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幸せを産む天使  作者: 墨華


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18/23

奈落の底

レティアが目を覚ますと

目の前にアウロがいた。


アウロはベッドの横にある椅子で腕を組みながら眠っていた。



時刻は朝の4時を回っていた。

本来であれば、アウロとラナンと

人間界に降りて修行か見回りをしていただろう。



夢から醒めた途端

辛い現実に引き戻される。



【ラナンは、もういない】



あの大輪の笑顔を

もう二度と見られない。


天界で同年代の男女に罵られている自分を

唯一庇って味方でいてくれた男の子は

もう 死んでしまったのだ。


自分も死ぬはずだったのに

ラナンは力いっぱいレティアを押して

守ってくれたのだ。



死ぬのが自分だったら良かったと思った。

ラナンは優しくて明るくて

みんなの太陽だった。

それに天の神子という 尊い存在だったのだ。



それに比べて自分は

醜くて異形でなんの力も持たない。

腫れ物のように扱われる忌子なのだ。



【俺さ、レティアの笑顔大好きだ。

笑っていてくれよな、レティアー‥‥】



ラナンの最期の言葉が

レティアの脳内に響き渡る。



『笑えるわけないじゃない‥』


レティアは呟いた。


『ラナンがいない世界なんて

生きる意味がない‥』



レティアは大粒の涙をこぼす。

泣き声が部屋にこだまする。


アウロはその声で目を覚ました。



アウロ『レティア‥‥』



アウロは声をかけた。


レティアは一点を見つめて

声を上げて泣き続けた。




しばらくすると

コンコンと部屋をノックする音が聞こえる。


アウロがドアを開くと、

首長とロニスが立っていた。



アウロは跪いた。

レティアはベッドの上で抜け殻のように

力無くどこかを見つめているだけだ。



アウロ『レティア‥』


アウロはやんわりと

首長とロニスが来たことを知らせるが

首長もロニスも、挨拶は不要だと言った。



首長『レティアの様子はどうだ。』



アウロ『酷く落ち込んでおり

あのように抜け殻のようになっております‥


突然泣き出すこともあり‥』



ロニス『‥‥。

昨日あんなことがあったんだ。

幼いレティアにはあまりに衝撃的な出来事だったでしょう。

無理もありません。』



首長は部屋に入り

レティアの前に来た。



首長『辛かったなぁ‥‥レティアよ‥‥』



そう言ってレティアを抱きしめる。



レティア『‥‥ラナン‥‥ラナン‥‥』



首長はレティアの背中をさする



首長『しばらく休養が必要だろう。

アウロ。レティアの修行も人間界への見回りも

休んで良い。

レティアを支えてやってくれ。』



アウロ『はっ。』



アウロは跪いた。



ロニス『頼みましたよ。アウロ。』



ロニスは優しい笑みを浮かべて言った。

中性的な顔立ちの美青年 ロニスの目は

心なしか いつもより暗く感じられた。



だんだんと空が明るくなってくる。

午前7時を回っただろうか



アウロ『レティア。

昨日の昼から何も食べていないだろう。

何か食べないと。』



レティアは何も反応しなかった。



アウロ『お腹は空いてないか?』



レティア『‥‥‥。』



レティアは悲痛な顔を浮かべる。



アウロ『‥‥。

少し部屋から出よう。』



アウロはレティアの腕を掴んで

レティアと部屋を出る。


レティアもアウロに手を引かれるがまま歩き出した。




部屋を出ると周りの子供達が

レティアの憔悴しきった姿をジロジロと見た。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



オルレア『レティアの様子は?』



ロニス『憔悴しきっていた。

相当な精神的ダメージを受けて‥。』




オルレア『そう‥‥‥。

無理もないわね‥‥。』



ロニス『‥‥‥。

シランは‥?』



オルレアは下を向いた。



オルレア『‥‥幽閉されているわ。』



ロニス『!

どこに。』



オルレア『‥‥あの部屋よ。』



ロニス『‥!!!??!


何‥!?!?


オルレア、どうやってそれを知ったのです?』



オルレア『‥‥。リリアよ。

シランを敵視してるでしょう。

ナルシスたちに話しているのを聞いたのよ。』



ロニスは険しい顔をした。




オルレア『絶対に秘密よ‥』



ロニス『わかりました。

ありがとう、オルレア。』



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


アウロとレティアは食堂に座っていた。


レティアは何も手をつけない。



アウロ『倒れるぞ。』



部屋の外に出て

周りのガヤガヤした音を聞き

少しだけ正気を取り戻したレティアは

目の前に置かれたスープを一口だけ飲んだ。



アウロはその姿を見て

ひどく安心したのだった。



アウロ『首長もロニス様も

しばらく休んでいいと言っていた。


レティア。お前の気が済むまで休め。

辛くて当然だからな‥


俺もお前のそばにいる。』



レティアはそれを聞いて

少し頷く。



アウロはレティアが少しずつ食べているのを見守った。



そしてアウロは昨日の出来事を思い出す。



ラナンがあれほどまで膨大な魔力の攻撃を受けながら

血の一滴も、傷一つもついていなかったこと。


そしてミンがラナンの遺体を運んで行ったこと。



もしミンが他の天使たちを攫った犯人なのだとしたら

同じように 殺した後に

遺体をどこかへ持ち去って行っているのだろうか‥

何の意図で何処へ運んでいるのだろうと考えた。



しかし当初の8人の子供たちは

見るも無惨な姿で殺されていたのだ。



昨日殺されたラナンの姿とは大違いだった。



惨殺された8人の子供たち、

失踪し、未だ手がかりもなく見つからない天使たち、

そして昨日のラナン‥


すべてミンの仕業なのだろうか。



もしそうなら話が早い。

ミンを見つけて倒すだけだ。


しかしもし違ったのなら‥


いろんな考察が脳内を駆け巡る。



ズキッ と頭が痛んだ。

考えれば考えるほど

強く頭が痛んだ。




アウロは一旦 考えるのをやめた。


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