売られていた姉妹
乱心するレティアを横目に、
トーアは更に透視を続けた。
トーア『うぐっ‥‥』
トーアは口元を押さえながらえずいた。
ミラ『トーア!大丈夫か!?』
トーア『何て‥‥恐ろしい人間なんだ!
虫唾が走る‥‥‥!』
トーアは肩を震わせながら何度も戻した。
そんなトーアの背中をミラはずっとさすっていた。
トーア『いいかい‥‥苺花ちゃん。
君には‥‥すごく酷な話をする。
耐えられないかもしれない‥‥』
苺花は目を見開いた。
トーア『‥‥‥ティラは小児愛者‥‥‥。
幼い女の子が好きみたい。
だから‥‥ミラちゃん‥‥』
トーアは言いかけて口をつぐんだ。
ダリア『トーア!どういうこと‥!?
ミラがなんなの!?』
ダリアはまだ、ミラが女であることを知らないために、
何の話かわかっていないのだ。
トーア『‥‥‥。
海珠村の贄‥‥海殉姫を決めるお祭りで‥‥
ティラは幼いダリアちゃんに恋をした。
ティラは苺花ちゃんとダリアちゃんの両親に掛け合った。
【大金を払うから、ダリアちゃんを僕にくれないか】と‥‥』
その場にいた全員が絶句した。
ダリアはガクガクと震えている。
苺花は目を見開いたまま動かなかった。
トーアは再びえずいたあと、
口元を拭って話し始める。
トーア『大金に目が眩んだ両親は、
海殉姫に選ばれたダリアちゃんを苺花ちゃんにすり替えて差し出すことに決めた。
もしもダリアちゃんがティラ王子に嫁げば
自分たちも王族との縁ができ
一生 金にも生活にも困らないと考えたみたいだ‥‥‥』
苺花はトーアに怒声を浴びせた。
苺花『嘘つき!!絶対嘘よ!!
なぜティラ王子を透視して、両親の計画を知れるというの!!』
トーア『‥‥‥映像で見えてくるんだよ。
ティラ王子の隠してる秘密が‥‥‥!』
苺花はギリッと唇を強く噛んだ。
トーア『‥‥‥でも、10歳前後の子を娶ったと知られれば、大批判を喰らうことがわかっていたティラは
ダリアが結婚できる歳になるまで決して逃げられないようにするために暗殺者として育成した。
当然両親も了承済み‥‥‥』
ダリアは恐怖のあまり、その場にうずくまった。
体を縮こめたまま動かない。
苺花はティラに凄む。
苺花『王子!!
この前、ダリアは私の妹だと伝えたら、驚いていましたね?!
トーアの話は嘘ですよね‥‥!?』
苺花は縋るような気持ちでティラに問う。
ティラは腹を抱えて笑い出した。
そんなティラの姿に、苺花は後ずさる。
ティラ『ああ驚いたさ。
まさかお前が気づいていたなんて‥‥
ダリアが妹だってことにな‥‥‥』
苺花はティラの言葉に 絶句した。
苺花『海殉姫として沈められた私を、
なぜ助けたの‥‥‥』
ティラ『お前はあの時
10代半ばか後半くらいだったが、
それでもダリアと身長が変わらなかった。
それに、今でもとてもダリアと7つも歳が離れてると思えないほど若くて可愛い。小柄だしな。
だから‥‥‥』
薄ら笑いを浮かべながら話すティラに、
ミラが声を上げた。
ミラ『それ以上話すな!!』
ミラは殺気に満ちた目でティラを睨んでいる。
右手には短剣を握りしめていた。
苺花は、魂が抜けたような顔で
つぶやいた。
苺花『最初から‥全て‥仕組まれていた‥‥。
【海殉姫の私】を助けたのではなくて‥‥
王子を満たす【幼女】を海から拾い上げただけ‥‥』
はは、と、笑いながら苺花は続ける。
苺花『‥‥‥私は両親に愛されていなかった。
だけど‥ダリアも愛されていなかった‥‥』
ダリアはずっと震えながらボロボロ涙を流している。
苺花『私たちは‥‥両親に売られていた‥‥』
苺花の背は、ひどく寂しく影を帯びていた。
苺花『‥‥‥だからダリアは
美しく高価な着物を着せられていた‥‥。
【王族の女】という、【商品】にするために‥‥』
苺花は毒針を胸元から取り出す。
それを力強く握りしめる。
苺花『‥‥‥じゃあ私は
今まで一体、なんのために恨んできたの?
家族に愛されたくて‥ダリアが憎くて‥‥
それだけのために、ティラ王子に忠誠を誓っていたのに‥‥。』
苺花は満面の笑みで見つめながら
一歩いっぽ ティラに近づいた。
振り上げた毒針の先が
太陽に照らされて妖しく光っていた。




