大胆なダリアの操作解除
ソフィア『‥‥‥ダリア。
これは、どんな影響があるの?』
ダリア『‥‥‥‥相手を操作する毒なの。
トラウマとか、心の闇とかを
増大させたり‥‥
恐怖を植え付けたりして、
刃向かえないようにするための‥‥‥。
この毒そのものに誰かを殺めるほどの力はないんだけど、
間接的に相手を狂わせて、自滅に追い込んだりはできる。』
ソフィア『それじゃあ、ミラのこの下腹部の痛みは、トラウマによる心因性の‥‥‥!?』
ダリア『‥‥‥アタシはミラの過去を知らないから何とも言えないけど、そうだと思う。
ティラ王子と因縁があるって言ってたよね』
ソフィアは静かに頷くと、
トーアがハッとした顔を浮かべて口を開いた。
トーア『レティアちゃん!そういえば‥‥‥
君がソニアちゃんとサンダー君のことを強く思い出すと
希死念慮に駆られるように操作されてるって‥‥‥
翳丸くんが言ってたよね?!
もしかして、それ‥‥‥
ティルケ国の毒針の力なのかな。
ミラちゃんの症状と似ていないかい?』
レティアも小さく悲鳴をあげて、目を見開いた。
ダリア『そんなこと言われたの!?
翳丸って奴、アタシは知らないけど‥‥‥!
そいつ何者なの?!』
ダリアはすぐにレティアの肌をくまなく見る。
ダリア『あっ‥‥‥!』
ダリアはレティアのこめかみを指さした。
皆が一斉に見ると、そこにはミラと同じ
十字架の針の痕があった。
ダリア『待って‥‥‥
何これ‥‥‥』
ダリアは一瞬言葉を失った。
微かに体が震えている。
ダリア『これ‥‥‥レティアは‥‥‥
何十箇所も刺されてる‥‥』
トーア『なんだって!?!?』
なんと、ティルケ国の暗殺者の
毒針による十字架の傷跡は
何十箇所にも及ぶようだ。
ダリア『レティア‥‥‥
よく今まで、発狂しなかったね。
こんなに刺されたら普通、正気じゃいられない。
でも‥‥‥』
ダリアは急に口を閉ざした。
どうやらとても言い難い話のようだ。
レティア『ダリア‥‥‥
聞かせて。』
レティアの言葉に、
ダリアは話しを続けた。
レティア『アタシら暗殺者は普通、
この毒針、3本しか所持できない。
それに、どんな手練れの暗殺者でも、
標的に気づかれずに刺すのは相当難しいの。
相手は動いたりするでしょ。
それに人には痛点があるから
命中したらすごく痛いし。
気づかれちゃう』
ニゲル『つまり何が言いたいんだダリア!!!』
ダリア『‥‥‥。
暗殺団の中でもトップレベルの実力者 複数で、
レティアを狙ったとしか思えない』
全員は言葉を失った。
レティア『‥‥‥。
私‥‥いつ刺されたのかしら』
トーア『翳丸くんと出会った時には刺されてたよね。だって翳丸くんが気付いたんだから』
レティア『ええ‥‥‥』
ソフィア『‥‥‥ダリア。
この操作を解除する方法はあるの?』
ダリア『あるけど、相当痛いよ。
ソフィア。アタシの偽物の死体のある部屋に連れてって。
そこに武器が一式あるから』
ダリアとソフィアは、ダリアの偽死体の安置してある部屋へと向かった。
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ーティルケ国ー
苺花は、玉座に座るティラの上に跨り、
ティラの頬を両手で挟んで会話をしている。
まるで節操のない男女に見える。
ティラ『苺花。
さあ聞かせてくれ。
どんな面白い話があるというのだ』
苺花『覚えてる?5年前‥‥‥
あなたが孕ませた女の子のこと‥‥‥』
その言葉を聞いてティラの顔色が変わった。
ティラは妖麗に笑う苺花を鋭い目で睨みつけ、
肩を強く押して自分の膝から落とした。
鈍い音が玉座の間に響く。
苺花は床に転がった。
それでもなお、苺花は笑っていた。
ティラ『何を言い出すかと思ったら。
‥‥‥お前は時たま、酷く気味の悪い話をする。
なぜそんなことを知っている』
ティラは焦りと怒りを滲ませながら、
立ち上がって苺花を見下ろした。
苺花『その問いに答える前に教えてください。
その女の子は、どうなりましたか?』
ティラ『死んだよ。
散々に殴って、捨てたから。
ああ、凋落の街の近くにあった、
治安の悪いスラム街に
その女はいたんだけどな。
まああれだけ殴って瀕死になれば
生きていたとしても他の男が連れ去って売り捌いただろうな。
だからあの女は、この世にいないさ。
今頃、生まれ変わっていりゃ、
ドブネズミにでもなっているかもしれないけどな。』
ティラは鼻で笑った。
苺花は笑わなかった。
心底不快な顔をしていた。
苺花(ミラがダリアの肩を持つのなら、
全てを打ち明けてやろうと思った。
けど‥‥‥
ミラに恨みはない。
むしろ感謝している‥‥‥
‥‥‥あの毒針を刺した。
ミラ‥‥‥ティルケ国には関わらないで。
ティラにも関わらないで!
刃向かってこないで‥‥‥!)
