最後の戦い
ー城の中ー
ディセントラはソワソワしながら
玉座の前を行ったり来たりしている。
表情は焦りを滲ませており、
ドレスを翻しながらカツカツとヒールを鳴らしている。
落ち着かない様子だ。
ディセントラ『ガイスはまだ帰ってこないのか!
あの【悪魔の禁忌の秘技】を使えば
祠はおろか、触れた者すら命を落とすはず。
何故こんなにも時間がかかると言うのだ!!』
ラヴィエ『落ち着いてください。母上。
ガイスはとっくに、奴らを昏睡させているはずです。
あの異常なほど深い眠りも【悪魔の秘技】でしょう?
絶対に起きないのですよ。
絶対にー‥‥‥‥。』
ディセントラ『もしも精霊たちの魔力が復活する方が早かったらー‥‥‥!?
もしかしたら、昏睡させた皆を目覚めさせているかもしれないんじゃないの‥‥‥!?』
ラヴィエ『精霊程度の力じゃ、起こせません。
あれは天使の中でも、1番位の高い【熾天使】じゃないと目覚めさせられないのですよ。
‥‥‥熾天使は常に天の神とやらの前にいます。人間界に降りてくるはずがない。
人間界を守ると言われている
位の低い天使じゃ、絶対に起こせない。
だからー‥‥‥
100パーセント、あいつらは死んでいるのですよ。
クククククク‥‥アッハッハっ!!』
ラヴィエは高笑いした。
ディセントラ『そうか!!!
それは安心したわ。』
ディセントラも高笑いしながら、勢いよく玉座に座った。
先ほどまでの焦燥などなかったかのように
口角を上げて 余裕の表情だ。
ディセントラ『昏睡させたまま、
あの【悪魔の禁忌の秘技】をモロに食らえば
二度とあの森も、精霊の祠も復活できまい。
炎じゃ生ぬるかった。
最初からああすればよかったのだ。』
ラヴィエ『そうですよ。
ソフィアらの死体を確認したらー‥‥
次は国王を殺る番ですよ!』
ディセントラは不敵な笑みを浮かべた。
ディセントラ『そうね。
‥‥‥この国が我らの帝国になるのも
時間の問題よ。』
ディセントラの高笑いが
玉座の間にこだました。
魔女のように邪悪で、甲高く不快な声だった。
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ディセントラとラヴィエの元に、
家来が急いでやってきた。
汗を滲ませ、パニックを隠せない様子だ。
家来『大変です!!!大変です!!!
ディセントラ様!!!ラヴィエ様!!!』
家来は跪くのも忘れて、叫び出した。
ディセントラ『何だ!!何事だ!!!』
ディセントラは余裕など忘れたように
再び焦燥感を滲ませた。
勢いよく玉座から立ち上がる。
あまりの勢いに、ドレスの裾が捲れたままだ。
家来『反乱軍が!!反乱軍が!!
城に攻めてきました!!!』
ディセントラ『何!?!?』
ラヴィエ『馬鹿な!!!!
絶対に目覚めるはずがない!!!
それにー‥‥
ガイスはどこへ行ったのだ!!!』
ラヴィエはやってきた家来に迫った。
胸ぐらを掴み、今でも殴り出す勢いだ。
家来『あの【悪魔の禁忌の秘技】を使った形跡が森にありました!!
しかし!!!
ガイスはどこにも見当たらないのです!!!』
ラヴィエ『何ぃ!?!?
森の中の精霊の祠はどうなってやがる!!!』
家来『それが!!!それが!!!
見たことのない青緑色の髪の女が
祠の前に立ちはだかり‥‥‥
あの女が手をかざすと
一瞬のうちに、我らの兵が
木っ端微塵に消されてしまうのです!!
ヘレボルスの魔法ではありませんよ!!
あれは‥‥‥あの女は何者なんだ!!!』
家来は、全身をガタガタと震わせた。
恐ろしいほどの威力のようだ。
ラヴィエ『チッ!!!』
ラヴィエは家来の胸ぐらを押した。
家来は地面に尻餅をついた。
ディセントラ『青緑色の髪の女‥‥‥』
ディセントラは考える。
ハッと何かを思い出したように目を見開いた。
ラヴィエ『母上、知り合いなのですか!?』
ディセントラ『可愛い男の子がいたのよ。
あなたより少し年下かしらね‥‥』
ディセントラはニヤリと口角を上げる。
狙った獲物を奪い去るハイエナのようだ。
ディセントラ『その男の子の彼女が
青緑色の髪をしていた‥‥‥。
この前、お茶に誘ったのよ。
妙薬を入れたわ。
それなのに‥‥‥あいつらは飲まなかった。
女は身重だと言ったわ。
カフェインが入ってるものは飲めないと。
あの男の子が飲もうとしたら、
あの女‥‥下手くそな芝居で倒れ込んで
男の子が飲もうとした紅茶のティーカップを
割って落とさせたわ。
‥‥‥あの女‥‥‥気づいていたのね!!』
ディセントラの目は怒りで血走っていた。
ラヴィエ『母上。怒りをお鎮めください。』
ラヴィエは跪いて言った。
怒りを滲ませていたディセントラが
次第に 口元を歪めた。
ディセントラ『フン‥‥
いいことを思いついた。
【この子】は【私が襲われてできた子】だと
国王の前で泣きつきましょう。
そうすれば‥‥‥
あの可愛い男の子は処刑されるわ。
悲しいけどね。
あの青緑色の髪の女も‥‥‥
【王妃を襲った男】の子供を身籠っている、という罪を着せれば‥‥‥‥
処刑、ね。』
ディセントラは腹に手を当ててさすった。
恐ろしい笑みを浮かべている。
ラヴィエ『母上、いつの間に!?』
ラヴィエはディセントラの腹を見つめた。
ディセントラは静かに頷く。
ラヴィエ『だが、もし、祠が復活しているなら!!
嘘がバレてしまうのではないですか!!』
ディセントラ『安心しなさい。ラヴィエ。
ラヴィエが森を焼いたのは、
【私が罪人の子供を孕んだことが国王にバレてしまったら、
辱めを受けた私は自害するしかない。
母を守るためだった】
そういうことにすればいい。
確かあの男の子は盗賊と商売をしてると言っていた。
あの天使の剥製に興味を持っていたわ。
野蛮な男の子供に襲われたと言えば
国王は激怒するでしょう。』
ディセントラは笑みを浮かべながら言った。
ラヴィエ『ですが、それが嘘だということがバレやしませんか?
森を焼いた期間と、母上のお腹の子ができたタイミングはだいぶズレがあるような。』
ラヴィエは不安そうに聞いた。
まだ少しも目立っていないディセントラのお腹を見て、あまりにも杜撰な嘘だとバレそうだったのだ。
しかしディセントラは余裕の表情でラヴィエを見る。
ディセントラ『バレはしない。
メイドも家来も、あのアベックが城の中を歩いていたのを見ている。アリバイはある。
それに‥‥
あの剥製から奪い取った能力‥‥
【あれ】を使えば、精霊たちの暴く能力から
少しの間 欺くことができる。
あの青緑色の髪の女が、
どんなに特別な力を持つ人間だとしても
私の嘘は、絶対に暴けないわよ。
精霊ですら、暴けないのだからね。』
フフフフ、とディセントラは不敵に笑う。
ディセントラ『さあラヴィエ。
最後の勝負よ。
そもそも、私たちの軍で
奴らを殲滅させて仕舞えば
こんな愚かしい芝居を打つこともない。
精霊たちが復活しようが
私たちの勝利は確定よ!!!』
ディセントラは狂気に満ちた笑顔で言い放った!




