天使の剥製
ミラとレティアは森を出て城下町を目指した。
ミラ『それにしても森の範囲がかなり広いな。
もしも燃やされてなかったら、
狼が仲間にいるソフィアが、戦いやすかったのかもしれないな。』
レティア『確かにね。
ソフィアは森を愛していたんだものね。
森の中のことはよく知っているだろうし、
動物だってきっと味方をしてくれたはず‥。』
ヘレボルスの民達の姿が見えた。
服もボロボロで、覇気がなく
皆痩せていた。
ミラ『(小声)かなり飢えてそうだな‥』
レティア『(小声)ええ‥‥』
民達は、ミラとレティアを旅人だと思ったのだろう。
2人に近づき、物乞いをしはじめた。
民『お恵みを‥‥』
レティアはお金を持っておらず、どうしたら良いかもわからない。
ミラの方をチラッと見た。
ミラはガサゴソと鎧の中を漁ると
どこからか札を取り出した。
民『ありがとうございます!!
命の恩人ですっ!!!』
すると背後から
コツ、コツ、コツと
ヒールの音がした。
民達は音の方へ視線をやると、
一斉に恐怖に慄き 跪いた。
レティア『!?』
ミラ『!?』
レティアとミラは振り返る。
後ろには紫色のドレスを着た女が立っていた。
紫色の長い巻き髪で、王冠を身につけていた。
2人はすぐに
王妃だと思った。
ディセントラ『旅人に物乞い?
‥‥ヘレボルスの価値を下げると云うのですか。』
民『滅相もございません!!!』
民達は怯えていた。
レティアもすぐに跪いた。
ミラの腕を引っ張ると、
ミラもレティアと同じ様に跪くのだった。
ディセントラ『旅人さん。
失礼いたしました。
礼は不要ですよ。』
ディセントラは優しい笑みを浮かべた。
もしも民達が怯えておらず、
トーアや酒場、鍛冶街パームラの人たちから
悪事を聞いていなければ、
普通に感じの良い王妃だと思うだろう。
ディセントラ『見ない顔ですね。
どちらからやっていらしたのですか。』
ディセントラはミラの顔を見て問う。
ミラ『‥‥ティルケ国の方から。』
レティア(ミラ‥。そうね‥凋落の街と言って
もしもアケミママや果実団が狙われたら‥)
ディセントラ『ああ。あの、王子ティラの国ですね。』
ディセントラは妖麗に笑った。
ミラ『‥‥‥。』
ディセントラ『そちらは彼女ですか?』
ミラ『はい。』
ミラはそう言って
レティアの手を握った。
ディセントラ『顔を見せてくださいな。』
ディセントラはミラの顔を覆う布を取る様に言った。
ミラは動じることなく応じる。
ディセントラ『まあ‥中世的なお顔の美男子ですね。』
ディセントは目を細めて
ミラの頬に触れる。
レティア(どうしたらいいの‥!
確実にミラを男として狙ってるわ‥)
ミラ『恐れ多いです。』
ミラは淡々と答える。
ディセントラ『旅人さん、城の中へ招待致しますわ。
私とお茶でも、どうです。』
ミラ『‥‥。』
ミラは何も言わなかった。
ディセントラ『遠慮なさらず。』
ディセントラはミラの顔を見て言った。
ミラ『‥彼女も来て良いのなら‥ぜひ。』
ミラは微笑んで言った。
一瞬ディセントラは冷たい目をしたが
すぐに笑顔になって言った。
ディセントラ『もちろんよ‥。
‥‥彼女さんのお名前は?』
レティア『レティアと申します‥』
ディセントラ『そう‥‥。
私の息子が好きそうな
愛らしいお顔をしておりますね。』
ディセントラは妖麗に笑った。
レティア(さっきから‥ミラと私を引き剥がそうとしている‥!?
何が目的なの‥。
ミラを男としてかなり意識しているし
色仕掛けをしているのかしら‥。
ミラに惚れ薬でも盛られたらどうしよう‥。
ミラは女の子だし‥)
2人はディセントラの後についていく。
不意にディセントラが振り返って
付いていた家来に言った。
ディセントラ『ああ。物乞いした民達は
連れて行きなさい。』
家来『はっ!』
ミラとレティアは顔を見合わせる。
民『助けてください〜!』
民『お許しを〜!』
物乞いした民達は、家来に連れて行かれてしまった。
ミラ『俺達のことは‥何もお気になさらず‥』
ミラは少し焦りを滲ませて言った。
ディセントラ『いいえ。
物乞いはこの国で許されておりませんの。
厳しく罰さないといけないのですよ。』
ディセントラは冷たく言い放った。
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レティアたちはディセントラの後についていくと
城の前までたどり着いた。
家来が城門の前で立っている。
家来『ディセントラ様‥そちらはどなたですか?』
ディセントラ『旅人ですよ。
先ほど民が無礼を働いたので
お詫びにお茶をと思いまして。』
家来『はぁ‥。
承知いたしました。』
家来は渋々 城に通した。
ミラとレティアは城の中を見渡した。
ミラに至っては細部に渡って城を観察している。
ディセントラ『客室でお茶をお出しして。』
ディセントラがメイドに言うと、
メイドは返事をしてその場を立ち去った。
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ディセントラはとある部屋で立ち止まる。
メイドが部屋を開けた。
ディセントラ『こちらの部屋で。』
メイド達が一斉に
部屋の中にある椅子を引いて
レティアとミラに座る様に促した。
豪華絢爛な部屋だ。
貧しそうな、ボロボロの服を着た民達の生活とは
大違いなのはすぐに分かった。
レティア『ん‥‥‥?』
部屋の中に、
ガラスケースに入った【何か】が見える。
レティアはそれを見て 心臓が飛び上がった。
レティア『はっ‥‥!!!』
ミラ『!!!』
ミラはレティアの方を見た。
ドクンドクン‥
レティアの心臓が鼓動した。
バクバクと音を立てるほどに。
ミラ『レティア!?大丈夫か?!』
ミラはレティアが
目を見開いて見つめている方に
顔をやった。
ミラ『!!!!』
ミラも目を見開いた。
そこには、かつて天界で
行方不明になったはずの
美しい白い翼を持つ
天使の剥製が 飾られていたのだ。




