アンタが双子を殺した。わかる?
堕天使ミンに対峙すると、
自分が天使だった頃を思い出してしまう。
毎回自分に向けられた殺気や剣。
高圧的な態度‥‥‥。
それらはレティアのトラウマになっていて、震えるくらい怖いのだ。
でもレティアはもう天使ではなくなった。
そして目の前には仲間がいる。
それだけで心強くなった。
いつのまにか、体の震えはおさまった。
ダリア『レティア!
この女‥‥天使ってこと!?』
レティア『ええ‥‥‥
今は堕天使だけど‥‥‥』
子供達やラナンを失った悲しみが、
沸々と湧き出てくる。
狂乱しそうなほどに、胸が苦しくなるのだ。
レティアはミンを睨みつけた。
レティア『‥‥‥ティラに、天界に暗殺者を送るよう依頼したのは‥‥‥
あなたなんですって!?』
レティアの叫び声など、まるで心に響いていないかのように、
ミンは嫌な笑みを浮かべている。
ミン『そんなことまで知ってるんだ。
ずいぶんと楽しそうに暮らしているみたいね』
レティアはその台詞に逆上する。
レティア『お前が!
暗殺者を依頼していなければ!
ソニアとサンダーは殺されなかったっ!!』
レティアは鉈を持ち ミンに殴りかかる。
ミンは余裕に満ちていて、刃は掠りもしない。
ミンはレティアの鉈を
剣で一振りすると、
レティアは5メートル後ろに吹っ飛んだ。
ドン!と鈍い音があたりに響く。
ミラ『レティア!』
ミンは剣を握りしめながら、
レティアに一歩ずつ近づく。
レティアの体は硬い岩にめり込み、
全身に傷を負っていて動けない!
ミンはレティアの前に来ると、
見下ろして冷たい目をした。
ミン『アンタは、掟を二度も破った。
一度目は私の命令。
私がラナンを襲ったあの日、絶対に人間界に降りてくるなと伝えた。
二度目。シラン様の命令。
人間界へ逃げろ、片時も子供達と離れるなと言われたはず。
でも、アンタは子供たちを置き去りにした。
そして天界に戻った。
その隙に、サンダーとソニアは殺された。』
レティア『はっ‥‥‥!』
ドクン、とレティアの心臓が音を立てて鼓動する。
あの日の記憶が蘇る。
惨い我が子の亡骸をこの手で抱きながら
全てを恨んだ忌わしい刻を‥‥‥
ミラ『レティア!!
何も聞くな!!』
ミンはお構いなしに、レティアの心を抉り続ける。
ミン『アンタが、掟を破ったことが原因。
アンタが双子を殺した。
わかる?』
レティアはボロボロとその場で泣き崩れた。
声をあげて叫び泣いた。
【そうだ。私のせい‥‥‥
私が息子と娘を、人間界に置いていかなければ‥‥‥。
でも私の子供たちは、天界のほとんどの天使より強かったはず。魔物なんて一瞬で木っ端微塵にできた。
それなのに、人間界で一体誰に殺されたというの‥‥‥】
レティアの涙は、あの日の不吉な大雨のように
地面へと滴り、土を濡らしていく。
ミン『ん!』
カキン!と剣と剣の音が鳴り響く!
堕天使ミンが一瞬声をあげた時には、
ミラは、彼女の首筋に短剣を当てがっていた。
ミン『速い‥‥‥』
堕天使ミンは、ミラのあまりの素早さに
無意識のうちに、声が出ていた。
カキン!シュバッ、としばらく剣の音が続いた。
ミン『へえ‥‥‥。
レティア。こんなすごい人間の仲間がいるなんて‥‥‥』
ダリアも応戦し、毒針を持ってミンの首に刺そうとした!
ミン『こいつが暗殺女子‥‥‥。
それもティラの‥‥‥』
堕天使ミンは、ミラとダリア、両方を相手しながら
再び小さな声でつぶやいた。
ミン『驚いた‥‥‥。
こんな能力の高い人間がいたなんて‥‥‥
だけど‥‥‥』
ミンは2人に合わせるのをやめ、
ダリアとミラを一瞬のうちにレティアのように吹き飛ばした!
ダリア『うわっ!』
ミラ『くっ‥‥‥』
2人も後方に3メートルほど吹っ飛ばされる。
しかしさすがは盗賊に暗殺者だ。
綺麗に体勢を整え、しっかり地面に着地して
怪我を免れている。
ミン『‥‥まだまだね。
なぜかって‥‥
人間としか戦ったことないでしょうから』
ミンは剣をしまった。
ミラ『なあ!何で暗殺者を依頼したんだよ!?
