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【幸せを産む天使】真の悪は、人間か悪魔か、それとも天使かー…。熾天使と悪魔の娘レティアの復讐が始まる  作者: 墨華


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番外編 ミラの過去⑤ 『ひとりにしないで』

ミラは月に一度

腹を再起不能にされた痛みと貧血で

倒れるようになった。

かなりの激痛と出血がミラを襲った。

それだけは野生で鍛え上げた体でも耐えられないようだった。


ユウカはいつも心配していた。



ユウカ『ねえミラ。

客が教えてくれたんだけど。

妙薬師のいる国があるみたい。

マグナフォボスって言うらしいんだけど。


此処からは少し遠いけど

アンタのその貧血と痛みに効く薬

作ってくれるかも。


アタシの信頼する医師いるでしょ?

痛み止めは処方できても

アンタのぶっ倒れるほどの一時的な貧血を止める薬はないんだってさ。


ちょっと行ってみる?』



ミラは頷いた。



ユウカと何時間もかけてマグナフォボスに行った。

妖しい雰囲気の街だったが、本当にミラの体質に合った薬を作ってくれた。


これが抜群に効き、痛む時や貧血で眩暈がするときに飲むと、瞬時に治るのだった。



ユウカ『よかった。行った甲斐があったわ。

アタシにもさ、もっと痩せたいとか、若返りたいって言ったら

妙薬作ってくれんのかな?』



ユウカはそう言っておどけて見せた。

でも、ユウカは自身の為の薬は買わなかった。

高かったのだ。

ミラのためだけに、買ってくれたのだ。


マグナフォボスの妙薬師は、

半年分の薬を 作ってくれた。


ミラはその当時、金の価値がよくわかっていなかったが、

後に知ったのは ミラの薬は1ヶ月分で、

ユウカの家賃の二倍だったようだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ー2年後ー



ミラは14歳になっていた。


幸せは長く続かなかった。


ユウカが体を壊した。

肝臓をやられたようだ。



寝込みがちになった。



アケミママも心配して、よくユウカやミラを見にきてくれた。

ご飯を作って持ってきてくれた。



ユウカの信頼するあの医者もよくユウカのことを診にきた。



医者『もう長くない‥‥‥持って数ヶ月‥‥』



あの医者が言った。


ミラは初めて狼狽えた。



ミラ『どうにか助ける方法はないのか!?

そうだ、妙薬師に薬を作って貰えば‥!!!』



ユウカ『馬鹿だなぁミラ。


アタシは死ぬんだよ。

治らないの。


アンタのお腹はさ

それで死ぬわけじゃないから

効いてるんだよ。』



そう言ってユウカは笑った。



ミラは今ならわかる。


働かなくなって お金がなかったのだ。

そんな中でも ユウカは

ミラのための薬だけは払ってくれた。

稼いでいるのに浪費せず堅実に貯金をしてくれていたおかげだったのだ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ーある日ー


