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幸せを産む天使  作者: 墨華


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優しい嘘

ラナンとレティアは

天界の北の方にある、聖なる玉泉に来た。



レティア『‥‥こんなところに、玉泉があったなんて‥‥』



ラナン『普通に天界で暮らしていたら

いつもの水でも事足りるもんな。

知らなくても無理ないさ。』



ラナンは優しく言った。



ラナン『人間界に降り立つ天使たちは

ここの水を持って行く決まりがあってさ。


俺は人間界で暮らしたり、天界こっちに行き来してたから知ってただけで

レティアはやっと人間界に行けるようになったんだ。』



ラナンはレティアを慰めた。

レティアは微笑む。



レティア『‥‥ねえ。ラナン。


天界には、あんなにも怖い掟があるのね‥。


鞭打ちだなんて‥まるで罪人のような罰だわ‥』



ラナンは人差し指を唇の前に当てて

レティアの話を牽制した。




ラナン『聞かれたらまずい。』


ラナンは小声で言った。


レティアは何度も頷く。



ラナン『ヒエラルキーがあるんだよ。

それに‥天界の掟は覚えられないほど存在するんだけどさ、

もしも背いたら大変なことに‥‥』



すると 誰かの叫ぶ声がする。



『ラナン!!レティア!!まだか!!!』



アウロのようだ。



ラナン『!

アウロ様!!すみません!

すぐ行きます!!』



ラナンはレティアの手を引いて声の方へと走った。




アウロは腕を組んで待っていた。



アウロ『全く。聖なる玉泉に案内するだけなのにどうしてこうも遅いのだ!』



ラナン『はは‥すみません。』



レティア『申し訳ございません。』



2人のなんとなくヘラヘラした様子に

アウロは怪しむ。



アウロ『ゴホン。

まさかないとは思うが、不純異性交遊は断じて許さないからな!!!』



ラナンとレティアはそれを聞いて顔を見合わせる。



レティア『アウロ様!!なんてことを‥っ!』



レティアは頬を赤らめる。



アウロ『いいか!!清く!正しく!美しくあれ!!


2人が誰かと結婚するまでは

先輩として!!

2人の潔白を守らねばならん!!』



アウロのとてつもなく真面目な様に

レティアもアウロも噴き出しそうになるのを堪えた。




2人は教室に座り

アウロの話を聞く。



アウロ『まずは階級だ!


天使には9つの階級が存在する。


レティアの頭がパンクするだろうから全部は言わないが、

1番位の高い天使が熾天使だ。



熾天使は天の神に最も近い場所にいるので

地上に1番近い場所ここにはなかなかやってこられない。』



レティアは真剣に話を聞いた。

自分の対極にいる母の話だったからだ。




アウロ『熾天使の中でも、

さらに位の高い熾天使が存在する。



レティアの母

シラン様。

生きているうちに一目でもお会いできたら奇跡というくらいの存在だ。


ほぼ同格のオルレア様。

シラン様と仲がとても良く旧友であられる。

身長が俺よりも高くスタイル抜群。

身長の低い男がオルレア様と一緒に並ぶと

ちんちくりんに見えてしまうので

ラナン!とにかく身長を伸ばすことに尽力するのだ。




リリア様。

可憐で華があるお方だが

1番規律に厳しく、ギャップに驚く者も多い。

ご立腹の時は 笑顔で怒るため

真顔の時の方が安心である。





そして男性の熾天使

ロニス様。

とても穏やかなお方で

争いを好まず皆に優しい。

しかし、だからと言って甘えるのは良くない!

2人ともすぐに調子に乗るので

お会いした際は気をつけるように!




ヘリオス様。

明るく面白く

心がとても広いお方

俺のような位の低い天使の過ちに対しても

とても寛大に赦してくださったことがある。

頭が上がらない。




ナルシス様。

美しい青年の姿をしているため

ミーハーな女天使たちがキャーキャー陰で

喚いているが

怒らせると切れ目で見下ろし

ガン詰めしてくる恐ろしいお方だ。



以上六名が

最も高貴な熾天使様なのだ。』



ラナン『だいぶアウロ様の偏見が入ってるよなー』



ラナンは小声でレティアに言った。

レティアはそれを聞いてクスクスと笑った。



アウロ『お前らーっ!!

もしやわざと俺に聞かせているのか!?』



アウロは声を荒げた。



ラナンとレティアは謝りながらも

笑い続けた。


すると、アウロから拳を一発ずつお見舞いされ、

2人は頭にたんこぶができたのだった。





レティア『お母さま、オルレア様、リリア様‥

ロニス様、ヘリオス様、ナルシス様‥』



アウロ『そうだ。


この六名の熾天使様が筆頭となり、

全天使たちは6グループの中のどこかに属している。


と言っても、位が低いと

熾天使様と関わることはまずないのだが。』



ラナン『アウロ様はオルレア様の部下って仰ってましたよね。』



アウロ『そうだ。


2人もオルレア様のグループだ。』



ラナンとレティアは目を見開いた。



レティア『そうなのですか!?』



アウロ『当然だろう。

オルレア様の部下である

俺の弟子になったのだからな。』



ラナン『なるほど‥!!


