天の神子の父、翳丸
オルレア『レティア。』
オルレアが部屋に来る。
レティア『オルレア様‥!』
レティアは立ち上がって跪こうとするのを
オルレアが止めた。
オルレア『あなたは神聖なる天の神子を身籠っているのよ!
礼は不要よ。』
そう言ってオルレアは
レティアの両手を掴み立たせた。
オルレア『調子はどう?』
レティア『大丈夫です。』
オルレア『よかったわ。』
オルレアは優しく微笑んだ。
レティア『オルレア様‥
この子の父である、妖の名前は何ですか?』
オルレア『‥翳丸らしいわ。』
レティア『かげまる‥‥
見た目はどんな姿でしたか?』
オルレア『黒髪の少年。あなたと同じくらいの年に見えた。
妖だから、随分生きている可能性もあるけどね。
目は紫色で つり目かしら。
可愛らしい顔だと私は思ったわ。』
レティアはそれを聞いて
目を見開いた。
会ってみたい。そう思ったのだ。
レティア『オルレア様‥私も
翳丸に会ってみたいです』
オルレアは少し眉をひそませた。
オルレア『あなたが傷つくかもしれないわよ‥』
レティア『それでも、会ってみたいのです‥』
オルレア『‥‥わかったわ。
ただし一人は危険だから、護衛をつけるわ。
いいわね?』
オルレアは優しく笑った。
『護衛なら僕の部下達を遣わせましょう。』
声の方を見るとロニスが立っていた。
レティア『ロニス様!』
目の前にはロニスと二名の天使が立っていた。
男女の権天使2名のようだ。
ロニス『マツリカとダフネです。
マツリカ、ダフネ。
彼女がレティアです。
レティアは幸せを産む天使。
伝説と呼ばれる天使に選ばれたのです。
そしてレティアが身籠るのは天の神子!!
全力でレティアを護るように!』
それを聞いて
マツリカとダフネは跪いた。
マツリカ ダフネ『御意!』
レティアはその姿を見て戸惑う。
自分がこんなふうに
厳重に護衛されるなんて初めてだからだ。
ロニス『レティア。元気そうでよかった。
僕の部下二人と共に
翳丸に会いに行ってきなさい。』
レティアは跪き
ロニスとオルレアにお礼を言った。
ダフネ『レティア。行きましょう。』
ダフネとマツリカが剣を握りながら
3人は人間界へと向かった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
アウロ『オルレア様。レティアは何処へ?』
オルレア『‥‥ロニスの部下二人と
翳丸に会いに行ったわ。』
アウロ『何ですと!?!?
だめだ!!!そんなことは‥』
オルレア『アウロ。
あなたの気持ちはわかる。
だけど‥‥
レティアは選ばれた。
そして母になるのよ。
偉大なる母にね‥‥』
アウロ『‥‥おっしゃる通りです。』
アウロは、ガックリと落胆したのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ー人間界ー
マツリカ『この辺にいたのを
天界で確認したのだけど‥』
ダフネ『ああ。すばしっこい奴だったからな。』
レティアは恐る恐る二人についていく。
『ふん。またお前らか‥
しつこい野郎どもだな。』
全員『!!!!!』
振り向くとそこに
黒髪で紫色のつり目の少年が
木の上で立っていた。
剣を握っており、
その剣には血がついていた。
レティア『あの子が‥この子の父親‥!?』
レティアは声を上げる。
年齢は不詳だがラナンより少し若く見えたからだった。
翳丸は木から降りる。
翳丸『お前が俺の子を孕んでるだと!?』
翳丸は鋭い目で睨みつける。
レティアは後ろに後ずさった。
マツリカとダフネはレティアの前に立ちはだかり
いつでも動けるように戦闘体制だ。
翳丸『弱そうな女だな。
それにお前、本当に天使なのか?
随分と変な色で変な形の翼だな。』
翳丸は高笑いした。
レティアの心臓はキュッと痛んだ。
ラナンならこんなことは言わないだろう。
【俺さ、レティアの笑顔大好きだ。
笑っていてくれよな。レティアー‥】
ラナンの最期の声が
脳内をよぎる。
目の前にいる少年は
ラナンとはあまりにも違う。
だからアウロが
レティアと会わせないようにしたのだと
改めて思った。
アウロはレティアのために、守ってくれていたのだ。
決して傷つかないように。
マツリカ『口を慎みなさい。
あなたのお相手なのですよ。』
翳丸『ふざけるなよ。
こいつの体すら見たことねえのに
ガキがいるとか、抜かしやがって。
いいか、俺は絶対に認めない。
腹の中にいる奴が
俺の遺伝子だろうがどうでもいい。
俺を邪魔するな。
俺の人生に関わってくるんじゃねえ。
‥‥邪魔する奴は
女こども関わらず斬る‥‥』
そう言うと翳丸は3人をキッと睨んで
その場を去っていった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
3人は天界へと戻った。
アウロが門の前に立っている。
アウロ『レティア!!!』
レティア『アウロ様!!!』
アウロは心配そうにレティアを見つめた。
アウロ『‥‥会ってきたのか。』
レティア『‥‥はい。』
アウロ『何を言われたとしても気にするな。
お前のこともお前の子供も
俺が支えてやる。』
レティアはそれを聞いて頷いた。
レティア『‥ありがとうございます。
アウロ様‥‥‥』
レティアは肩を落とした。
翳丸にかけられた鋭い言葉の数々と睥睨。
その対照的である
ラナンの優しい笑顔と言葉。
相反する二人の存在が
レティアの頭の中から 離れないのだった。




