シビア
ー早朝3時半ー
急にドアを強くノックする音が聞こえた。
レティアは夢と現実の狭間で、
確かに音が聞こえたが
再び眠りについた。
その後すぐにドアがバンと開き
誰かが入ってきた。
『レティア!!!
いつまで寝ている!!』
レティアはその声に飛び起きる。
レティア『んー‥
アウロ様‥‥?』
レティアは眠い目を擦って
アウロを見る。
まだ頭がぼーっとしていて
何が何だかわからない。
アウロ『修行は毎朝、3時半からだ!!
覚えておくように!!
さあ早く着替えて準備をするのだ!!!』
レティアはそれを聞いてベッドから立ち上がり
急いで支度をした。
早朝とは聞いていたが
時間までは聞いていなかった。
まさか修行がそんなに早いとは知らなかった。
「随分と起こし方が荒いなぁ」と
聞こえない程度の声でボソリとつぶやいた。
まあ、時間を聞かなかった自分が悪いのだが‥
アウロ『レティア!!
心の声がダダ漏れだ!!聞こえているぞ!!』
不意にドアの向こうから
アウロが言った。
一瞬 心臓が凍りつく。
レティア『は、はひ!!
申し訳ございません!!』
「まったく」というアウロの声が聞こえた。
アウロは小さな呟きさえも聞こえる地獄耳のようだ。
今後は気をつけなければいけないと 肝に銘じた。
部屋から出ると、
アウロの後ろにラナンもいた。
ラナン『おはよ。レティア。』
ラナンは今日もとびきりの笑顔だ。
レティアもそれにつられて笑顔になる。
レティア『おはよう。ラナン。
あなたは早いのね‥。』
ラナン『時間、言ってなかったもんな。
3時半からだけどさ、俺たちはアウロ様より
早く用意しなきゃなんだ。
だから3時15分くらいには支度して
部屋を出ておくといいぜ。
俺もそのくらいの時間に、
門の入り口付近で待ってるからさ。』
天界には壁がなく、すぐ目の前は空だ。
常に雲や星を見下ろせた。
壁がない代わりに、
不思議なオーラの結界が全体に張られていて、
落ちないようになっていた。
天界の南の方に 門が聳え立っている。
その門から、天使たちは人間界に降り立ったり
天界に戻ってくるようだ。
ラナンは毎朝そこで待っているという。
レティア『朝とても早いのね‥
わかったわ。ありがとう。
明日からは私もそこで待っているわ。』
ラナンは笑顔で頷いた。
アウロ『早速地上に行くぞ。
地上に行ったら翼を使うのは禁止だ。
今日はひたすら走ってもらう!
一日中だ!!』
レティア『い、い、一日中〜!?』
アウロ『そうだ!!!
天使たる者、体力がなくてどうやって人間を救うのだ!!!』
レティア『まだ‥朝の3時半ですよ〜っ!!!』
ラナン『(小声)アウロ様はさ、最も厳しい天使で有名なんだぜ』
ラナンはイタズラっぽく言った。
レティアはそれを聞いて青ざめた。
アウロ『聞こえてるぞ!!ラナン!!』
ラナン『失礼いたしましたっ!!!』
ラナンはレティアの方を見て
こっそり舌を出しておちゃらけて見せた。
アウロが聞こえるのを知っていて
わざと言ったのだろう。
お茶目な男の子だ。
レティアは声を出さずに笑った。
アウロ『ついてこい!!』
アウロのあとをレティアとラナンは続く。
天界から地上に向かって
落下するように飛ぶ。
風圧を体いっぱいに感じる。
まだ早朝の風のにおいは
どこか懐かしい気がした。
景色もどんどん変わった。
豆粒のような地上が
どんどん目の前に広がってくる。
反対に 少し見上げれば
手で掴めそうな雲も空も
永遠に届かない幻のように感じた。
三人は地上にたどり着く。
時刻は4時になっていた。
アウロ『ここは碧翼国という国の領域だ。
初日なので走りやすい場所を選んだ。
レティア!
人にぶつかっても魔力を使ってない限り
衝撃はないが、
だからと言ってぶつかっていいわけではない。
しっかり避けて走るように。
ラナン!いつも俺と訓練していて
わかっていると思うが
人間には姿が見えないように
しっかり魔力を使って修行に臨むように。』
レティアもラナンも返事をする。
ラナンの返事はとても力強く元気だったが
レティアの返事は弱々しかった。
アウロ『さて。いまから、朝の8時まで走る。』
レティア『4時間‥!?』
アウロ『初日なので手加減しているんだ。
その後朝食をとり、休憩した後、
1時間 魔力の訓練をした後に、
再び4時間走るぞ。』
レティアはそれを聞いて
倒れそうになった。
アウロ『14時からは筋トレ1時間だ。
走ってるだけではいかん。
その後再び2時間走り、
魔力の訓練1時間だ。』
レティア『帰りは18時‥‥』
レティアは絶望した。
アウロ『大丈夫だ。明日からは帰りは20時だからな!』
アウロは天真爛漫な笑顔で言った。
アウロはレティアのどんより沈む顔を見て
優しく笑ったのだった。