ユウカはもう 

起き上がることすらできなかった。


医者からは 【今日が峠】と言われた。


医者は静かに

ミラとユウカの最期の時を見守っていた。



ユウカ『ミラ‥アンタ本当にすごいよ。

3歳からひとりで生きてきて

気持ち悪い屑野郎の王子に 手出されて

お腹殴られて赤ちゃん流れてさ


それでもアンタさ

恨み言の一つも 

アタシに言ったことなかったね。』



ユウカは力無く笑った。



ユウカ『アタシね、昔、好きな人の子供

授かったんだけどさ 逃げられたんだ。


アンタみたいに強くなくて 自己中でさー‥


自分の意思で 諦めたんだよ。

サイテーな人間でしょ?』



ユウカは笑いながら涙を流した。



ユウカ『ゴメン。今だけ話させてね。


今もし生まれてればさ、ミラ

アンタと同い年だったんだよ。


しかも予定日、5月だったんだ。

アンタの誕生日と一緒。


びっくりでしょ。

運命かなって思った。』



ユウカはミラの手を握る。



ユウカ『勘違いしないでね。

アタシは、ミラを我が子と重ねたから

養ったわけじゃない。


もちろん もし生まれてたら

アンタくらいだったのかなと思うことはあったけどさ。



‥‥‥何故か、助けなきゃって思ったんだ。

倒れてるアンタを見て。


守りたいって

目覚めたアンタ見て思ったの。


だって この腐った街で

ミラ‥あなたの目は

本当に綺麗だったから。』



ユウカはボロボロと涙を流す。


ミラも涙を流した。


ミラ『別れみたいな

話し方しないで‥‥』



ユウカは穏やかな顔で 再び話し出した。



ユウカ『‥‥死んだ後さ、アンタのママに会えるなら言いたいよ。


可愛い娘 産んで育ててくれてありがとうって


ミラ‥アンタに出会えてよかった。


アタシも若い頃からひとりで生きてきてさ

いつ死んだって良かったけど

アンタの笑顔見てたら

唯一生きていた甲斐があったよ。』



ミラ『嫌だ‥もうやめて‥

ユウカ‥もう何も話さないで‥』



ミラは嗚咽する。

目の前が霞んで見えない。

ユウカの表情すらよく見えなかった。



ユウカ『‥‥‥‥アタシさ、‥‥‥アンタを1人にするのが怖いんだ。

ミラはひとりで生きていける強さも能力もある。

けど‥‥まだ世間では若い女の子なんだよ。

狙う奴らがたくさんいるんだ。

この無秩序な街の中では‥


‥‥‥またアンタが傷つくんじゃないか

傷つけられるんじゃないかって‥

それだけが怖い‥‥‥心配‥‥‥

心残りなんだ‥。』



ミラは首を激しく横に振る。

ユウカの手をぎゅっと握りしめる。

ユウカの握りしめる手が

次第に弱くなった。



ユウカはミラに何か差し出した。

紐がついた 笛だった。



ユウカ『‥‥ミラ、アンタの生きる世界はこんな街じゃない。

バカな私にもわかる‥

アンタにはさ、もっと‥

もっともっと 綺麗な場所で生きてほしいんだ。


街の奴らが廃人みたいでも

アンタがどんなに過去に傷ついて

過酷な環境でもさ‥‥。

ミラ‥本当に どうしてそんなに‥

眩しいくらいに 真っ直ぐなんだろ。

ミラ、すごいよ。本当に強い子だ。



もう少し大きくなったら

絶対 この街を出な。

わかった?ミラ‥‥


あなたのその‥真っ直ぐな目が映すのはさ

キラキラした世界だけでいいんだよ。』



ミラはずっと泣いていた。

床に涙が滴り続ける。




ユウカ『アンタさ、ママって言ってみてよって

頼んでも言ってくれたことなかったね。


そこがアンタらしいけどさー‥


‥‥‥ああ、すごく眠いの。

けど、幸せ。

だってひとりじゃない。

アンタが いてくれるから。


ミラ‥‥‥。


愛してる‥‥‥心から‥‥。』




ユウカの手から力が抜けた。

握り合っていたはずの

ユウカの手が床に落ちた。


ミラは叫んだ。泣き叫んだ。


ミラ『ひとりにしないで‥‥

目を開けて‥起きてよ‥‥


ママ‥‥‥‥!!!』


ミラはユウカの亡骸に抱きついて 泣き続けた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


医者がアケミのところへ行ってくれたのだろう。

アケミがやってきた。


その後のことは覚えていないが

アケミママがいろいろ手配してくれたようだ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


再びひとりぼっちになったミラに

アケミママが声をかけた。



アケミママ『うちにきな。ミラ。』



そこからミラはアケミママの家に住むようになった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




ミラは再び ペティナイフで

長く伸ばしていた髪を切り落とした。



アケミママ『ミラ!!何してるんだい!?』


アケミが声をかけた頃には

ミラの髪は肩くらいまで切り落とされていた。


本当は、ティラに裏切られた時に切ろうとしたのだ。

ティラに長髪が似合うと言われて 

その通りに伸ばした愚かな自分が恥ずかしかったから。



でも出会ったばかりの頃、ユウカが言った。



ユウカ『綺麗な髪だね。サラサラ。

結んであげる。』



ユウカがいつも優しくミラの髪を梳いて

可愛く結いてくれたのだった。


でももう 優しく髪を梳いて 結いてくれる人は

この世にいない。

この髪は 無秩序な街で

女の自分を守るのには邪魔だった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ミラはユウカが死んでから

鎧を纏い、口元を布で覆うようになった。

女とバレたら舐められるからだ。




男に乱暴される女を助けた。


暴力男が、弱い男を襲っているのを助けた。


女にこっぴどく裏切られ、自暴自棄になってる男を助けた。


瀕死の状態の少年を匿い助けた



殺される寸前の女を救い出し、犯人を殺したこともあった。



女子供に手をあげる男を 半殺しにしたこともあった。



野垂れ死にそうになっている男を

アケミママに頼んで 一緒に助けたこともあった。




ミラは無秩序な街で

悪い奴らを徹底的に排除した。

時には殺した。

再び 生きているだけで修行になった。

五感は 幼少期培われていたから

力や短剣の使い方がどんどん上手くなった。



女として生きるには

この街はあまりに 不利だったし

ティラのような男に

また騙されるのは 懲り懲りだった。



助けた者たちからは

英雄ミラと讃えられ

街では一目置かれていた。


そのミラを匿う アケミの店も

繁盛したものだった。



ユウカがくれた 形見の笛は

イーグルを呼ぶ時の合図になった。



そしてミラが助けた者たちの

9人がミラの仲間となり

果実団として 街を守る正義の味方となったのだった。

番外編 ミラの過去はこれで終わりです!

次から物語の続きになります!

読んでくださってありがとうございます!

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