犬猿のニゲルとラガー
ーヘレボルスー
ラガー『すげー!
でっかい城だな。
それに、自然豊かな国だな』
ラガーは再建目前のヘレボルス城と
広大な森を見て感動しているようだ。
ミラ『ああ。元々、俺たちが来た時は
森は焼かれていて酷い有様だったんだよ。』
ラガー『そうなのか!?全くそうは見えないけどな』
ミラ『レティアが持っていたネックレス。
レティアの母さんの羽が入っていたそうだ。
それを、精霊の国の祠に投げ込んだら
魔力が復活したんだよ。
ま、レティアのおかげってことだ』
ラガー『すげーじゃんか レティア!!!』
レティア『いやいや、私は何もしてなくて‥‥‥
それよりミラがすごいのよ!
ミラったら戦いだけじゃなくて心理戦も得意で‥‥』
『レティア。ミラ。ダリア。』
レティアが話している途中に、
聞き慣れた 透き通る声が聞こえてくる。
皆が顔を向けると、そこにはソフィアとニゲルが立っていた。
レティア『ソフィア!ニゲル!』
ソフィア『無事に、作ってもらったようね。』
レティア『ええ!』
ソフィア『城の入り口前にトーアが立っているわ。
レティア、ダリア、偽の死体を持って行って。』
レティア『わかったわ。ダリア、行きましょう。』
レティアとダリアは城へと向かって行った。
ミラ『ソフィア。此奴はラガーだ。
俺が盗賊団だった頃の、相棒。』
ラガー『初めまして!ラガーだ。
よろしくな!』
ラガーはソフィアに挨拶をしたあと手を伸ばす。
するとニゲルが険しい顔をして、ラガーの手を振り払った。
ラガー『あたっ!!!何すんだよ!!』
ニゲル『貴様!!!
このお方がどんなご身分かわかっているのか!!!
ヘレボルスの女王、ソフィア様だぞ!!!
なんと野蛮な挨拶なのだ!!!』
ニゲルはレティア達と初めて出会った時のように、
ラガーを警戒しているようだ。
ラガーはムッとした顔を浮かべるも、
ソフィアに頭を下げた。
ラガー『すみません。姫様。
俺、育ちが悪くて礼儀とか全くなってなくて‥‥‥。
ラガーって言います。
話は聞きました。
俺にもできることがあれば協力させてください』
ソフィア『いいえ。顔をあげてください。
私はソフィア。よろしくお願いします。
あ、今後敬語は結構よ。
ミラの相棒なら、私の仲間も同然だもの』
ニゲル『しかし‥‥‥!』
ソフィアはニゲルを見て、首を横に振った。
ソフィア『これから、ティルケ国が私たちに暗殺者を送り込んだことを、各国に知らしめるわ。
ヘレボルスでも戦をしたばかり。
なるべく、戦はしたくないけれど‥‥‥
あちらがどう出るか、ね‥‥‥』
ニゲル『そうですな‥‥。
しかし‥‥‥
王族でありながら、女子に乱暴をし、
権力で揉み消しているのは、
この世に知らしめなければ!
それに、裏で暗殺者育成していることも‥‥!
ソフィア『そうよ‥‥‥!
任務に失敗したら殺されるとしたら、
きっと、ティラ王子に恨みを持つ人間もいるでしょう。
それに、ティラ王子に乱暴された女性がたくさんいるなら、被害者やそのご家族もティラを恨んでいる。
‥‥‥今、ティルケ国王は崩御寸前。
国内では不安定な状況が続いているはず。
今回、私たちの元へ現れた刺客について
ティルケ国に問い詰めれば
さらに内部は混乱を起こすわね。
‥‥‥‥戦をせずに、ティルケ国を潰すには
絶好のチャンスかもしれないわ』
いつも凛としているソフィアからは想像もできないような策略が出てくる。
その姿は男にも引けを取らない。
流石は一国の女王だ。
ラガー『ティルケ国のティラ‥‥‥
絶対許さねえ』
ラガーが低い声で言い放つ。
その姿は殺気がこもっていた。
不意にミラが小刻みに震えて、その場に座り込んだ。
ラガー『ミラ!!!どうした!!!』
ミラはしゃがみ込んだまま、下腹部を押さえて苦しそうにしている。
女としての自分を壊したティラと対峙する日が近いからなのか、はたまた後遺症による痛みなのか
ミラ自身もよくわからなかった。
ニゲル『ミラ!!!』
ラガーがミラのそばにいるのも御構い無しに、
ミラのことを抱き抱えるニゲル。
その姿を見たラガーは呆気に取られた後、
【は?】と 声を上げた。
ラガー『おい。ミラに容易く触んなよ』
ニゲル『なんだ。顔色が悪いんだぞ!!
