水の氣と炎の氣
いつものように
リリアはシランの元へ走った。
シランはこの前の余裕のない態度とは違い
何を考えているのかわからない表情で
ただ一点を見つめていた。
リリア『シラン。
孫の父親を知りたくない?』
シラン『‥‥‥‥。』
シランは何も言わない。
リリア『まあ、聞きなさいよ。
残忍、かつ冷酷な
眉目秀麗の妖らしいわ。』
シラン『‥‥‥。』
シランは黙ったままだ。
リリアはシランを睨みつける。
リリア『なんの反応もしない。つまらない女!!』
『やはりあなたでしたね!!』
リリアは声の方を振り返る。
ロニスがいたのだ。
リリア『ロニス!?なぜここに‥』
ロニス『聞きたいのはこちらですが。』
ロニスはリリアを睨める。
ロニス『早く立ち去りなさい。』
リリアはそれを聞いて
悔しそうにその場を立ち去った。
シランはロニスの方を向いた。
シラン『何の用‥‥』
ロニス『レティアのことさ。』
シラン『‥‥‥。』
ロニス『目覚めないのです。三日間。』
シランはロニスの顔を見た。
シラン『あの子は大丈夫なの!?』
ロニス『オーラがとめどなく流れ続けているらしいです。魔力を胎児に吸い取られていると。』
シラン『!!!!
もしや魔力が出ないと言うの?
誰かがそれを知ってるわね‥!?
どうすれば‥‥‥』
ロニス『‥‥。
アウロは知っているでしょう。
常に師匠としてレティアの側にいましたから。』
シラン『アウロ‥‥‥。』
シランは険しい顔をする。
ロニス『安心してください。
アウロはレティアを大切にしております。』
シラン『‥‥確か真面目な青年だったわね。』
二人の間に、しばらく沈黙が続いた。
ロニス『いいですか。
‥‥レティアが無事に出産するまで
僕の部下達をレティアの護衛にするつもりです。』
シラン『‥‥ありがとう。
そういえば、今リリアが言っていたのは本当?
レティアが身籠る子の父は
残忍で冷酷な妖だというのは‥』
ロニス『‥どうやら本当のようです。
首長から聞いた話ですから。』
シラン『幸せを産む天使の相手は、
魔界に住む男でも選ばれると言うの?』
ロニス『はい。天界と魔界が戦争してようが関係ありません。
幸せを産む天使の相手に選ばれる男は
この世界の全男が対象です。
その中の一人が選ばれますが
それが天使なのか人間なのか、魔界の妖なのかは誰にもわからないのです。』
シランは視線を地面に落とした。
シラン『そう‥‥‥。
妖‥‥。
どんな力を持っているの。』
ロニス『そこまではまだ僕もわかりません。
部下に調査させるつもりでしたが
あの様子だと、リリアがすでに使いを送っているでしょう。』
シラン『‥‥。
レティアが目覚めないのは‥
膨大な魔力を赤子に吸い取られているから。
だとしたら、その妖も
すごい力を持っている可能性が高いわね。』
ロニス『‥‥おそらくは。
またわかったら連絡します。』
シランは無言で頷いた。
ロニスは振り返る。
ロニス『シラン。僕は君を
必ず此処から出す。』
シランは何も言わなかった。
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またもミンがシランの元へやって来る。
シラン『ミン‥‥』
ミン『馬鹿女の話とロニス様の話は聞いていました。』
シラン『話が早いわね‥』
ミン『選ばれた妖は、魔界と人間界を行き来しているようです。』
シラン『!!!!!
もう見つけたの?』
ミン『はい。
端正な顔立ちでしたが目つきがとても悪い。
氣は炎。
何故か、氷と雷の氣も少し感じました。』
シラン『そんなことまで、
もう調べ上げたと云うの?!』
ミン『はい。』
シラン『本当にあなたはすごいわ‥‥
怪我していないでしょうね‥?』
シランはミンの体を見た。
ミン『大丈夫です。』
シラン『‥‥相手が炎の氣‥‥
確率は五分五分ね‥
完全にその妖が、炎の氣だったら良かったのに。
氷の氣も持っているなんて‥‥』
ミン『アウロにはバレていませんよ。
‥‥‥レティアが本当は水の氣であるということは。』
シラン『‥‥。そう。
ありがとう。ミン‥。』
シランはミンに魔力の防御膜を張った。
シラン『いつも本当に感謝しているわ。
‥‥でも、あまり此処へ来ればバレるかもしれない。
あなたが幸せに生きていてくれれば
私はそれでいいの。』
ミンはそれを聞いて微笑む。
ミン『それには、この計画を
必ず‥成功させなければ。』
シランとミンは抱擁を交わす。
ミンは跪いた後に去っていった。
シランは小さな窓から差し込む光に向かって
膝をつき両手を組んで祈った。
シラン『私の孫が、どうか
炎の氣を持って生まれてきますように‥‥』