苺花は、心の中でつぶやいた。
そして、暴露しようとしたミラの話をグッと堪えた。
ティラ『さあお前の番だぞ苺花。
聞かせろ。
退屈しない面白い話を!!』
目が血走ったティラの顔が
苺花を覗き込んだ。
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ーヘレボルスー
ダリアは武器の中から、
ドライバーほどの太さの針を取り出した。
ダリア『これ、刺すから。
ミラとレティアに。』
ニゲルとラガーが叫ぶ。
ラガー『おいおい!!無茶だぜ!!
そんな太いのを刺したら、2人とも死んじまう!!』
ニゲル『そうだぞダリア!!
ミラと天使様を殺す気か!!』
ニゲルとラガーは信じられないものを見るかのように、
ダリアに言い放つ。
ダリア『これしか操作を解除できないんだってば!
アタシだって慣れてないからやりたくないよ!』
ニゲル『何ぃっ!?慣れてないのにそんな太っとい針を2人に刺そうとしているのか!!!』
ダリア『そうよ!!
そうしないとミラもレティアも永遠にこのままよ!?』
ラガー『刺した瞬間死んじまうかもしれないじゃねーか!!
ミラは首、レティアはこめかみ。
致命傷になるぞ!』
ダリア『信じて‥‥‥
アタシ、こう見えて器用よ』
ダリアは根拠のない自信を滲ませながら言い放った。
ニゲル『そんな言葉信じられるカァッ!!!』
ニゲルは怒声を上げる。
するとミラがフラフラと手を伸ばしてダリアの腕を掴んだ。
ダリア『ミラ!』
ミラ『ダリア‥‥‥頼む。
刺してくれ‥‥‥。』
ミラの懇願に、レティアも腹を括った。
レティア『ダリア。私も刺して。
あなたを信じるわ。』
レティアとミラの言葉に、
ダリアも覚悟を決めたようだ。
ダリア『任せてッ!』
ダリアは何か特殊なオーラを込める。
解毒作用と解除作用のある魔力らしい。
ダリア『さあ、どっちから行く?』
ダリアの呼びかけに、ミラが手を上げる。
ミラ『ダリア‥‥‥頼む!』
ダリアは口角を上げて、太い針を振り上げる。
ダリア『治すわよッ!!!』
ダリアは
ミラの首についた十字架の毒針痕を目掛けて
右手を振り下ろした!
グサッと突き刺さる音が聞こえる
ミラ『うわぁぁっ!!』
普段痛みに強いミラから、
聞いたことないような悲鳴が上がる。
ラガー『ミラ!!!』
ニゲル『大丈夫か!?』
ダリアは、新しい針を取り出して、再び魔力を込める。
ダリア『レティア!覚悟はいいッ!?
あなたのは何十箇所も刺されてるから、
ミラより100倍痛いかもッ‥‥!』
レティア『ええっ!!!こわ‥‥‥』
レティアが話し終える前に、
レティアのこめかみに鋭い衝撃が走った。
ドクン‥‥と心臓の鼓動がうるさいほど耳に響く。
レティアの視界は、水面のように揺れて
溺れていくような感覚に陥った。
ラガー『おい!レティア!』
ラガーの声が遠くから聞こえる。
でももう、いつの間にか、
なんの音も聞こえなくなった。
そしてそのまま、深淵に沈んでいくように
体が重くなる。
レティアの意識はそこで途絶えた。
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レティアはパチリと目を開けた。
ダリア『あっ!目覚めたねッ!レティア!
みんなー!レティア目覚めたよッ!』
ダリアの声を聞きつけ、皆レティアに近寄ってきた。
ミラもすっかり良くなったようで、横になっているレティアを見下ろしている。
ミラ『レティア!目覚めてよかった。
俺もすっかりよくなった。
ダリアのおかげだな。』
レティア『私、どのくらい眠っていた?』
ミラ『20分くらいだよ。』
レティア『そんなに早く!?!?』
ミラ『ああ。俺は5分で目覚めたらしい。』
ダリア『ねっ!アタシ、器用でしょ!』
ダリアはドヤ顔をした。
ニゲル『フン。今回成功したから良かったが、本当にお前は大胆な女だ。』
ダリア『実は‥‥成功したから言えるけど、
本当はこれが初めてなんだよねーッ!』
ニゲルとラガーはワナワナと震え出した。
2人『なーんーだーとー!?!?』
ニゲルとラガーはダリアを追いかけ回した。
ダリアは笑いながら逃げ回る。
ミラ『やれやれ。まあ、何はともあれ
ダリアのおかげで助かったな。』
レティア『あはは。そうね。よかった。』
ソフィア『全く‥‥‥ダリアったら‥‥。』
トーア『ダリアちゃんは敵なしだね。』
トーアはイタズラっぽく笑った。
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ソフィア『それはそうと、海珠村のこと
詳しく聞いてなかったわね。
ニゲル。ラガー。詳しく聞かせて。』
ソフィアの言葉に、ニゲルとラガーは顔を合わせて黙り込んだ。
ラガー『姫様。でも‥‥‥
ダリアに聞かせるには酷だぜ‥‥‥』
珍しくニゲルも同意見のようで、
深く頷いて見せた。
ダリアも海珠村が滅びていた話を思い出して、
悲痛な顔を浮かべた。
ソフィアは静かに目を閉じて一呼吸置いた後、
口を開いた。
ソフィア『いいえ。
ラガー、ニゲル、話して。
ダリアには酷かもしれない。
けれど‥‥‥隠したとしても、
いつかは知ることよ』
ダリアはソフィアの言葉を聞いて、
その通りね、 とつぶやいた。
ラガーとニゲルは、滅びていた海珠村のことを、
ポツリポツリと
話し始めるのだった。




