蝶々の刺青
苺花がティラ目掛けて毒針を振り上げると、
後ろからドタドタと何かの足音が聞こえて来る。
『いちご!!!』
苺花は振り向く。
そこには 馬に跨る果実団の皆がいた。
ミラ『ラガー!みんな!!』
果実団は馬から飛び降りて
苺花に近づいた。
ラガー『姫様から話は聞いた!!
馬も貸してくれたんだ!!
いちご。辛かったんだな。
でも‥‥!王族殺したらお前!
大変なことになっちまうぞ!
ティラの側近なんだろ!?』
ラガーは、必死に苺花を説得する。
苺花『もう‥‥家族は、海珠村ごと滅ぼしたのよ!
一族皆殺しの刑だとしても私は痛くも痒くもないわ!』
ラガー『‥‥‥俺らはお前が殺されるなんて耐えられねえ!!
ミラも言ってただろ!?
だから彼奴だって、このクソ野郎のところにやってきたんだぞ!
本当は顔すら見たくもないはずなのに!』
苺花は顔を歪めた。
恨みの果てにある虚しさと、
自分のためにここまできてくれた仲間の存在。
その狭間で、苺花の心は揺らいでいた。
ティラ『くそ‥‥果実団の奴らか‥‥!
俺の暗殺団、蟒蛇を倒した‥‥!』
ラガー『何!?蟒蛇は、暗殺団だと!?!?』
ティラは果実団を睨みながら
ゴソゴソと自分の胸元を探っていた。
その姿を見たダリアは、
持っていた毒針を、ティラの首
目掛けて投げつける。
グサリ、と音を立てて刺さると、
ティラは一瞬呻き声を上げた。
ティラ『痛っ‥‥!
貴様‥‥ダリア!何した!
王殺しは重罪だぞ!』
ダリア『殺してない。操作してるだけ。
動かないでよッ』
ダリアは操作の毒針で
ティラが動けないようにしたようだ。
ティラ『お前!!小癪な!!』
ダリア『特殊な訓練を積ませて育成したアタシに
操作の毒針、刺される気分はどう?
‥‥‥許さないんだから。』
ダリアは恐ろしい目でティラを見下ろすと、
ティラは小刻みに体を震わせていた。
果実団の皆が 苺花を宥めている間に
トーアがさらに透視を続ける。
トーア『レティアちゃん。
天使を殺したのはティラじゃない。
そもそも人間のティラに天使は見えないから。』
レティア『じゃあ、どうやって熾天使が
人間に、
天界に暗殺者を送り込むように依頼したの!?』
トーア『堕天使になった時か、あるいは‥‥
ミン様は【夢幻可視光】という技を持っていたでしょ。
人間にも姿を見えるようにできる‥‥。
それを使ったんじゃないかな。』
レティア『トーア‥‥何故それを知っているの‥‥』
トーア『っ‥‥‥!』
トーアが一瞬、しまった!という顔をしたのを
レティアは見逃さなかった。
トーアは隠し事をするように、
話を続ける。
トーア『ティラが持っている、
不思議な羽の生えた生き物を呼ぶことができる【天使の秘技】を
ティラに授けたのはミン‥‥様じゃない。
それはまた別の誰かだ‥‥‥。
うっ‥‥‥』
トーアはその場によろけて座り込んだ。
レティア『トーア!!大丈夫!?』
トーア『平気さ‥‥。ただ‥‥‥
これは、なんだ‥‥!?
悪魔の氣なのか‥‥‥?
とにかくすごい強い氣で、靄がかかっててよく見えないんだけど‥‥‥。
【天使の秘技】をティラに渡した人物‥‥
の‥‥、これは体の一部かな?
よくわからないんだけど‥‥‥。
蝶々の絵が入ってる。刺青かな‥‥ 』
レティア『はっ‥‥‥』
ドクン、ドクン、と
レティアの心臓が鼓動する。
【ちょうちょの‥‥もよう‥‥】
娘ソニアの最期の言葉だ。
レティア『私の娘が言ってた!
誰がやったの!って聞いた時に!!
ねえトーア!!
そいつは 男?! 女?!
天使!? 悪魔!?
翼はあるの!?
ねえ!!』
レティアは掴みかかる。
トーア『見えないんだ‥‥‥!
僕も見えるなら見たいよ!!
でもはっきりわかることはね‥‥
人間界の者じゃないよ。』
レティア『っ‥‥‥!
なぜ、そう思うの‥‥‥』
トーア『‥‥‥僕たち精霊はさ
人間界にいるでしょ。
基本的に人間界の呪いなら全部浄化できるんだよ。
だけどディセントラが使ってた悪魔の禁忌の黒魔術とかの浄化はかなりきついんだ。
人間界の呪いの類よりもずっと強いから。』
レティア『そう‥‥なの。』
トーア『うん。
【天界】や【魔界】の力は、
人間界にいる精霊の力を遥かに凌駕しているんだ。
だから精霊の僕に見えないようにできる時点で、
この【誰か】は、人間界のモノじゃないはずだ。』
レティア『じゃあ‥‥‥
天使か‥‥悪魔‥‥‥』
レティアは魂が抜けたようにつぶやいた。




