レティアとミラの過去とティルケ国の再浮上
ソフィア『レティア。大丈夫?
トーアからシャーマンの国に行ったと聞いていたけれど、帰ってこないから心配したのよ。
マルメロにあなたのにおいを辿ってもらったの。
まさかこんな場所にいるとは‥‥‥。』
ソフィアは心配そうにレティアを見つめた。
レティア『ごめんなさい。みんな‥‥』
ソフィア『いいえ。責めているわけではないのよ。
‥‥‥‥そういえば、あなたの話を
何も聞いていなかったわね。
ヘレボルスの建て直しばかりに時間を注いで
あなたたちにも協力してもらっていて‥‥
まともに話を聞くことすらせずごめんなさい。
レティア‥‥。あなたが良いなら
私にも聞かせてくれる?
なぜ天使だったあなたの姿が
私たちに見えるのかしら。
そして、このお墓は一体‥‥‥?』
レティアはポツリと話し始めた。
レティア『この二つの墓碑は、
私の双子の息子と娘のものよ。』
ソフィアは目を見開いた。
ソフィア『子供がいたの!?』
レティアは頷く。
レティア『幸せを産む天使って知ってる?』
ソフィア『!
知っているわ。
伝説の天使と呼ばれる存在ね?
天から決められた男の子供を授かる天使のことでしょう?
生まれた子供は、【天の神子】と呼ばれ
特別な力を持ち人間を幸せにするとか‥‥』
レティア『そうそう。さすがソフィアね。
‥‥私は幸せを産む天使だった。』
レティアは双子を授かるも、残虐に殺されたことを話した。
そして相手の男がさっきここにいた翳丸だと言うことも。
ソフィア『まさかこんなに若いあなたが‥‥‥』
レティアは熾天使と悪魔の娘として生まれ
毎日いじめられたこと、
ラナンという男の子が自分を庇って、植物人間になったこと、
その彼がシャーマンの国で眠っていること、
味方だった師匠が失踪したことも話した。
レティア『それで私、全てを恨んで
天界から飛び降りたの。死ねるようにと。
でも、生き残って‥‥ミラ達が助けてくれた。
だから私は、
我が子を殺した犯人や師匠を誘拐した者を見つけ出す。
そのために生きることにしたのよ。』
ソフィア『そんなに辛いことがあったのね‥‥‥。』
ソフィアは、レティアの話を聞いて
悲痛な顔をした。
レティアは、自分の話を聞いて一緒に悲しんでくれることが嬉しかった。
ミラ『俺も協力するつもりで、
レティアと旅に出てるんだよ。
元々俺は、凋落の街で盗賊をやっていたんだ。』
ソフィア『そう。
ミラ‥‥あなたが女の子だと知った時、私本当に驚いて‥‥‥。
頭もいいし、力もあるし、素早いし‥‥
天才肌よね、あなた。』
ミラ『ほめても何も出ないぞ。』
『天使様の話はわかった。
だが‥‥‥なぜお前は男の格好している。』
不意に皆の後ろから、男の声が響いた。
ソフィア『ニゲル!!!』
レティア『いつの間にいたの?!』
ミラ『‥‥‥ずっとその木の上にいたぞ。ニゲルは。』
レティア『ええっ!?足音も殺気も感じないから気づかなかった‥‥!
言ってよ、ミラ‥‥‥!』
ミラ『すまない。みんな気づいてると思っていた!』
ソフィア『さすがはミラね‥‥!』
ニゲル『天使様。
そんなに辛いことがあったなど知りませんでした。
しかし熾天使様の力と悪魔の力があったからこそ
ディセントラに勝てた。
もしもあなた様に悪魔の力がなければ、
マルメロはあのまま死んでいたでしょう。
そしてマルメロに触れた誰かも‥‥
死んでいたかもしれません。』
ソフィア『本当にその通りね。
レティア。あなたは天界で辛い思いをたくさんしたかもしれない。
だけど、人間界では、
あなたの熾天使と悪魔の力で
たくさんの人を救えるかもしれないわ。』
ソフィアはそう言ってにっこり笑った。
レティアもそれを聞いて微笑む。
レティア『ありがとう。2人ともー‥‥』
ニゲル『それで。ミラ。
なんでそんな格好してるんだ?』
ミラ『‥‥‥。少し重い話になるぞ。
俺は3歳から孤児だったんだ。』
ミラは母が3歳の頃、男に銃で殺されたこと、
そこからペティナイフ一本だけ握りしめて生き延びたことなどを話した。
ソフィア『そんな‥‥‥3歳なんて赤子も同然だわ。あなたは1人で生きてきたというの?』
ミラ『俺は毎日外で寝たよ。
冬は背中が痛いくらい冷たいし、
雨の日は地面が濡れてぬかるんで
全身の体温を奪われるんだ。
でも晴れの日は夜空の星が綺麗だった。
毎日星を見たから、目がすごく良くなった。
女というだけで狙われた。
俺くらいの女の子で、いつしか2度と帰ってこない子が何人もいたさ。
だから殺気にも気配にも敏感なんだ。
治安の悪い場所だったから、1日を生き延びるだけで修行になった。
毎日銃声の音が響いていたし、
そこら辺歩けば死体が転がっていたから。』
ニゲル『な‥‥‥‥‥!!!!!』
ニゲルは言葉を失っている。
ミラ『ある時、小国の王子がやってきた。
名前はティラ。ティルケ国の王子。
ソフィアなら知っているかもしれないな。』
ソフィア『!
