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【幸せを産む天使】真の悪は、人間か悪魔か、それとも天使かー…。熾天使と悪魔の娘レティアの復讐が始まる  作者: 墨華


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初恋の、女に似ている


ティルケ国では、騒ぎを聞きつけた兵士が

ティラ王子が殺害されたことを崩御寸前の国王に報告した。



その犯人がティラに仕えていた苺花であること、

苺花はダリアも殺したため、彼女の一族はこの世に存在しないことも伝えた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


騒然とする現場に、ヨロヨロと今にも倒れそうな国王がやってくる。



国王『ティラ‥‥‥‥』



国王はゆっくりと無惨なティラの遺体に近づき、膝をついて涙を流した。


ティラから被害に遭った国民や、

暗殺者にされた者の家族が集まっており

盛大に国王にやじを飛ばした。



『お前らが俺の息子を殺したんだ!!』



『私はティラ王子に‥‥言えないことをされた!』



『権力で揉み消された!!』



『私たちだって!国王が息子を失って悲しいのと同じで、我が子を失って‥‥うう‥‥』



民達の怒り、悲しみの声があたりに響き渡る。



国王は震える体で

その場で土下座をした。



国王『すまなかった‥‥‥』



ヨロヨロと立ち上がり、

ゴホゴホと咳をした。

一度咽せると止まらないその背を

家来がせわしく撫でていた。



ラガーはそんな国王の前に立ちはだかる。

もはや何かを言う力すら残ってない国王の代わりに、

家来がラガーを睨みつけて【何か?】と言った。



ラガー『ああ俺ら、果実団なんだけど。

盗賊団蟒蛇を倒した時にここに呼ばれた。


果実団のお頭だったミラ。

こいつはお前の息子ティラに、12歳の頃!

孕まされて‥‥‥

腹を殴られて流産させられたんだぞ!

知ってんのか‥‥‥!!

12歳だぞ!?


生まれてりゃお前の孫だったんだ!』



国王は目を見開いて、ミラを見た。



国王『なん‥‥‥だと‥‥‥』



いつも、少しも動じないミラが

国王の視線にぴくりと肩を震わせた。


国王はミラの顔をしばらく見つめていた。

すると急に、ボロボロと涙を流し始める。



国王『‥‥‥似ている。』



ミラ『‥‥?!』



ミラはなんのことだかわからず、

困惑の表情を浮かべた。



ラガーはミラの一歩ななめ前に立ちはだかり、

国王を警戒している。



国王『‥‥‥すまない‥‥‥。

‥‥‥初恋の、女に似ている。

もう、生きているはずもないのだが‥‥‥。』



暗殺国家の君主だとは思えないほどに

純粋な笑顔をたたえていた。

そのオーラはまるで、まだ何も汚れをしらない

10代の少年のようだった。



国王『‥‥‥綺麗な女だったんだ。

お嬢さんに似ている‥‥‥』



国王の話を遮るように

ラガーが国王を睨みつけてミラを背中に隠した。



ラガー『お前の息子にミラは壊されたのに

更に壊そうと言うのか!』



国王は ハッと息を吸い込んだ。



国王『すまなかった‥‥‥』



ヨロヨロと 国王は城へ向かって歩き出す。

あの様子では、一週間も持たないだろう。



世界各国で

•ティラ王子の悪事

•ティルケ国の暗殺者育成

•そしてティラ王子が自分の育成した暗殺者、苺花によって殺されたこと

•ダリアと苺花の過去

•ミラの過去


これらが伝わった。


ダリアは姉の苺花に殺された(ことになっている)こと、

苺花は海殉姫として沈められた海に

自ら飛び込んで死んだことにより、2人は

【ティルケ国の悲劇の姉妹】として語られるのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ラガーを除く果実団の皆は、凋落の街へ向かった。