天界に。』
ミラは、堕天使ミンに率直に聞いた。
ミン『‥‥‥
アンタは知らなくていいことよ』
ミンはスタスタと歩いていく。
レティア『待ちなさい!!』
ミンが、一瞬ぴくりと体を反応させて振り向いた。
見ると、赤と黒のオッドアイの
悪魔の姿になったレティアが真顔で立っていた。
レティア『許さないわ‥‥‥
理由を話して!
もう私は天使ではない‥‥‥
あなたの命令など聞かないわ!』
レティアはありったけの魔力を手に込めて
ミンに投げつける。
ミン『はっ‥!』
ミンが息を呑んだ瞬間、
レティアの投げた禍々しい魔力の球体が思いっきりミンの体に直撃した!
ミンは右腕を押さえて立っている。
ミン(悪魔の力‥‥‥まさかこれほどまでとはね)
レティア『はぁ‥はぁ‥はぁ‥‥‥』
レティアは今にも倒れそうなほど真っ白な顔をして、息を切らしていた。
ミンはレティアにまっすぐ向き合った。
ミン『ひとつだけ、忠告してあげるわ。』
レティア『はぁ‥‥‥はぁ‥‥‥』
ミン『その中途半端な肉体で
悪魔の姿になると
死ぬわよ。そのうち』
ミラ『な‥‥‥!』
ミラ『フン。小娘。
アンタは昔から、キレると周りが見えなくなる。
‥‥‥そんなんだから、足元を掬われたのよ!』
今度はミンは、悍ましい殺気を込めて
レティアをキッと睨んだ。
皆が息を呑んでいるうちに、
ミンは消えていた。
レティア『うっ‥‥‥』
ドサッとレティアはその場に倒れてしまった。
ミラ『レティア!』
ダリア『大丈夫!?』
ラガー『俺が運ぶ。
お前ら、ひと足先にヘレボルスへ戻れ』
ミラ『ラガーより俺の方が速いぞ』
ラガー『っるせー!
倒れた女運ぶのは男の仕事だろ!
お前らは先を行け!』
ラガーはレティアを抱き抱えると、足音ひとつ立てずに走るミラとダリアの後ろを
見失いそうになりながら追いかけた。
ラガー『あいつらどうなってんだよ!
足音ひとつ立てねえし素早いから迷子になりそうだぜ!
にしても、レティア‥‥‥
大丈夫か‥‥?早く目を覚ましてくれよ‥‥』
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ーその頃、ヘレボルスー
ソフィア『トーア。隠さないでちょうだい。
さっきの女性は誰なの?
熾天使様なのね!?
なぜ熾天使様が、地上にいるの?
そしてトーアとなぜ知り合いなの?!』
トーアは、ソフィアから質問攻めにあっており、頭を抱えていた。
トーア『ソフィア‥‥‥悪いけど君にも言えないよ。
これは、命令だから‥‥』
ソフィア『命令‥‥‥!?』
トーア『‥‥‥そうさ。君のいう通りあのお方は熾天使様さ。前まではね。』
ソフィア『前までは‥‥‥?』
トーア『うん。
今は訳あって、熾天使様じゃないんだけど‥‥‥』
ソフィア『何故私にも姿が見えるの?』
トーア『熾天使様じゃないからね。今は‥‥‥』
ソフィア『まさか堕天使!?』
トーア『な、な、なんだいソフィア!
すごい聞くじゃないか!』
ソフィア『ねえ。
そういえば、レティアの様子が少しおかしかったけれど‥‥‥
まさかあなた、レティアの敵と繋がってるなんてことは、ないわよね?』
トーアの顔色が一瞬変わったのを
ソフィアは見逃さなかった。
ソフィア『嘘をつくのなら、許さないわよ‥‥‥』
『ソフィア!』
ソフィア『!
ミラ!ダリア!』
ちょうどいいタイミングで、ミラたちがヘレボルスに着いたようだ。
ソフィア『あれ?レティアは?』
『ここだ。』
ソフィア『ラガー!
‥‥‥レティア!?どうしたの!?!?』
ソフィアはラガーに抱き抱えられたレティアを見る。
体は脱力していて満身創痍だ。
ソフィア『何があったの!?』
ダリア『ラナンのママ、ミンっていう女が
レティアを吹っ飛ばしたの!』
ソフィア『何ですって‥‥?!』
ソフィアはトーアを睨みつける。
トーアは縮こまり、額に汗を滲ませて真っ青な顔をした。




