彼のためなら死ぬことすら厭わない!
苺花はソフィアの方を向いた。
苺花『ティラ王子の命令は、絶対。
ソフィアとアレヌスの命はもらうわ。』
苺花は毒針とナイフを手に持つ。
ソフィアやヘレボルスの兵士たちは
一斉に苺花に剣を向ける。
そんな中ミラだけが、苺花の前に躍り出た。
ミラ『いちご!!やめてくれ!!
ダリアのように、殺らなきゃお前が殺られるのか!?』
苺花『違う!
ティラ王子に忠誠を誓っているだけ!
あの日‥‥極寒の海に沈んでゆく私を救い出してくれた‥‥‥。
もしも任務に失敗して、王子が私を処刑しても構わない。
彼のためなら‥‥死ぬことすら厭わない!』
苺花は大声で凄む。
しかしその顔は、怒りと悲しみが滲んでいた。
ミラ『‥‥‥いちご‥‥‥
俺はお前が大事だ!
根がとても優しいことも知っている!!
どうしたら、お前の心に届く‥‥!!』
ミラは苺花の目を見つめたまま
眉を顰めて言い放つ。
苺花の暗い瞳が 少しだけ揺れる。
苺花『なぜ‥‥‥
欲しかった言葉をくれるの‥‥』
苺花は呟く。
その瞬間、彼女の持っていた電子機器が鳴った。
〜♪
苺花が何か操作すると、
かつての美しい青年の声が聞こえる。
ティラだ。
ティラ『苺花!!助けてくれ!!』
苺花はティラの言葉を聞いて動揺した。
苺花『どうしたのですか!』
ティラ『俺と父上の暗殺団に包囲された。
殺される‥‥‥!
苺花‥‥来てくれるか‥‥!』
ティラの訴えに、苺花は走り出した。
任務のことなど忘れて、ティルケ国へと向い出す。
ミラ『いちご!!!』
ミラは苺花の背に向かって彼女の名を呼んだ。
苺花は ミラの声に一瞬、立ち止まる。
ミラ『行かないでくれ‥‥‥。
いちご‥‥‥!
俺らと一緒に‥‥‥』
苺花は迷いを捨てたように、
背を向けたまま言った。
苺花『‥‥‥いい?ミラ‥‥‥。
絶対にティルケ国に来ないで。
あなたとは、もうとっくに決別したのよ‥‥』
気づいたら目の前に、苺花の姿はなかった。
ミラ『いちご‥‥‥』
ミラはひどく悲しそうな表情を浮かべていた。
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いつもの姿に戻ったレティアが
俯いているミラに声をかける。
レティア『‥‥‥行きましょう。ミラ。』
その言葉に ミラは顔を上げた。
レティア『私も‥‥‥なぜティラが天使の秘技を持っているか知らなきゃいけない。
それに、あなたを含めた多くの女性に暴力した件も、
暗殺育成の国であることも 世に知らしめないと
被害に遭った人々が報われないわ。』
ミラはレティアの言葉に力強く頷いた。
ソフィア『結局ティルケ国からは
なんの音沙汰もなかったわ。
各国からは、満場一致でティルケ国を強く非難すると言う返事をいただいたけれど。
‥‥‥‥今、トーアの魔力が尽きている。
ティラを透視しようとしてもできない。
でもティラが殺されたとしたら
透視できなくなってしまう‥‥‥。
どうしたらいいの‥‥‥。』
トーアがふらふらになりながら口を開く。
トーア『大丈夫さ。
ティラを透視するくらいなら‥‥』
ソフィア『本当に!?
あなた今にも倒れそうよ!?』
ソフィアがトーアの頬に触れると、
トーアはみるみるうちに元気になった。
トーア『ソフィアッ!!
もう僕は回復したさ!!』
トーアはその場で飛び跳ねてみせる。
ミラはそんなトーアに声をかけた。
ミラ『今度からトーアが疲れた時には、
ソフィアにほっぺ触って貰えば
無限に魔力が湧いて出そうだな。』
トーア『ミラちゃん!!
君ってば僕に当たり強いんだからっ!!』
全く、とトーアは言い放つ。
ソフィア『私はここを離れられない。
ミラ、レティア、トーア、マルメロ。
頼んだわよ。』
皆が返事をすると、
城の方から誰かが叫んだ。
『アタシも行くわッ!!!』
その場にいた全員が振り向くと、
傷口を抑えながらヨロヨロ歩くダリアと
それを支えるニゲルがいた。
ソフィア『ダリア!!!目覚めたのね!!!』
ダリア『うん!ニゲルから聞いた!