ティルケ国のティラ‥‥‥‥!』
ソフィアの顔色が変わった。
ミラ『‥‥‥。
初めて優しくされたんだよ。俺。
身寄りもいないし、頼れる大人もいない。
毎日ゴミを漁ったし、食べ物を持ってる大人がいたら盗んだ。
そんな中、毎月会いにきては
俺に服や、食事を恵んでくれたんだ。
それに、端正な顔立ちの男だったからな。
幼いながらに、初めてドキドキしたんだよ。』
ミラは遠い目をして言った。
ミラ『12歳の時、俺はついに孕んでしまった。』
ニゲル『何ぃっ!?!?!?!?』
ニゲルは叫んだ。
静かな森で、ニゲルの怒声が響き渡る。
ソフィア『な‥‥‥‥!?!?
ティラの子を!?!?』
ミラはこくりと頷く。
ミラ『俺はティラに打ち明けた。
そしたら家来と共に何度も腹を殴られた。』
ニゲルは拳を握りしめ、
怒りに打ち震えている。
ミラ『しばらく殴られたあと、
腹がキュッとする感覚がした。
足から血が伝った。
その瞬間、赤ん坊が流れたと悟ったんだ。
俺は意識が朦朧として
薄れゆく意識の中聞こえてきた。
優しいはずのティラの言葉が。
【もしも父に孤児を孕ませたとバレればまずい。
そしてこいつが仮に生き残り
赤子を抱いて城に現れて
《あの時の子供だ》と言い張ってもまずい。
今のうちに 腹を
再起不能にしておけ。
そうすれば容疑すらかけられない
こいつは元々、孕めない体質だったとな。】』
ソフィア『っ!!!!!
腐れ外道ね!!!!!』
普段気品のあるソフィアから想像できない言葉と怒りの声が響く。
ニゲル『ティラ!!!
あのクソ野郎!!!!
絶対に天罰がくだるぞ!!!!!!』
ミラ『俺は捨てられたんだが
そのあと、ユウカという女に拾われて
娘のように育ててもらったんだ。
ユウカは病気で亡くなった。
それから俺は、男として生きるようになった。
もう2度と、女だからと舐められないように。
そして俺のように傷ついた奴らを助けたいと思ったんだ。
そのためには、治安の悪い街で、
女であるのは不利だったから。』
ミラはフッ、と笑って言った。
ニゲルはガシッとミラの肩を掴む。
ニゲル『だからお前!!マグナフォボスの妙薬飲んでるんだな!?』
ミラ『ああそうだよ。
殴られたせいでもう子宮は治らないから。』
ニゲル『そうか‥‥‥‥』
ニゲルは悔しそうな表情を滲ませる。
ミラ『ニゲル。俺は過去に興味がない。
今、幸せだし、ユウカがそんな過去を忘れさせてくれるほどに愛をくれたんだ。
それに盗賊団の仲間もいるし、今はレティアもいる。
どうでもいいんだ。ティラのことなんてさ。』
ミラは笑った。
ニゲル『‥‥‥!
ミラ‥‥お前ってやつは‥‥‥!』
ニゲルは途中まで何かを言いかけて、口を閉ざした。
ソフィア『2人とも。辛い過去を思い出させてしまってごめんなさい。
2人には恩があるわ。何でも協力させて。
ティルケ国‥‥‥
そういえば国王が病気とかいう話、聞かなかった?』
ミラとレティアは顔を見合わせた。
レティア『そんな話聞いたことないわ。
ミラ、数ヶ月前、国王は元気だったわよね。』
ミラ『ああ。
‥‥‥俺らは、全国で悪さをしていた盗賊団蟒蛇を倒したんだ。
それでティルケ国に招待された。
その時は、国王は元気だったよ。』
ニゲル『なっ!!!招待されていたのか?!』
レティア『ええ。ミラは‥‥
仲間の女の子たちが、ティラに何かされたら困るからと着いてきてくれたのよ。』
ニゲルはミラを小突いた。
ミラ『痛ったいなぁ。なんだよ女に向かって。』
ニゲル『お前は無理しすぎなんだよ!!』
ニゲルは乱暴に言い放つ。
彼なりの優しさなのだろえ。
ソフィア『ここ数日で耳にしたのだけど、
国王の容体が悪いらしいのよ。
‥‥‥もし崩御すれば、
ティラが国王になるかも。』
ニゲル『あ、でも確か、国王が衝撃の告白をしていましたよ。
隠し子がいるって。生きていたら10代後半くらいの歳だと。』
ソフィア『そうなの!?!?』
ニゲル『はい。
まあでも、もし生きていれば女の子らしいので
国王になるのはティラで間違いないでしょう。』
ミラ『どいつもこいつも、男はどうしようもないな‥‥‥‥』
ミラはやれやれというジェスチャーをした。




