げた。
レティア『まさか‥‥!!!
ねえ、その子は赤髪の男の子だった?!
目は翡翠のような緑色‥‥!!』
ダリア『え!?!?そうよ!!!そう!!!
名前は‥‥えっと忘れたけど、
見た目はそう!!!!
知り合い!?!?』
レティアは涙を浮かべて言った。
レティア『ラナンね‥‥‥』
ダリアは目を見開いた。
ダリア『そうだ‥‥ラナン‥‥!!
ラナンキュラスという花に似てるねって
話した‥‥!!
レティアの知り合いだったんだ‥‥!』
ダリアの表情は明るくなった。
その後すぐに、ダリアは冷たい目をした。
殺気が篭っていた。
ダリア『あとね‥‥‥
ティルケ国のティラ王子は、
たくさんの女の子達に暴力するって有名なの。』
ミラ『!!!!!』
ミラは目を見開いた。
皆も 顔を見合わせる。
ミラの過去を知っているからだ。
ダリア『ラナンと会えなくなって
気づいたらティルケ国で暗殺者になってた頃、
新しい天使達が人間界に現れたって噂を聞いた。』
レティア『!』
ダリア『双子の子供達で‥‥
女の子の方が、真実を暴く力があって‥‥
権力や富で絶対に勝てないような裁判の判決すらも
翻す 特別な力を持っていると聞いた。』
レティアは目を見開いた。
レティア『私の娘!!!!!ソニアの‥‥!!!!』
レティアはダリアにつかみかかる勢いで近づいた。
ダリア『レティアの娘!?!?』
ダリアは声を上げた。
興奮状態のレティアの姿に、少しだけビクッと肩を震わせる。
ミラはレティアにそっと近づき、優しく腕を掴んだ。
レティアは振り向く。
優しい笑みを浮かべたミラがいた。
レティアは我に返った。
レティア『‥‥ごめんなさい。取り乱したわ。』
ダリア『ううん‥‥。
アタシと同じくらいの歳のレティアに双子がいたなんて。』
ダリアは何かを考えるように一呼吸置いた後、
再び話し始める。
ダリア『それで天界に行きたかった。
ティラ王子に乱暴された女の子達がどんなに訴えても権力で揉み消される。
何なら、失踪した子もいたの。
多分‥‥‥‥』
ダリアは口を閉ざした。
ニゲル『ティラ!!!!
クソ野郎だ!!!!
人間じゃねえ!!悪魔そのものじゃねえか!!』
ニゲルは怒りを滲ませ、声を荒げた。
今にも殺しに行きそうな勢いだ。
ダリア『ティラ王子には、どんな証拠があろうとも裁判で勝てない。
だから、レティアの娘ちゃんの、
【真実を暴く力】を貸して欲しかった。
そして暗殺国家ということも世に知らしめて
もう、こんな生活やめたかった。
その天使の子供達が、人間界のどこにいるかなんてわからないから、
天界に行けたら早いと思って。』
ニゲル『そのために‥‥天界に行く機会を狙うために‥‥ 人を殺していたのだな。
もう何が正義で悪なのか、俺にもさっぱりわからなくなった。』
ニゲルは力が抜けたように吐き出した。
ミラ『暗殺命令は絶対なのだろう?
失敗すれば殺される。
自分が生きるために殺すしかなかった。
‥‥‥‥辛いな。』
皆、静かに頷いた。
ダリアも、何者かに頭を殴られて
ティルケ国に誘拐されなければ、
今頃は、たとえ貧しくとも
家族とどこかの村で暮らしていたかもしれないのだー‥‥‥。
ソフィア『でも生身の人間が、その不思議な生き物に乗れば、無傷で天界に行けるの?』
ダリア『アタシ、さっき魔力攻撃は効かないって言ったでしょ?
特別な訓練されてる暗殺者達なら行けるよ。
普通の人間なら、身が持たないと思うけど。』
トーア『僕の目も欺ける魔力だったね。
誰に習って、どんな魔力なのか気になるな。
ダリア『‥‥‥とある‥‥』
ダリアが言いかけた時、
ダリアの持っていた携帯のような電子機器が鳴った。
♪〜〜
ダリア『ちょっとごめん。』
ダリアはボタンを押すと、
相手の声が聞こえてくる。
?『ダリア。任務の遂行はどうだ。』
ダリア『‥‥平気よ。心配しないで。』
?『タイムリミットは明後日の9時だぞ。』
ダリア『‥‥‥分かっているわ。』
ダリアの返事の後、すぐに通話はブチっと切れた。
ミラ『色々聞きたいことは山ほどある。
だが‥‥‥
標的を殺さなければ
お前が消されるんだろう?ダリア。』
ダリアは俯いた。
そしてゆっくりの頷いた。
ダリア『仕方ないわ。
アタシだって人の命奪って生きてきたんだもの。
いまさら命乞いなんかしない。
あんた達を殺すつもりもないしね。』
ダリアは寂しく笑った。
ミラ『レティア。ソフィア。
一度ヘレボルスに着いたら、凋落の街に向かって良いか?
ゴーキーが偽物の死体作るの上手いんだよ。』
ミラは得意げに笑った。
レティア『そうなの?
それは早く行かないと!!!』
ソフィア『そうね。
レティア、ミラ。行ってきて。』
ダリアはその会話を聞いて、
戸惑いの色を見せた。
ダリア『アタシ、あんた達殺そうとしたのに、
なぜそこまでしてくれるの?!
意味がわからない‥‥‥』
ダリアは信じられないものを見るような目で
少しだけ後ずさった。
ミラ『俺もレティアも、
ダリアに伝えたい過去があるし
まだ話は終わってないが‥‥
まずは偽物の死体を作って、欺いて、
お前の任務を遂行したように見せるのが先決だろう?
タイムリミットが明後日なのだからな。』
ダリア『アタシなんかに構わずに‥‥‥』
ミラ『俺もティラと因縁がある。
それに、影では暗殺国家で
お前を殴って誘拐したなんてとんでもない話だぞ。
なあ、ソフィア。国としてどうなんだ。』
ソフィア『あり得ない話よ!!!』
ソフィアも怒り心頭だった。
ダリア『‥‥‥みんな‥‥‥』
ダリアは、静かに涙を流した。
その姿は非道な暗殺女子には見えなかった。
トーア『うん。本当に透視したからわかるよ。
君は人を殺したくない。
そんな気持ちが伝わってくるさ。
それにダリアちゃんの話に嘘は一つもなかったよ。』
ミラ『だったら尚更、だな。』
ミラはダリアに笑顔を見せた。
ダリアは、ミラの笑顔に顔を赤くした。
ニゲル『とりあえず、アレヌス様を連れて無事にヘレボルスまで帰るぞ!!
ミラ達が凋落の街に帰るのはその後だ!!』
ミラ『ああ、わかったよ。
レティア、きてくれるか。』
レティアはその言葉にとびきりの笑顔で頷いた。
レティア『当たり前でしょ。アケミママにも果実団のみんなにも会いたいし。』
その言葉を聞いて
ミラも笑顔で頷き返した。




