辱めを受けたのよ!
トーア『まず、国王陛下。
貴方様は、ディセントラに操られておりました。』
国王『なんと!?!?』
国王は驚きのあまり声を上げる。
トーア『ディセントラは、
本物の【悪魔】を呼び起こす禁忌の黒魔術を用いて
悪魔と何らかの契約をし、得た能力で
国王陛下や兵士を操り始めました。』
国王『まさか‥‥‥それは‥‥‥
古の聖者が命懸けで封印したはずの
知られざる邪術‥‥‥』
トーア『‥‥‥はい。』
国王の顔は真っ青だ。
トーアが集めたヘレボルスの民達は
一連の騒動を静観していた。
トーア『国王には酷な事実をお話しします。
まず王子ラヴィエは、国王の息子ではありません。』
国王『なんだとおっ!!!!』
国王はこめかみに血管を浮かせ
座り込むディセントラを見下ろした。
国王『お前!!!本当なのか!!!』
ディセントラはお得意の涙を流しながら
縋り付くように言った。
ディセントラ『貴方!!そんなはずありません!
どう見ても貴方そっくりの息子ですよ!』
今の国王に、ディセントラの泣き落としは通用しないようだ。
国王は叫び出した。
国王『誰か来い!!』
国王が命令すると、
走って家来がやってくる。
国王『我とラヴィエの血を抜き
親子かを調べる!!!!!
【あれ】を持ってこい!!』
家来『ははっ!!』
家来は返事をすると、走り去っていく。
ディセントラは絶体絶命だ。
額に汗を滲ませて、
トーアのことを恨めしそうに睨んでいる。
トーアは続ける。
トーア『待っている間に、お話しします。
元王妃、カトレア様を殺害したのも、ディセントラです。』
国王『なんだとっ!!!!!』
静かに一連の騒動を見ていたヘレボルスの民達が 一斉に声を上げた。
聞こえてきたのは、『やっぱり』という言葉ばかりだった。
国王の耳にもその言葉が届いた。
国王『民達も‥‥‥そう思っていたのか‥‥‥』
国王が呟くと、群衆の中で誰かが声を上げた。
民『カトレア様の時の国王陛下は
とても穏やかだったのに!!
ディセントラ様と出会われてから
残虐になった!!
もう国民は飢えでボロボロ、死者多数。
叛逆した者たちは何人も殺されました!!』
それを聞いた他の民達は、
『そうだそうだ』と声を荒げた。
国王は後ずさる。
よく見ると、皆みずほらしい格好をしていた。
かつて栄えていたはずのヘレボルスの民が‥‥。
国王『まさか‥‥まさか
我も‥‥この手で民を殺めたと言うのか‥‥‥?』
民達の怒声が聞こえる。
何かを投げつける者までいた。
それを見た国王はすぐに悟った。
そしてさっき、ソフィアが涙を流して呟いた言葉が脳内にこだまする。
【‥‥すべて‥‥‥
遅すぎたのよ。お父様ー‥‥‥】
取り返しのつかないことをしたと、
国王はガックリと肩を落とした。
すると家来が戻ってきた。
跪きながら、何かを差し出す。
家来『こちらです。』
国王はそれを受け取る。
それは特殊な素材の、正方形の紙のようなものだった。
国王『これに血を垂らせばすぐにわかる。
この紙にはヘレボルスの魔力が込められている。
親子なら、この紙が光り出す。
違うならただ赤い血だけが残る。』
国王は剣を抜き腕を切る。
血を紙に垂らすと、
ラヴィエに向かって言い放つ。
国王『さあ、お前の血を垂らすのだ。』
抵抗するラヴィエを、
ニゲルとミラが取り押さえた。
ラヴィエ『何だお前ら!!離せ!!!』
国王は取り押さえられたラヴィエの腕を切ると
紙の上に垂らす。
紙は赤い血だけを残したままだった。
再び、民達がざわついた。
国王『ディセントラ‥‥お前!!
誰の子だ!!!!!』
激怒する国王を前に、ディセントラは必死の抵抗を見せた。
ディセントラ『その紙が本物と言う証拠はあるのですか!?
もしかしたら私たちを嵌めるために、偽物に差し替えられたかもしれないではありませんか!!!』
ディセントラの言葉を聞き、
国王は納得するように頷いた。
国王『うむ。確かにそれはあるかもしれない。
ソフィア!』
国王はソフィアを呼ぶ。
ソフィアは頷くと
国王の血が滲む紙の上に 自分の血を垂らした。
すると、紙が眩しいほどに光を放ち輝き始めた。
国王は安堵するようにソフィアに微笑む。
ソフィアは国王からフイッと目を逸らした。
国王『これは偽物ではない!!!
ソフィアと我は血の繋がりがある!!
托卵か‥‥‥!!!処刑だぞ!!!!』
国王は激怒する。
トーア『ちなみに、ラヴィエの父は
ディセントラがマグナフォボスで働いていた店の客です。』
国王『何と下賤な!!!!』
トーア『そして‥‥カトレア様は避妊薬を飲まされていた。だから中々身ごもらなかった。』
国王『な‥‥‥カトレアが‥‥‥』
国王は目まぐるしいほどの感情の変化に
頭が中々追いついていかなかった。
ソフィアが重い口を開く。
ソフィア『確かにディセントラが
お父様を狂わせたかもしれない。
けれど‥‥‥
お父様がはじめから、
お母様だけを愛していたら、
操られることもなかったのよ!!』
ソフィアは涙を瞳いっぱい溜めて言った。
その声には怒りが込められていた。
国王『ソフィア‥‥‥』
ソフィア『きっかけがどうであれ
お父様はお母様がいながら、
この毒婦と情を交わしたのは事実よ。
たとえ惚れ薬を盛られていようが
それを上回るお母様への愛があれば‥‥
こんなことにはならなかった。
お父様、あなたに殺された民達がたくさんいるのよ。
反逆すれば、お父様、ラヴィエ、ディセントラに殺された。
そして民を貧しくして 間接的に飢えで殺した。
私の親友だって!!!!
