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幸せを産む天使  作者: 墨華


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熾天使オルレア

レティアはラナンに出会った日から、

毎日人間界を夢見た。


レティアが天界を意味もなく歩いていると

不意に後ろから声をかけられる。



『いたいた!レティア!!』



レティア『!』



レティアが振り向くと、

白髪の美女が立っていた。

レティアを見ると、優しく笑った。



レティア『オルレア様‥!!』



オルレアは最も高貴な熾天使の中の1人で

レティアの母、シランの友人だ。

シランの次に膨大な魔力と秘技を持つと言われていた。



オルレア『レティア。久しぶりね。

見ないうちに随分大きくなったわね。』



オルレアはそう言うと、

レティアの前でしゃがんで

優しく抱きしめた。


灰色の美しい瞳が

レティアを見つめる。



レティアも少し笑みを浮かべた。

美しい熾天使様の前では

あまりにぎこちなかったかもしれない。


それでも、

唯一自分に優しい眼差しをむけてくれる

数少ない味方なのだ。

レティアは少しだけ

心があたたかくなった。




レティア『オルレア様‥。

どうしてここに‥?』




熾天使は、位の低い天使がいる場所へは滅多なことではやって来ない。

常日頃 天の神の近くにいるため、来られないというのが正しいのだ。


そもそも、熾天使が天界のどんな場所へ

行くことができても

レティアのような位の低い天使達は、

今いる場所より 少しでも神聖な場所には

近づくことさえ許されないのだ。


 



オルレア『もちろん、あなたに会いにきたのよ。

用があってね。』




オルレアは明るい声で言った。


静かで悠然としたシランとは異なり、

朗らかでエネルギッシュなオルレアに

レティアまでパワーをもらえた。



オルレアは何かを取り出すと、レティアに渡した。


それは、古びた何かの地図だった。



レティア『これは‥‥?』



オルレア『人間界の地図よ。

あなたもそろそろ、地上に降りて

人間界を守る役目を担うのよ。


この前、ラナンに会ったでしょう。

彼から話は聞いたわ。


‥‥レティア。

辛かったわね。

ラナンと同じ師匠をあなたに紹介するわ。


強くなって、人間界と天界を‥守るのよ。

あなた自身のこともね。』



オルレアは両手で力強くレティアの肩を掴み、

真剣な眼差しでレティアを見つめた。



レティアは こくりと頷く。



レティア『‥‥オルレア様。

私くらいの他の子達も、そろそろ人間界を守るために修行をするのでしょうか。』



オルレア『そうね。

ただ、守護する地域も師匠も違うけどね。』



レティア『その子達も修行をするのなら

私、強くなっても‥‥』



強くなっても、相手の方が強ければ

もっと嫌がらせはエスカレートするだろう。

言葉だけでなく、今度は魔力や剣術を使った攻撃を受けるかもしれない。


今まではどんな罵詈雑言を浴びようとも

手を出してくる者はいなかった。

けれど、大きくなるにつれ知恵もつく。

幼少期に受けた棘のある言葉よりも

今受ける悪口は、錆びたナイフのように

じわりじわりと、傷口を抉っていくのだ。

鋭さはなくても 鈍い痛みは長い間胸に留まり

治りも遅いのだ。

いっそ鋭い刃で切り裂いてくれた方が

傷は深いが治りは早いだろう。



それが今度は

母がくれたこの体を

痛めつけられるかもしれないのだ。

それに怯えて 醜い自分に引け目を感じながら

生きていくなど耐えられなかった。




オルレアは下を向き何かを考え怯えているレティアに言った。



オルレア『そいつらより強くなればいい。


あなたならできるわ。シランの娘なんだもの。


死に物狂いで強くなればいいわ。

あなたにはそれができるのよ。

傷ついたことのある者は強いのよ。』



オルレアは力強く言った。



オルレア『私の一番弟子を紹介するわ。

安心して。強くて真っ直ぐで、真面目な男よ。

ラナンも言っていたでしょう。


彼はあなたを、絶対に傷つけない。

そして必ずあなたを強くするわ。』




オルレアの真っ直ぐな瞳と言葉に

レティアは深く頷いた。



オルレアはその姿を見て笑った。




オルレア『アウロという名前の権天使よ。

武器を使った戦いが得意でね。

レティア、あなたはまだ剣も握ったことないでしょう。

彼の腕にかかれば、そこらの怪物も魔物もすぐに倒せるようになるわ。』




そう言うと、オルレアは地図を開くように言う。

レティアは地図を開いた。



オルレア『あなたが後に降り立つ場所は、

ヘレボルスという地域よ。

ここをあなたが守るのよ。』



レティア『ヘレボルス‥‥


どんなところですか?』



オルレア『とても美しい森があるところよ。

‥‥ちょっと、不穏な空気なのだけれど。』



レティア『不穏な空気‥?』



オルレア『‥‥‥‥‥‥大丈夫よ。

あなたは、ヘレボルスを守護するのよ。』



レティア『わかりました。』



オルレア『3日後、アウロを連れて来るわ。

その後から、修行を始めましょう。


ラナンも一緒よ。』




レティアの顔はみるみる明るくなる。



レティア『オルレア様‥!ありがとうございます‥!

私、きっと強くなって

オルレア様に恩返しいたします。』



オルレアはそれを聞いて微笑む。



レティア『あの‥母は‥元気ですか?』



オルレアは少し考えた後、答えた。



オルレア『もちろんよ。

ただ、シランは‥今とても、忙しいの。


あなたに会いたがっているわよ。』



レティアはシランに久しく会っていない。

いくら母とはいえ、階級が違うため

滅多なことでは会えないのだ。



レティア『そう‥ですか。


私も、母に会いたいです。』




オルレア『伝えておくわよ。

シランがそれを聞いたら喜ぶから。


あなたの顔も見られてよかったわ。


じゃあまた3日後ね!』



オルレアはレティアに手を振って去って行った。




ー夜ー



静まり返り満点の星空に囲まれながら

レティアは地図を開いた。

一つの城に対して、膨大な森が広がっていた。

湖らしき絵もあった。


地上はどんなところなのだろう。

毎日星と雲を見下ろしているのに

人間界では星と雲を見上げるというのだ。



楽しみで胸が高鳴った。

生きる希望を見出した気がしたのだ。


ラナンに会えることも

とても待ち遠しかった。

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