十字架の毒針痕
ティラ王子『苺花、ダリアが生きているとはどう言うことだ‥‥!!
本当なのか?!』
ティラは玉座から立ち上がって
苺花の元へ詰め寄る。
苺花『はい。本当です。
あれは‥‥果実団のゴーキーが作った偽物の死体です。』
ティラ『果実団‥‥‥。
ああ、お前が所属している凋落の街の盗賊団のことか?』
苺花『‥‥はい。』
ティラ『そういえば果実団は
盗賊団蟒蛇を倒して、
父上に此処に呼ばれた奴らか。』
苺花『そうですよ。
その際、私も此処で跪きました。』
ティラ『そうだったな。
‥‥‥まさか、【俺の暗殺団】である【蟒蛇】を
あんな小汚い街の盗賊らが倒すとはな‥‥‥。』
苺花は フフ、と笑う。
苺花『タイパン、コブラ、カガシは、
かなりの力がありましたからね。
まあ‥‥その3人以外は、捨て駒のようなものでしたが‥‥‥』
ティラ『この国で暗殺者を育成していることがバレぬように、
盗賊団と言うことにしていたが‥‥‥。
やはり、ダリアや苺花のように、
魔法攻撃の効かない人間じゃないと
上手くいかないな。』
苺花『そうですね。
しかし‥‥‥裏切られたら困りましたね。』
ティラは苺花の挑発的な言葉に
眉間に皺を寄せる。
ティラ『ダリアはどこにいる』
苺花『ヘレボルスですよ』
ティラ『ヘレボルス!?
標的のアレヌスとソフィアを殺さずに‥‥‥!
寝返ったかあの女‥‥‥!!!』
苺花『そのようですね‥‥‥』
ティラ『苺花。
知ってる限りの情報を全て出せ』
苺花『わかりました。
その代わり‥‥‥
天界に行く機会をくださいますか?』
ティラは不敵な笑みを浮かべる。
ティラ『‥‥‥ああ。もちろんだ
苺花‥‥‥。』
苺花も不気味な微笑みを向けた。
苺花『嗚呼‥‥何から話しましょうか。
きっと退屈しませんよ‥‥‥』
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ミラ『っ‥‥‥』
ミラはずっと寝込んでいる。
下腹部を押さえて 額に汗を滲ませている。
妙薬がなぜか効かないようだ。
ソフィアが医者を呼びつけ、
ミラを詳しく診るようにと言いつける。
ソフィア『ミラはどう?』
医師『古傷が痛んでいるようですね。
おそらく心因性のものが絡んでいるために、
妙薬が効かないのでしょう』
ソフィア『そう‥‥‥』
医師『一応薬は出しますが、効かなければ飲ませないでください』
ソフィア『わかったわ。ありがとう』
下がって、とソフィアが合図すると
医師はソフィアに深くお辞儀をして去っていった。
ソフィア『レティア。ミラが心配よね。』
レティアはずっとミラの前から離れなかったのだ。
レティア『ええ‥‥‥。
いつもは強いミラが‥‥』
ソフィア『そうね‥‥‥。
ミラ。無理にティラと対峙する必要はないわ。
此処は私たちに任せてゆっくり休んでね。』
ミラは返事をしなかったが、ソフィアはそのまま
部屋を後にした。
レティア『ミラ‥‥‥』
レティアはミラの手を握りながら心配そうに見つめている。
すると、部屋の中にマルメロが入ってきた。
レティア『マルメロ‥‥‥!』
マルメロはしばらくミラの様子を伺う。
その後 ミラのベッドの周りをぐるぐると歩くと、
レティアの目の前にちょこんと座り込んだ。
レティア『‥‥‥マルメロ。
ミラ、どうしちゃったのかしら。
どこも悪くなければいいの。
だけどとても苦しそう‥‥‥。』
レティアはマルメロに呟くと、
女性のような声が脳内に響いた。
『天使様‥‥‥』
レティアはピクッと肩を震わせてマルメロの瞳を見つめた。
レティア『マルメロなの‥!?』
この声は聞き覚えがあった。
ヘレボルスの戦の時に聞いた、マルメロの声だ。
マルメロ『この子‥‥凋落の街から帰ってきた時から、変。
凋落の街以外に寄り道した?』
レティアは戸惑いの表情でマルメロを見ると、
首を横に振った。
レティア『どういうことなの?マルメロ。
私たちはどこにも寄っていないわ。
凋落の街に行って、アケミママのご飯を食べて、少し眠って‥‥
ゴーキーにダリアの死体を作ってもらった後
すぐ帰ってきたのよ。』
マルメロも少しだけ首を傾げる仕草をした。
彼女のブルーグレーの美しい瞳に、どこか翳りが見えた。
マルメロ『ミラ‥‥何か刺されてる。』
レティア『マルメロ!!どういうこと?!』
レティアは声を荒げた。
マルメロ『どこかに‥‥多分‥‥
針の痕がある‥‥‥』
レティアはミラの掛け布団を剥ぎ取り、
ミラの腕や顔、足に針の痕がないか探した。
レティア『どこ‥‥‥』
レティアはミラの首に腕を入れて上体を起こす。
するとミラの首の後ろに、小さな針で刺されたような痕があったのだ!
