仲間に打ち明けるミラの追憶
ミラが目覚めた後
皆で食卓を囲んだ。
久しぶりだった。
アケミママもいた。
ミラ『‥長くなるんだが‥
俺が男として生きてきた理由
聞いてくれるか?』
ミラは眉を顰めて皆に言った。
ラガー『あたりめーだろ!!』
ゴーキー『聞かせろ!!』
桃『何時間かかったって聞くわ。』
ありがとう、とミラは呟いた。
ミラ『俺が3歳くらいの時に
母親が男に銃で撃たれて殺された。
俺はクローゼットの中にいたんだ。
母親に絶対に出てくるなと言われて‥。
そこから俺は孤児になった。
頼れる大人は誰もいなかった。
生きるためならなんでもした。
俺の住んでいた街‥
名前すら覚えていないが、
この凋落の町よりずっと治安が悪かった。
毎日銃声が聞こえたんだ。
いつしか俺は 銃を見るだけで
殺意が湧くようになった。』
すだち『だからミラは‥
あんなに銃を嫌っていたんだな‥』
ミラは頷く。
ミラ『毎日がサバイバルだったんだ。
男に殴られてる女もいたし
追い出されて泣きながら歩くボロボロの妊婦もいた。
そこら辺を歩けば誰かの死体が転がっていた。
俺は1日を生き延びるだけで修行になった。
風の音や匂いで誰かが来たことも
天気も読めたし
俺を狙う奴がいれば殺気だと気づいた。
足音で大体の人物像がわかるし、
相手の初動も、ツラ見つめれば手に取るようにわかった。
女ってだけで狙われた。
特に身寄りのない、幼い女はよく標的にされたんだ。
奴隷として売られた子もいたし
一度いなくなってから、2度と会えなくなった子もいた。
だから俺は 自分が培った五感を活かして
夜は人気のない森で寝ていたんだ。
夜は星が綺麗だった。
目がすごい良くなったよ。
木の上に立てば数十メートルくらいなら
誰かいるのが見えた。
雨の日は辛かった。
この前の山みたいに、地面がぬかるんで
全身が泥まみれになるんだ。
冬なんか特に 凍えを通り越して痛いんだ。
痛みを通り越すと、もはや痛みすら感じない。
だから俺は風邪なんか引かない。
毎日 地面で寝ていたからな。
森の微生物や ばい菌とかで
免疫がついたんだろう。』
ミラは自傷気味に笑う。
桃『そんな過酷な環境で‥‥』
桃は涙を拭っている。
ミラ『‥‥ある日、貴族がやってきた。
当時10代後半くらいの男だったかな。
ブロンドヘアで端正な顔立ちだった。
俺に声をかけてくれたんだ。
ひと目見て恋に落ちた。
まだ俺は 10歳だった。
名前はティラと言った。
月に一度会いに来ては
俺にお腹いっぱい食べさせてくれたり
服をくれたんだ。』
布道『まさか‥その
ティラって‥ティルケ国の‥!?』
ミラは暗い表情で頷く。
ミラ『その関係が2年経ったある日、
俺はティラの子供を孕んだことに気づいた。』
レティア『!』
ラガー『何!?!?』
ラガーは驚きのあまり立ち上がる。
ゴーキー『おま‥!!!!!!
12歳でか!?!?』
ミラは頷く。
カボス『おいおい!それはあんまりにやばくねえか!?
あのティラとかいう男‥
最悪のロリコン野郎じゃねえか!!』
ライム『まったくだ!!』
ミラ『‥‥俺はティラに打ち明けた。
そしたら家来と共に何度も腹を殴られた。』
ラガーは怒りのあまり
持っていた酒のコップをテーブルに叩きつけた。
ラガー『ぶっ殺してやるぜ!!!!
あのクソ野郎‥!!!』
ラガーは剣を握りしめた。
ミラ『落ち着け!ラガー!
