大丈夫よ。だって私は、熾天使と悪魔の娘ー‥‥
ソフィア『どういうことなの、トーア!
どうして触れてはいけないの!!
マルメロはこのままでは死んでしまうわ!!』
トーア『触れたらー‥‥
みんな死んでしまう!!!
これは禁忌の呪いなんだよ!!』
ソフィアは崩れ落ちた。
目を見開いて 体を震わせながら
ボロボロと涙を流し続ける。
愛しい狼の
傷ついた躯を抱き締めることさえ叶わない。
ソフィア『マルメロー‥!!!マルメロッー‥!!
死なないでよ!!マルメロー‥!!』
ソフィアは叫び泣く。
マルメロはかすかに目を開いて
泣きじゃくるソフィアを心配そうに見つめる。
すると、レティアがマルメロに近づいた。
冷酷な瞳でー‥‥‥。
マルメロの前まで来ると しゃがんで
ボロボロのマルメロに手を伸ばす。
トーア『レティアちゃん!!!何を!!
マルメロに触れれば、君にまで悪魔の禁忌の呪いが!!!!!』
ニゲル『そうだ!!!!
熾天使様の娘なのだろう!!!!!
悪魔とは対極の場所にいるあなた様が‥‥』
【いいえー‥‥】
レティアは心の中で呟く。
そして、マルメロを強く抱きしめた。
ソフィア『レティア!?!?』
ニゲル『天使様!!!死ぬ気か!!』
ニゲルもソフィアも、
レティアの行動に 驚きのあまり身を乗り出す。
レティアは憎しみの感情を抱きながら
全身に魔力を込めた。
【私は、憎しみで強くなるのよー‥‥
悪魔の血がー‥‥】
悪魔の自分の声が
レティアの脳内で鳴り響く。
レティア『死なないわ。』
レティアはついに口を開いた。
真顔で 冷たい瞳のまま。
マルメロ『天使様ー‥‥
ダメよ‥‥私に触れないで‥‥』
マルメロは懇願するように
静かに、最後の力を絞り出すように言った。
レティア『いいえ マルメロ 大丈夫よ
だって私は
熾天使と
悪魔の娘ー‥‥‥‥』
レティアはマルメロを抱きしめる。
顔を歪めて、悲痛な表情を浮かべると
一筋の涙をこぼした。
レティア涙は、マルメロの顔に ポツンと
滴り落ちたのだった。
ソフィア『熾天使とー‥‥‥』
ニゲルも 『悪魔の娘ー‥‥‥?!』
ソフィアとニゲルは、顔を見合わせた。
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ミラ『ん!』
ミラが誰よりも早く気配を察知する。
ニゲル『ミラ!?!?』
ミラは、さっき飛んできた
赤黒い禍々しい球体の方向を
鋭い目で睨んでいる。
ミラ『来たぞ。
祠を狙い、マルメロを傷つけた奴がな。』
ザッ、ザッ、と足音が近づいてくる。
重そうな甲冑の揺れる音と共に。
ニゲル『お前は!!!!』
ニゲルは叫んだ。
目の前には、白い甲冑を全身に纏い、
手の甲にドス黒い何かの紋章が入った男が立っている。
ニゲル『こいつは、ラヴィエの右腕。
ガイスだ!!!!!』
皆は一斉にガイスの方を見る。
ガイス『もう少しだったのになぁ‥
死に損ないの狼が 邪魔してくれたな。』
ソフィアは恐ろしく殺気の籠った目で
ガイスを睨んだと思うと、
杖を振り翳して 巨大な魔力の玉を
ガイスに放った!
ドン!という音が響く。
ソフィア『お前は許さない‥‥‥
死になさい!!』
ソフィアの放った魔力は
ガイスが立っていた場所で 煙を立てている。
地面は抉れ、当たっていればひとたまりもないはずだ。
ガイス『そんなんじゃ
俺を倒せないぞ。
俺らは‥‥‥悪魔の力を授かったんだからなあ!!!!』
ソフィア『なっ!?』
ソフィアが振り向くと、
すぐ後ろにガイスが立っていた。
一瞬の出来事だった。
ガイスは高笑いした。
ソフィアの魔法攻撃は
ガイスにかすり傷ひとつつけていない。
不意にガイスが、
レティアとマルメロの姿に目をやる。
ガイス『ん?