周りは赤く腫れており、言われなければ虫刺されとしか思わなかっただろう。
レティア『あった‥‥‥!!!
これ!?
マルメロ!!どうしてわかるの?!
すごいわ‥‥‥!!』
マルメロ『それ‥‥‥彼女を苦しめてる‥‥
もう‥‥魔力が切れる‥‥話せない‥‥』
この言葉を最後に、マルメロの声は途絶えた。
レティアは部屋を飛び出して 叫んだ。
レティア『ソフィア!!!
ソフィア!!来て!!!』
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ソフィア達はレティアの声を聞きつけ、
何事かとすっ飛んで行く。
ミラの休んでいる部屋は上の階にあったために、
ソフィア達は階段を駆け上がってやってきた。
ソフィア『どうしたの!!!レティア!!』
全員、ミラの部屋へ入ってくる。
ニゲル『まさか!!ミラが危険なのか!!』
レティア『マルメロが教えてくれたの!
ミラが変って。
凋落の街から帰ってきた時から‥‥』
ソフィアはマルメロの瞳を見つめる。
ソフィア『そうなの?マルメロ!』
マルメロは頷くように、視線を落とした。
レティア『針の痕があるはずって
マルメロが言うの。
探したらあったの。首の後ろ!!』
ソフィアはミラを起こして首の後ろを見る。
ソフィア『これね‥‥‥!!』
レティアはこくりと頷く。
レティア『マルメロに言われなければ、虫刺されとしか思わないわよね。』
ソフィア『ええ‥‥でも‥‥
何に刺されたと言うの‥‥?
ラガー達が針の痕を見て首を傾げる中、
ダリアだけが声を上げた。
ダリア『それはッ‥‥‥!!!!』
ダリアがワナワナと震える。
ソフィア『何か知っているの‥!?
毒虫とか‥‥?!』
ソフィアはダリアに詰め寄った。
ダリア『ティルケ国の暗殺者が持ってる毒針の痕!!!』
ソフィア『なんですって!?!?』
全員は声を上げた。
ラガー『どう言うことだ!!!
お前が刺したわけじゃないんだろ!?!?』
ダリア『刺すわけないッ!!!』
ラガー『どうしてこの傷が、ティルケ国の暗殺者の毒針ってわかるんだ!?』
ダリア『この毒針は特殊で‥‥‥
よく見て!!!
周りの腫れは赤い。
‥‥‥けど、針の先端による傷‥‥。
普通なら丸いでしょ?
ティルケ国の毒針はね‥‥
十字架なの。』
ニゲル『何だと!?!?』
よく見ると、ミラの針の痕は
十字架の形をしていた。
しかし周りが腫れているために
そんなことは言われない限り気づかないだろう。
ソフィア『どういうこと‥‥‥!』
ソフィアは声を張り上げると、
トーアが静かに口を開いた。
トーア『ミラちゃんがどこかで、
ティルケ国の暗殺者と
出会ったんだろうね。』
レティア『そんなはずない。
凋落の街に行った時‥‥‥
私とミラとダリアは常に一緒にいた。
アケミママの家から出ていないはずよ』
ダリア『うん。ホントに出てない。
アタシが寝ている間に外に出てたとかならわからないけど‥‥‥』
レティア『ミラ。凋落の街に行った時、アケミママの家から出た?』
ミラは顔を歪めながら、首を横に振った。
レティア『ダリア。もしも道中
ティルケ国の暗殺者にすれ違っていたとしたら気づく?』
ダリア『‥‥‥アタシと同じで、特殊な魔力を持ってる暗殺者なら気づくはずだけど‥‥
道中にそんな奴はいなかった。
足音も気配もなかった。』
トーア『ダリアちゃんは、足音も気配も消せるもんね』
ラガー『どういうことだ‥‥
なら凋落の街にいたのか?
暗殺者が‥‥‥。
怪しい奴は、1人も見なかったはずだが‥‥』
レティア『だとしたら‥‥‥
意図は何‥‥‥
ミラがティラと因縁があることに、
気づいてる、って言いたいの?』
皆は背筋が凍るような恐怖を感じた。