レティアの悪魔の力すごいよ!!
すぐ回復しちゃった!!
あとはここのお医者さんの治療のおかげ!
聖なる魔力のおかげかな!』
ダリアはまだ本調子ではなさそうだが、かなりの回復を見せた。
ミラ『大丈夫なのか!?
太い血管を切られたと聞いたぞ!
無茶じゃないのか!』
ダリア『‥‥‥苺花がなぜアタシを騙してたか知りたい。
それに、ティルケ国のティラ王子の悪事、
みんなに知ってもらわないと!』
ソフィアはダリアの言葉を聞いて、兵士に馬を連れてくるように言った。
ソフィア『もう馬達にはヘレボルスの魔力を込めてある。
数時間でティルケ国に着くでしょう。
気をつけて。
私はここでアレヌスを守るわ。』
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ミラとレティア、
そしてニゲルとトーアが2人で馬に乗り、
ダリアは1人で馬に跨っている。
後ろで抱きつかれると傷が痛むからだ。
ダリア『ねえ‥‥‥アタシが苺花にやられた後のことを教えて。
なぜ、苺花はアタシを騙してたの?』
ミラは言いにくそうに視線を落として
ぽつりぽつりと話し始める。
ミラ『‥‥‥あくまでいちごが話していたことだぞ。』
ミラは、苺花がかつて
海珠村の生贄【海殉姫】に選ばれたことを話し出した。
生贄は、村一番の美しい娘で、
本当はダリアが選ばれたこと。
しかし、両親や祖母に愛されたダリアの代わりに、
ダリアと7歳、年が離れていながらも
身長が変わらなかった苺花が差し出されたことー‥‥‥
ダリアは目を見開いて、肩を震わせた。
ダリア『そんな‥‥そんなことが‥‥!?
だから苺花はナントカ様って呼ばれていたということ‥‥!?』
明らかにダリアは動揺していた。
ミラ『‥‥‥。
海殉姫は、真冬の1番寒い日の海に
沈められるそうだ。
祠の中に祀られた呪物と共にな‥‥‥』
ダリア『なに‥‥‥それ‥‥‥!!!』
ニゲル『それは‥‥‥!
苺花の気持ちもわからなくない。
村や親を恨む気持ちは当然だ‥‥‥。
ダリアは悪くないが
自分は生贄として捧げられるのに
目の前に愛される妹がいるとしたら
憎悪を抱くのも無理はない‥‥』
ダリアは明らかにショックを受けていた。
ダリア『アタシ‥‥全く気づかなかった。
生贄だなんて‥‥‥!そんな‥‥!!』
ミラ『そんな中、助けてくれたのがティラらしい。
だからティラに忠誠を誓ってるみたいだ』
ダリア『そう‥‥だったんだ‥‥‥。』
ダリアは肩を落とした。
まさか自分の知らぬ間に、
姉である苺花にそんな辛いことがあったなど
微塵も気づかなかったからだ。
ニゲル『ということは、一度は極寒の海に沈められたということか。
なんと恐ろしい風習なんだ!!!』
ミラ『全くだな‥‥‥』
皆の話を聞いていたトーアが口を開く。
トーア『たぶんダリアちゃん達にかけられていた、記憶を消される呪い。
あれは苺花ちゃんが持っていた、瓶の中に入った呪物による呪いだと思う。』
全員は声を上げた。
ダリア『トーア、なんでわかるの!?』
トーア『苺花ちゃんが、持っていた海珠村の呪物を見せてくれたから。
その時に感じたのさ。
君がかけられていた呪いと同じオーラだってね。』
ミラ『じゃあ、生贄なんかいなくても、トーアならあの呪物を浄化できるのか?!』
トーア『呪物そのものは、
見てみないとわからないな。』
ミラ『なぜいちごは‥‥
あの呪物を持っていながら呪いがかからないのだ?
ダリアにはかかったのに‥‥』
トーア『苺花ちゃんは、なんらかの形で
あの呪物による呪いを、自分の技にしているよ。』
ニゲル『そんなことができるのか!?』
トーア『‥‥‥あとは、ティルケ国で透視して暴こうか。』
皆は手綱を手荒く動かして
馬をさらに早く走らせる。
レティアもトーアも、
前に座るミラとニゲルの腰に強く腕を回し
振り落とされないように抱きついている。
ミラは何も言わなかったが、
ニゲルはトーアにぶつくさ文句を言っていた。
その姿を見て
ダリアは 声を上げて笑いながらも
誰にも気づかれないように静かに涙を流していた。