そのチームはどうやって決めているのですか?』



アウロ『俺もわからない。』



レティア『六グループ作る意味はなんですか?』



アウロ『首長を知っているか?

全天使達の総まとめをするお方。

天の神の右腕だ。


無論、熾天使様達よりも偉い。

シラン様やオルレア様よりもな‥



しかし、膨大な数の天使たちが存在する天界で

首長様お一方で 全天使に何かを指示するのは大変な手間だろう。


そこで!

熾天使様6名がそれぞれ司る

グループを作り

熾天使様が指揮を取ることで

少しでも首長様の負担を減らすためである。』



ラナン『なるほど‥。』



レティアの頭はパンク寸前で

湯気が見えるほどだった。



ラナン『まあとりあえず‥天使たちは全員、

熾天使様6名のグループのどれかに入ってるってことですよね?』



アウロ『そうだ。』



ラナン『有事の際には、

その熾天使様をリーダーとして

指示に従うと言うことですね?』



アウロ『そうだ!頭いいな!ラナン!』



レティア『なるほど‥少しわかったような気がするわ!』




アウロ『次は首長様の話だ。


先ほども言ったが

全天使の総まとめ役。



天の神の次に偉いお方だ。


まあ、簡単に言うなれば、首長様は

1番長生きしている天使様だ。

長老とでも言おうか。


くれぐれも失礼のないように。』



ラナンとレティアは返事をした。



アウロ『今日は最後に大事な話をしよう。』 


真面目な話だ。



幸せを産む天使は知っているな。

今はラナンの母、ミン様が

幸せを産む天使だ。

これから伝説の天使と呼ぶ。



伝説の天使に選ばれた者以外、

天界では、同じ位の天使以外との

結婚は許されていない。』



ラナン レティア『!!!!!』


レティアは目を見開いた。



アウロ『ラナンの父上は人間。

伝説の天使に選ばれた者は

相手の男は天が勝手に決めるために

この限りではない。


しかし、熾天使なら熾天使同士

権天使なら権天使同時

天使なら天使同士ではないと

結婚は許されないのだ。』



ラナン『アウロ様、俺は?俺は天使なのか?』



アウロ『天使でもあり、天の神子という

尊い存在でもある。』



ラナン『階級は?』



アウロ『ラナンには階級という概念が存在しない。』



レティア『‥‥アウロ様。

私は1番位の低い天使ですよね。』



アウロ『そうだ。』



レティア『アウロ様の話を踏まえるなら、

母が熾天使ならば

私の父も熾天使のはず‥ですよね?』



アウロ『そう‥だな。』



アウロは急に口ごもる。


レティア『アウロ様‥

なぜ私の髪には黒色が混じり、

翼は灰色と乳白色の醜い形をしているのですか‥!?』



レティアは瞳に涙をいっぱいに溜めて聞いた。


ラナンは何も言わずにアウロとレティアを見ていた。


アウロ『‥‥‥‥。』



アウロはついに口を閉ざしてしまった。



その様子にレティアは声を上げる。



レティア『アウロ様‥!

私の父は‥一体誰なの‥!!!』



レティアはボロボロと涙を流す。


今までずっと蔑まれ下を向いて生きてきた。

先日まで父の存在さえ忘れていた。


そんな中アウロから、

同じ階級の者同士でないと結婚できないと聞いた。


それならば自分は、

熾天使同士の娘のはずだ。

美しい純白の髪と翼を持っていたはずなのだ。

皆が羨むほど眩い母に

引けを取らないほどだったかもしれないのだ。



アウロは重い空気の中

口を開く。



アウロ『‥‥レティア。君の父は亡くなった。

俺も‥詳しい事情はわからないのだ。』



レティア『‥!!!』



レティアは声も出さずに

大粒の涙をこぼし続けた。



レティアは悟ってしまったのだ。

アウロは全てを知っていることに。

自分のために、優しい嘘をついていることに。



レティアは全てが繋がった。

母ではなく

乳母に育てられた理由わけを。


同年代の子供達にいじめられても

周りの大人達が見て見ぬ振りをしたことも。


腫れ物に触るように

扱われていたことも‥‥。


  

そして、思い出してしまったのだ。

あまりに辛かったために脳が封印していた記憶を。



『忌子』


『恐ろしい』


『なんて醜い』


『忌まわしい』


『穢らわしい』



乳母やその周りの大人達にまで

かけられていた呪詛の言葉達を。



おそらく 母は、

禁忌を犯した。

天界の掟に背く

重大な禁忌を犯したのだ。



だから自分は

異形の忌子なのだー‥‥。

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