番外編 ミラの過去① 『遠い母の記憶』
ーミラ、7歳頃ー
貧しい町で、ミラは初老の男の食べ物を掠め取った。
パンだった。
初老男『ああっ!!また取られた!!
ミラだなぁ!! ?!?』
ミラはその声を聞いて、
すぐに木に登って行方をくらませた。
ミラは孤児だった。
両親もいない。出自も知らない。
兄弟がいるかすら知らない。
ミラの親の記憶は 3歳頃で途絶えた。
当初から貧しい暮らしだったが、
3歳くらいまでは優しい母がいた。
名前も顔もよく覚えていないが、綺麗な女だった。
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ーミラの母の記憶ー
『ミラ‥‥』
母のやつれた笑顔をぼんやりと思い出す。
いつも綺麗なワンピースを着て
華奢な体で 抱きしめてくれた。
ぎゅっと 母を抱きしめ返すと
甘い香りがした。
母の上に座ると
浮き上がった骨盤が当たって痛いほどに
母は痩せていたのだった。
『お腹すいたでしょう、ミラ‥
食べなさい‥』
味のしない 食パン一枚を
母は差し出した。
もぐもぐと食べるミラを見つめて
優しく微笑んでいた。
ミラ『ママも‥‥』
ミラは食べていたパンを渡した。
母が何かを口にしている姿は
ほとんど見たことがなかった。
母は首を横に振った。
『ありがとう‥優しいのね。
食べなさい。ミラ‥‥‥』
パンを食べ終わったミラを見て
母が急に泣き出した。
『ごめんね‥‥ミラ。
こんなひもじい思いをさせて‥
本当にごめんね‥。』
母はそう言って
またミラを抱きしめた。
ミラ『なかないで』
ミラは言った。
ミラは母が大好きだった。
母は毎晩 ミラが寝た後に
家を出て行った。
ミラはいつも寝たふりをして
心細い夜を 1人過ごした。
明け方に母が
倒れ込むように家に入ってくると
酷く安心したのだった。
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いつの日か、母の白い体には
赤い発疹ができていた。
夜に出て行って 明け方帰ってきた後は
死んだように眠ることが増えた。
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ーある日の夜ー
『ミラ‥今日ね
お客さんが お家に来るの。
いい?クローゼットの中から、
絶対に出てきてはダメよ。音も立てないで。
ここにお水、置いておくね。
あと‥ミラ、見て。おやつよ。
美味しそうでしょう?
置いておくからね。
だから‥声を出してはダメ。
わかった‥?』
ミラは何のことだかよくわからないが、
とりあえず頷いてクローゼットの中に隠れた。
初めておやつを見た。
とても美味しそうで 早く食べたい!と思った。
しばらくすると母と 誰かが家に入ってきた。
ミラはおやつを食べながら、静かに様子を伺っていた。
男『!!!
このやろう!!〜!!っ!!
£¿&※⁂*!!!』
よくわからない男の叫び声と怒鳴り声が聞こえてきた。
『やめて!!!』
母の泣き叫ぶ声も‥。
ミラの心臓は、ドクンドクンと鼓動した。
音が聞こえてしまうのではないかと言うほどに。
ゴロゴロゴロゴロ と雷が近くで落ちた。
直後、ザーッと 大雨が降ってきた。
幼いながらに 嫌な予感がした。
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しばらく男の怒鳴り声と
母の泣き叫ぶ声が続いた後
パン!パン!と銃声が響いた。
ミラは一瞬声を上げそうになった。
5回 鳴った後
家の中は一瞬で静かになった。
男の怒鳴り声も、母の泣き叫ぶ声も
聞こえなくなった。
ミラは耳を抑えて震えていた。
クローゼットの中でバクバクと鳴る心臓を抑えて息を潜めていた。
光が漏れる クローゼットのドアの隙間から
恐る恐る覗いた。
決して 音を立てないように‥‥。
広がる血の海と
赤く染まる白いワンピース
動かない 目を見開いたままの母‥
それを見つめ 銃を握りしめながら
狂ったように笑う男の姿‥
殺される!!バレたら殺される!!
ミラは本能で感じた。
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男が去った後も しばらくそこに隠れていた。
一睡もせずに クローゼットで息を潜めていた。
雷が落ちるたびに、
恐怖で頭がおかしくなりそうになった夜を
幼子1人で明かしたのだ。
でももしも、此処に居続ければ
きっと自分の存在がバレる。
警察が来て、『子供がいるぞ!』と騒がれたら
きっとあの男にバレて 殺される。
ミラには家に留まる選択肢は
残されていなかった。
ミラはその日から 孤児となった。
助けてくれる大人はいなかった。
1人、外を彷徨いながら生きた。
家の中に唯一あった ペティナイフ一本を握りしめて‥