殺されたのよー‥‥‥
あなたとラヴィエに‥‥』
ソフィアはボロボロと涙を流した。
国王も悲痛な顔を浮かべる。
ソフィア『森もラヴィエに焼かれたわ。
動物たちは、マルメロ以外みんな死んでしまった。
森は 復活したけれど
死んだ動物たちは戻らない。』
ソフィアの美しい瞳が
国王を睨みつける。
ソフィア『たとえ操られていたとしても
ディセントラの話だけを聞き
お母様に無実の罪を着せて
お母様と私を幽閉した事実も消えないわ。』
国王は絶句した。
自分の記憶がないまま、どれほどの罪を犯してきたのだろう。
国王はしばらく俯いて黙っていた。
あたりも静まり返っていた。
不意に口を開いた。
国王『‥‥‥ラヴィエ。
罪のない国民を殺め、神聖なるヘレボルスの森を焼いた。
よって死罪だ。』
国王は力無く言い放つ。
国王『‥‥‥ディセントラ。
悪魔の禁忌の黒魔術を使い、我を操り、
托卵を図った。
元王妃カトレアを殺害し、
罪のない国民を殺めた。
よって死罪だ。』
国王『そして‥‥‥』
国王が呟いたその時
ディセントラが口を開いた。
ディセントラ『貴方!!!!!
私はソフィアの‥‥ソフィアの仲間の、
その男に、襲われたわ!!!!』
ディセントラが指を差した。
ミラを指していたのだ。
ミラは訳がわからないと言う表情をした。
国王『何だと!?』
国王はミラの方を見た。
ソフィア『また茶番劇‥?!
ミラは私とずっと一緒にいたわ。
いつ あなたを襲うと言うの!!』
ディセントラ『その青髪の女と一緒に
城に招待した時に襲われたのです‥‥!!
私のお腹には、あの下賤の子供が‥‥っ!!』
ううっ‥‥とディセントラは泣き出す。
ラヴィエも続いた。
ラヴィエ『そうです!!
だから森を焼いたのです!!
もしも下賤の子供を孕んだことが父上にバレてしまったら
辱めを受けた母は自害するしかない。
母を守るためだったのです!!
俺は‥‥
まさか自分が父上の子供ではないなど知らなかったもので‥‥』
ラヴィエは涙を滲ませながら
声を震わせて言った。
白けた芝居だとソフィアは冷たい目で2人を見下ろした。
国王『お前がそもそも托卵しているくせに
何を戯けたことを言っているのだ!!!!
ラヴィエも下賤の子だろう!!!』
その声にディセントラはビクッと肩を震わせる。
国王『しかしだ!!!!
だからと言って、もしも今の話が本当であれば
ソフィアの仲間‥‥ミラと言ったな。
その男の罪を許すことはできない。
それとこれは別だ。
ディセントラのことは裁くが、お前のことも裁く。
仮にも‥‥毒婦だろうと、罪人だろうと
王妃だった者だ‥‥。
王妃を襲ったとすればお前も死罪だ。』
国王は冷酷な瞳でミラを見た。
ミラ『俺はディセントラを襲ってなどいませんよ。』
ミラは淡々と答えた。
ディセントラ『何よ!!嘘ついて!!!
私は辱めを受けたのよ!!!』
ディセントラの渾身の演技に
ニゲルもレティアも開いた口が塞がらない。
ミラはフッ‥と笑うと、国王に向かって言った。
ミラ『まあそもそも‥‥‥
数日前に初めて出会って城に招待され、
それで今妊娠したと言われても、
辻褄は合っておりませんがね‥‥‥』
ミラはやれやれという手振りをした。
国王『‥‥我は操られていた。
期間がどうとか、いつ会ったなどは
実際見ていないのでわからない。
それでもお前は証明できるのか。』
国王はミラを厳しい眼差しで見つめる。
ミラ『はい。この場で証明して見せましょう。』
ミラは余裕の表情だ。
それと裏腹に、ソフィアは険しい顔をした。
ソフィア『ミラ!!あなたはしてないってわかっているわ。
でもそんな宣言して大丈夫なの‥‥!?』
もしもミラに死罪が言い渡されれば、ソフィアでも覆せない。
ミラは心配そうなソフィアの方を見て
微笑みながら頷いて見せた。
国王『さあ証明してみせよ!!』
ディセントラ『証明できなければ‥‥
ミラ、あなたの子供を妊娠しているその青緑色の髪の女も 死罪よ!!!』
レティアは勢いよくディセントラの方を向いた。
レティア(私が妊娠‥?
あ!あのお茶会の時のミラの咄嗟の発言‥‥!)
ソフィアはディセントラの発言に目を見開いた。
ソフィアはレティアのお腹を見つめる。
ソフィア『レティア!妊娠しているの?』
レティアは真相を答えて良いのかわからず
オロオロしていると、
ソフィアはレティアのその様子に、
妊娠しているのだと思い込んだ。
国王『証明できなければ、ミラも、その女も
ディセントラとラヴィエと共に死罪だ!!!』
国王は叫んだ。