運ぶのは当然だろう!!!』
ラガー『んだよお前、ミラの本当のこと知ってんのか』
ニゲル『当然だ!!
お前こそ知ってんのか』
ラガー『たりめーだろ、此奴は俺の相棒だっての』
ニゲル『フン。知るか!!!』
はぁ、とソフィアはため息をついた。
ソフィア『ミラ。大丈夫?お腹が痛む?』
ミラはコクコクと頷く。
ラガー『因縁の相手の話を聞いたんだ。無理もねえぜ。
薬、まだあんのか?』
ミラは首を縦に振った後、
ゴソゴソと胸元から薬を取り出して口に入れる。
すぐに回復したようで、ニゲルの腕から降りようとした。
ニゲル『おいミラ!!だめだ!
倒れる所だったんだぞ!運ぶ!!!』
ラガー『降りるっつってんだろ!!』
ニゲル『ああん!?!?』
ラガー『見苦しいぞオッサン!!』
ニゲル『なんだとっ!!!』
ソフィアは再び 大きなため息をついた。
ソフィア『モテる女は辛いわね‥‥‥‥』
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ソフィアはヘレボルスの魔力が込められた特別な紙に、
文字を認めている。
【ティルケ国の王子ティラは
我が国、ヘレボルス女王ソフィアと
次期国王 アレヌスの暗殺を企てた。
その証拠に、暗殺者の死体を保管してある。】
ソフィア『よし。できたわ。』
ソフィアは書いた書状に、今度は別の魔法をかける。
レティアがその姿を見ていた。
レティア『ソフィア。それは?』
ソフィア『ダリアの偽死体の映像を込めたのよ。
写真みたいなものね。
国によっては、写真なんか馴染みのないところもあるし、
ヘレボルスに実際に来てもらうには、遠すぎるところもあるわ。
これで、ダリアの偽死体を確認してもらえるわ。』
レティア『すごい技ね。』
ソフィア『さっき、偽死体にダリアが纏っていた黒い服を着せたし、
武器もそのまま装備させたから
バッチリ信じてもらえそうね。
まあ‥‥‥暗殺者に襲われそうになったことは事実だし。
ダリアが実際生きていることが、ティラにばれなければいいわ。』
レティア『そうね。』
ソフィア『さあ、これを今から魔法で各国に送るわよ。
きっと明日から、忙しくなるわね。
レティア。よろしくね。』
レティア『もちろんよ。ソフィア』
ああ、とソフィアは何かを思い出したかのように声を上げた。
ソフィア『そうだ。海珠村のこと、調査しないといけなかったわね。
ニゲルとラガーを呼んで。』
ソフィアの一声で、ヘレボルスの家来が2人を連れてきた。
ニゲルとラガーはいがみ合いながら
ソフィアの前に跪いた。
ソフィア『2人にお願いがあるの。
海珠村のこと、調査してきてちょうだい。』
ラガーとニゲルは顔を見合わせて
互いに嫌な顔を浮かべた。
ラガー『こいつとかよ‥‥』
ラガーがボソッと呟くと、ニゲルが怒声を浴びせる。
ニゲル『俺だってお前となんか嫌に決まってるだろ!!
しかしソフィア様のご命令だ!!!行くぞ!!!』
ラガー『姫様!任せてください!』
ソフィア『頼んだわよ。
ダリア。あなたはヘレボルスの鎧と兜を纏って、ここを守ってね。』
ダリア『任せて!足音には敏感だからねッ!
それにアタシと同じ魔力を使う人間はすぐわかるからさ。
刺客きたら、すぐ立ち向かうよ。』
ソフィア『頼もしいわ。
ダリア。後で、あなたのご家族の見た目や名前‥‥
あなたが覚えている範囲の場所と、地図。
この2人に教えてちょうだい。』
ダリアはヘレボルスの兵に紛れ、
ヘレボルスの守護、
ニゲルとラガーは海珠村の調査に行くことになった。
ソフィアはすぐに書状を各国に送り、あとは返事を待つのみとなったのだった。