なぜあの女は、狼に抱きついている。
これは触れただけでも死ぬ呪いの秘技だぞ。
無知は罪だなぁ!!』
ガイスはレティアとマルメロを見下ろして
嫌な笑みを浮かべて言い放つ。
ガイス『この女も死ぬさ。
もがき苦しみ死ぬのだ!!!
ヘレボルスはディセントラ様とラヴィエ様の帝国に
生まれ変わるのさ!!!!』
ガイスが叫ぶと同時に、
マルメロのボロボロの体が、光り出した。
ガイス『何!?!?』
ガイスは後ずさる。
レティア『‥‥ね‥‥‥』
ガイス『何が起きている!?!?』
ソフィア『マルメロ!?!?』
ニゲル『これは!!!!』
全員がマルメロを見る。
マルメロの血に塗れていたはずの毛並みは
元通りのふわふわに戻っていた。
息も絶え絶えだったマルメロの呼吸も
正常になっていたのだ。
マルメロはその場で立ち上がり
犬のように尻尾を振って、
すっかり元気になったことをソフィアたちに表現していた。
ソフィア『マルメロ!!!!』
ソフィアは涙を浮かべながらマルメロを抱きしめた。
ソフィア『レティア‥‥すごいわ。
あなたがマルメロを助けてくれたのね‥‥‥!』
ソフィアはレティアを見た。
レティアは相変わらず
ガイスを無表情で睨みつけていた。
レティアの冷たい目は、いつもの美しい青色ではなく、
赤と黒のオッドアイになっていたのだ。
ミラ『レティア!!!その目は!!!』
ガイス『なんだ‥‥お前は!!!
何者なんだ!!!!
悪魔の秘技が通じないだと!?!?
そして!!!なぜその狼は
息を吹き返しているのだ!!!!』
ガイスは全身震えていた。
絡れそうな足を 何とか動かしながら後ずさる。
重い甲冑の音が 森に響いた。
レティア『返すわね。呪詛。』
レティアは鋭い目でガイスの視線を捉える。
恐ろしいほどの憎しみを込める。
するとレティアの左手から、赤黒い魔力の球体が解き放たれた!
レティアの魔力の球体は、
ガイスが放った秘技よりも大きく、
恐ろしい邪気を放っていた。
ガイス『う、うわああああああああああっ!!!』
ガイスは、赤黒い光の渦に
呑まれて行った。
ガイスの髪一本すら落ちていないほどに
全ての形跡を消し去ったのだ。
シュウウウウウ、と
レティアの周りを霧が立ち込めた。
トーア『レティアちゃん!!!』
霧が消えると、レティアの瞳は元の美しい青色に戻っていた。
レティア『はぁ、はぁ、はぁ‥‥‥』
バクバクと心臓が鼓動している。
レティアは胸を抑えると、ふらりとよろけて
そのままその場に倒れてしまった。
ソフィア『レティア!!!!』
ミラ『大丈夫か!?!?』
皆レティアに一切に駆け寄った。
トーアがレティアの腕に触れる。
トーア『大丈夫、気を失ってるだけ。
すごい魔力を使ったから。』
ソフィア『そうよね。マルメロを助けてくれたんだもの!!
命の恩人よ!!!!』
ニゲル『それにしても、熾天使と悪魔の娘とはどういうことだー‥‥‥。』
ニゲルは険しい顔をする。
『悪魔』という言葉に、過剰な反応を見せる。
ソフィア『‥‥‥‥。
レティアは、祠を復活させてくれた。
そしてマルメロを守ってくれたわ。
‥‥‥悪魔なんかじゃない。
救世主よ。』
ソフィアは力強く言った。
ニゲルもその言葉に、ハッとした。
ソフィアと同じように力強く頷くのだった。