最後まで聞いてくれ。』
ラガーはミラに言われて
怒りに満ちた顔をして再び座った。
ミラ『しばらく殴られたあと、
腹がキュッとする感覚がした。
足から血が伝った。
その瞬間、赤ん坊が流れたと悟ったんだ。
薄れゆく意識の中聞こえてきた。
優しいはずのティラの言葉が。
【もしも父に
孤児を孕ませたとバレればまずい。
そしてこいつが仮に生き残り
赤子を抱いて城に現れて
【あの時の子供だ】と言い張ってもまずい。
今のうちに 腹を
再起不能にしておけ。
そうすれば容疑すらかけられない
こいつは元々、孕めない体質だったとな。】』
桃といちごは泣き出した。
ラガー『ふざけんな!!!!
クソッタレ!!!!
今すぐ殺す!!!
止めるなよミラ!!!!
俺は絶対にアイツの首掻っ攫ってやる!!!!!!』
ラガーが叫んだ。
ゴーキー『あんな野郎の父親にもらった宝石なんか
クソ喰らえだ!!!』
ゴーキーは貰った宝石を投げつけると、
宝石は音を立てて砕けた。
床に落ちた破片が光に反射してキラキラと輝いている。
柚子『ミラ‥‥』
ミラ『それから俺は、
月に一度 殴られた古傷の痛みと
貧血で倒れるようになった。
特別な薬を飲めばすぐに良くなるんだが‥
この前、薬を忘れて‥皆に心配をかけてしまった。』
ライム『そうだったのか‥‥』
ミラ『俺は殴られたあと、どこかに捨てられ
ユウカという女に拾われた。
二年間育ててくれたんだ。
俺を実の娘のように。
ユウカも夜に働いててな。
俺はいつしか、不安になった。
ユウカまで、帰ってこなくなったらどうしようと。
不安を打ち明けたら ユウカは仕事がある日は
アケミママの店に連れてきてくれた。
ユウカの仕事が終わるまで
俺はアケミママに世話になったんだ。』
アケミママ『懐かしいね。
今は私の家にしてるけど
前はここが店だったんだ。』
布道『だから店みたいな形のリビングなんだな。』
アケミママ『そうさ。』
ミラ『ユウカはその後、病気で死んだ。
ユウカには生まれていれば俺と同い年の子供がいたそうだ。
自分より俺を優先して
何より大切にしてくれた。
必要なものは 与えてくれた。
読み書きもできない、
食べ方さえ汚かった俺に
読み書きも食べ方もマナーも色々教えてくれたんだ。
本当に‥ユウカは‥
俺の‥母のように 可愛がってくれた。
ユウカが拾ってくれたから
俺は今 変な道に行かずにいられたんだと思う。
ユウカが亡くなってから、
アケミママが家に住まわせてくれたんだ。
‥‥治安の悪い街で
女として生きるには 不利だった。
それにもう2度と
ティラみたいな男に騙されたくなかった。
俺みたいに傷つく女を守りたかった。
いつしか女だけではなく、理不尽な目に遭ってる皆を助けたくなった。
だから俺は、男の格好をして
強くなったんだ。
2度と舐められないように‥‥。』
レティア『ミラ‥‥』
ミラ『長くなったな。俺の話は終わりだ。』
ミラは笑った。
ゴーキー『バカ野郎!!!!
なんでもっと早く言わねーんだよ!!
早く行ってりゃ、あんな国に
わざわざ行かなかったのによ!!!!!!』
いちご『私たちが‥変な目に‥遭わないように‥
来てくれたのね‥ミラ‥
本当なら‥ラガーを‥ミラということにして‥
城に入らなくても‥良かったはずなのに‥‥』
ミラ『そうだ‥。
あの男が 俺の仲間に
手を出した時には本当に殺しそうだからな‥‥
でも俺は恨んでないんだ。
過去はどうでもいい。
そう思わせてくれるほど
ユウカが俺に幸せをくれた。
アケミママもな。
それに
今はこんなに仲間がいるんだからな。』
ミラは笑った。
ラガー『お前は優しすぎる!!
俺は絶対にいつか
ティラを殺してやる!!』
ミラ『はは‥ありがとう
怒ってくれるだけで
幼い頃の俺が‥救われるさ。』
ミラはそう言って 優しく笑った。