アケミママに苺花の話をするらしい。



ーヘレボルスー



ソフィア『お帰りなさい。』



皆が暗い顔をして俯いているのを見て、

ソフィアは何も言わずに城に入るように言った。

不意に、ニゲルが抱える顔面蒼白のダリアを見て、

ソフィアは驚きのあまり声を上げた。



ソフィア『ダリアは大丈夫なの?!』



ニゲル『心配要りません。

この2本の針を抜けば、動き出すようです。』



ニゲルがダリアをベッドに寝かせ、針を抜き取る。


すると青白い頬がすぐに血色の良い紅に染まり、

止まっていたはずの心臓が動き出す。

ダリアは、スースーと規則的な呼吸をして、気持ちよさそうな表情で眠っている。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



着く頃には夜になっており、

皆のいる部屋には夕食が運ばれてきた。


配膳の食器の音だけが響き渡り、

誰も一言も話さなかった。


ソフィアは静かに

【話は全て聞いたわ】とつぶやいた。



皆食欲が湧かないようで、

ただ黙り込んで椅子に座っている。


レティアだけ、部屋を飛び出してどこかへ行ってしまった。

ソフィアはレティアの背に向かって口を開く。



ソフィア『レティア。どこに行くの?』



レティア『ちょっと、夜の空気を吸ってくる。』



ソフィア『そう。いってらっしゃい』



ソフィアは、レティアの様子が少しだけおかしいことに気づいた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ヘレボルスの夜風のにおいは

とても懐かしかった。


天界にいた頃、アウロとラナンと降り立ったヘレボルス。

早朝の風のにおいが、レティアの体を満たしていったのを

まるで昨日のことのように思い出す。


レティアは遠すぎる空を見上げた。

かつて、雲を見下ろしていたというのに、

今では手を伸ばしても、少しも届かないのだ。



レティア『‥‥‥なぜ。』



なぜ、トーアはミンの【夢幻可視光】を知っていたのか。


よく考えたら、トーアと初めて出会った時、

彼は【ラナン】のことを知っていた。それに、

【初恋の相手】だということも。


【精霊の国がなくなれば天界に行く術がなくなる】

そんなことも言っていた。



最初は、自分の目を見て透視しただけだと思っていた。

でも、トーアに【なぜ知っているのか】と聞いたとき、明らかに動揺していた。


それに、ラナンが本当は生きていて

彼の父、清光の自宅で眠っていることは

トーアの口から初めて知ったことなのだ。


レティアは全てに疑心暗鬼になった。

誰が誰と繋がっていて、どこに黒幕がいて‥‥

もう何もかもわからなくなったのだ。



『レティア。』



不意に、背後から声がした。

振り返ると、ミラとラガーがいた。



ミラ『こんなところにいたのか』



レティア『ミラ‥‥ラガー‥‥』



ラガー『どうした。そんな顔して。』



レティアは険しい顔をしながら、

2人にトーアのことを話した。



ラガーは眉を顰めて腕を組んで聞いており

ミラは表情一つ変えずに黙って聞いていた。


レティアの話が終わると、ミラが口を開く。



ミラ『‥‥そうか。』



ラガー『なんかトーア怪しいな。

ティルケ国の暗殺者を天界に送り込むように依頼したり、

ラナンを植物人間にしたミンと繋がってるのか‥‥。

そうじゃなきゃ、しまった!なんて顔しないよな』



ミラ『そうだな。

俺もレティアとトーアの会話、少し聞こえてた。

確かに、トーアは少し焦っていたな。』



レティア『それで‥‥トーアのことがなんだか怖くなって‥‥。』



ミラ『無理もない。


俺はレティアの味方だ。

当然レティアに着いていく。

トーアが怖いなら無理に一緒にいることもない。

もう精霊の国は助けたんだ。』



ラガー『そうだそうだ!

俺もお前らに着いてくぜ。』



ミラ『俺ら2人はレティアの味方なんだ。

そんなに心配するな』



レティアは顔を綻ばせた。



レティア『ありがとう。ミラ、ラガー‥‥』



ミラ『ほら。トーアに心読まれたらまずいぞ。

なるべく目を見つめるな。


そろそろ行こうか。風邪引いても困るだろう』



レティア『うん‥‥


全く、ミラったら

彼氏みたいよ‥‥』



レティアの発言に、

ミラはフッ‥‥と優しく笑った。



ヘレボルス城に戻っていく3人。


相変わらず、夜風のにおいは懐かしく

レティアはどこか切ない気持ちになったのだった。

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