生きていたラナンと双子の墓碑
ボロボロ涙を流すレティアに
清光はハンカチを持ってきてレティアに渡してくれた。
しばらく泣いた後で
レティアはしゃくりあげながら口を開いた。
レティア『‥‥が‥‥ねば‥‥った。』
清光はよく聞き取れず、
レティアに近寄った。
レティア『私が‥‥死ねばよかった‥‥‥』
レティアが絞り出すように発した言葉に、
清光は慌ててレティアの肩を優しく掴んだ。
清光『レティアちゃん!!なんてこと言うんだい!!』
レティア『憎くないのですか‥‥?
ラナンは強くて優しい男の子だったー‥‥。
私を庇わなければ、今頃
大輪の笑顔で笑っていたはず。
醜くて異形の私なんかが生き残って
美しい翡翠色の瞳を持つ、人気者のラナンが亡くなってしまった‥‥。
ごめんなさい‥‥生きていて‥‥ごめんなさい‥‥。』
レティアは泣きじゃくる。
人間界に飛び降りてから悲しむ間もなく
いろんな出会いや出来事があった。
大好きなラナンとの再会に、
頭の中で封印されていた悲しい記憶と辛い感情が
溢れ出て止まらないのだ。
清光はレティアを落ち着かせるように背中をさすった。
清光『そんなこと言わないで。
レティアちゃん。
今から言うことを落ち着いて聞いてね。』
清光はレティアを見た。
真剣な眼差しだ。
レティアはしゃくりあげながら
コクコクと頷いた。
清光『ラナンは‥‥生きているんだよ。』
レティア『えっ!?!?』
清光の言葉に、レティアは思いっきり顔を上げた。
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レティア『どう言うことですか!?
ラナンは生きているの!?!?』
レティアは清光とラナンを交互に見る。
信じられない気持ちだった。
清光『うん。生きているよ。
でも、植物人間の状態なんだ。』
レティアは目を見開いた。
レティア『どうしたらラナンは目覚めるのですか!?』
レティアは清光に迫る。
目に涙をいっぱい溜めながら。
清光は暗い顔をして俯いた。
おもむろに口を開いた。
清光『わからないんだ。
目覚めさせる方法は‥‥‥。
でもこの結界で、
ラナンの体を守っているんだよ。』
レティア『この結界を出たら、ラナンは死んでしまうの?』
清光『うん。
だから厳重なんだ。』
レティア『そう‥‥ですか。
なぜミン様は、ラナンと私を
殺そうとしたのですか?』
清光はレティアの言葉に黙り込んだ。
清光『‥‥‥‥。
僕もよくわからない。』
レティア『ミン様の居場所は‥‥‥』
清光『それもわからない‥‥』
レティア『ラナンをどうやって連れてきたの?
あの日、ミン様がラナンをどこかへ運んで行ったのですよ‥‥‥』
清光『‥‥ごめんね、レティアちゃん。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。』
清光はこれ以上
口を開くことはなかった。
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清光に見送られて、シャーマンの国を後にするレティア。
レティア『またラナンに会いにきても‥‥いいですか?』
レティアは恐る恐る聞いた。
清光は優しく笑うと、頷いた。
清光『もちろん。
僕も嬉しいよ。
息子に会いにきてくれる子がいるなんてね。』
レティアはその言葉を聞いて嬉しくなった。
【ラナンを、目覚めさせる。
目覚めさせる方法を見つけるー‥‥‥】
レティアの生きる目的がまた増えた。
レティアはヘレボルスに向かって歩き出す。
すると清光が背後から声をかけてきた。
清光『レティアちゃん。
ひとつ言い忘れてた。』
レティアは清光の声に振り向いた。
清光『サンダー君とソニアちゃんのお墓。
人間界にあるんだ。』
レティア『なんですって!?』
レティアは叫んだ。
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ー深い森の中ー
シャーマンの国から北へ1時間ほど歩いた森の中に、
レティアは来た。
辺りはすっかり暗くなっていた。
街灯ひとつない森の中を歩くには、月の光だけが頼りだった。
レティアは力が抜けたように
フラフラと歩いていた。
ラナンが生きていた。
けれど、植物人間状態。
そして、サンダーとソニアの墓‥‥‥
一体誰が黒幕なのか。
誰が何を隠しているのか。
もう、頭の中がぐるぐるして
眩暈に襲われるような感覚に陥る。
ソニアとサンダーは
残虐に殺された。
あの切り傷は、一体
何の武器でやられたのかー‥‥
犯人は単独なのか
複数なのかー‥‥
とんでもない力を持っていた
ソニアとサンダーが
簡単にやられるはずない。
ズキリ、と頭が痛んだ。
しばらく歩いた先に、
二つの墓碑があった。
【サンダー】と【ソニア】という名前が
それぞれ刻まれていた。
レティアはボロボロと涙を流す。
レティア『なぜ死んでしまったの‥‥
誰に殺されたの!!
ソニア‥‥サンダー‥‥』
抱きしめたい。
愛する我が子たちを。
でももう叶わない。
永遠に叶わないのだ。
めちゃくちゃに傷つけられ
痛ぶられ
苦しみながら息絶えていた2人の姿が
まるで昨日のことのように
頭の中に浮かんだ。
【憎い‥‥恨めしい‥‥
どうして我が子たちが?
誰がやったの。
我が子を返して!!】
レティアは次第に頭を抑えて蹲る。
レティア『うう‥‥‥』
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しばらく経った頃、
レティアは立ち上がった。
虚な瞳で 月に照らされた墓碑を見つめた。
レティアの頭は再び、
我が子を殺した犯人への憎しみで支配された。
同時に、
今すぐ消えてしまいたいほどの悲しみに襲われる。
レティアは、鉈を握りしめた。
そして夜空に向かって鉈を掲げる。
月の光に照らされた刃が
仄かに輝いている。
レティア『ソニア、サンダー‥‥
そこへ行くわ‥‥。』
レティアは、まるで誰かに誘われるように、
鉈を自分の首元へと振り下ろした!
生きる目的や、人間界でできた仲間の存在すら
一瞬のうちに記憶から抜け落ちたように
刃を自分に向けたのだ。
レティアは次こそは死ねますようにと願い
目を閉じた。
すると、ガシッと何者かによって手首を掴まれた。
レティア『!?』
レティアは我に返る。
自分の手首を掴む誰かの方へ顔を向けた。
レティア『はっ‥‥‥!
なんであなたがここに‥‥‥‥!』
レティアは顔をくしゃくしゃに歪めて
涙を流した。
レティアの目の前には、
ソニアとサンダーの父、翳丸がいたのだった。




