帰還
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全天アトラス : 稼働中
擬似天球ミュール : 稼働中
ミリシアフォルダ : ロード中
SCENE LOAD
TITLE : 帰還
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「もーーー!ラッツさん!またお洗濯物放り投げてる!」
「ちゃんとカゴに入れって言ったでしょ!」
あまりのしょぎょうに、えっと、なんだっけ?そうだ!いかりをあらわに!
「お?そんなとこにあったか?わりーわりー」
「もーもーーー!」
勝手に体が足踏みしだす。
「わりーわりー」
全然反省してないラッツさんは、ナタと薪を持って出ていっちゃった。
「ほんと、だらしないんだから!」
しょうがない人は放っておいて、お洗濯もの探さなきゃ。
「あ、こんな所にも!いつの間にっ....」
あれ?取れないぞ?
「えい!えい!!」
とたん、山になった荷物が大きな音でぐずれてきた。
「きゃっ」
「ミリシア!どうした!!大丈夫か!!」
ラッツさんが慌てて飛び込んできた。
「.........ぷっ、ぶははっははっはは!」
ひっくり返った私を見て大笑いしてる、ひどい。
「もー、笑ってないでたすけてよぅ」
「わりーわりー、よいっと!」
「ほら、大丈夫か?怪我は.....なさそうだな、よし!」
呑気なラッツさんに言ってあげなきゃ。
「ラッツさん?この荷物の山は何?」
「......え?いやぁ....それは、そのなんだ、.......そう!大事なものだ!」
その適当な言葉許すまじ!
「大事ならつむなーーーーー!!!!」
「はい!ごめんなさい!」
「ラッツさん」
「なんだ?ミリシア」
「これ何?」
手に持ったものを見せる
「あぁ、これな。これは魔道具だ」
「まどうぐ?」
なんだろう?聞いた事ない言葉だ。
「そう、魔道具、えーーと、あれだ!色々凄いことができる道具だ!」
適当だ!
「ふーん、そう、じゃあいらないね」
ポイっとゴミ箱に入れる
「ああああああ!ダメダメやめて!高かったんだよぉ!」
慌てるラッツさんに追い討ちだ!
「この前も、そう言って高い物買ってたよね?」
「え?いやぁ、それは、あれだ!そう!必要だったからだ!」
なんて適当な答えだ!
いつも同じだった気がするぞ
「無駄遣いはダメーーーーー!」
「はい.....。すんません....。」
夕食が終わると、ラッツさんが外出の準備をしてた。
「今日も見回り?」
「おう、すぐ戻るから寝てて良いぞ」
「うん、わかった」
ラッツさんはいつも夜に見回りって言って出ていく。
最初は不安だったけど、良い加減慣れちゃった。
何してるんだろう?
「ラッツさん、ラッツさん、これ何?」
「ん?なんだミリシア」
手に持ったものを見せる。
「あー、これな。これは魔道力学概論だな」
「まどうり...き..が?」
難しい本みたいだったけど、ほんとに分からなかった。
「魔導力学概論。だ。魔力をどう使うとか、どうやって動いてるとか、小難しい事がびっしり書いてあるぞ」
「なんでそんな本、持ってるの?」
ほんと不思議
「.....えっと。若気の至り?」
「......。」
よく分からないけど、どうしようもない理由だろうって事はわかった。
ラッツさんが今日はお鍋だって言ってた。
んーー、楽しみ!
あれ?うさぎは?
もうバラバラ?
「コレはな、新鮮な方が美味いんだぞ!」
「そうなんだ!」
お鍋は美味しかった!
ラッツさんが外で訓練してる。
ビュンビュンってすごい速さで剣を振ってる。
たまに見るけど、すごいなーはやいなーくらいしか分かんないや。
「ねー、ラッツさーん!」
「なんだー、ミリシアー」
ビュンビュン振りながら答えてる。
「それ、私も出来るーー?」
「無理だーー」
「なんでさーー!」
「まだーー、はやいーーー」
「むぅ.....」
「ねーねー、ラッツさん!」
「なんだ?ミリシア」
「私にも剣教えて?」
上目遣いで攻撃だ!
「ぐっ....、まだ.....はやい!」
敵は強いぞ!
「ねーねー、いーでしょーー」
ゆすれゆすれ!
ラッツさんをグイグイ揺らしながらお願いしてみる。
「そこまで言うなら、良いだろう!」
「やった!」
敵を倒したぞ!
「ちょっと、待ってろ」
そんなこと言いながら、ラッツさんが奥へ行った。
ワクワクしながら待ってたら、目の前に何冊も本が積まれていく......。
「え?」
「教えるのは良い、だがミリシア、お前はまだ、知らない事が多すぎる!」
「だから、この本を全部覚えなさい!」
目の前の本の山見ながらポカンとしちゃう。
「......、コレ全部?」
「.....そう、全部だ」
敵は強大だった!
「ねーねーラッツさん」
「なんだ?ミリシア」
持ってる本を見せる
「コレ意味がわかんない」
「んー、どれどれ。あー、コレか。」
「これは、薬学書だな。傷薬とか治癒ポーションとか、薬を作る方法が書いてある本だな」
「これは、ちっと早いな」
はやい本も積むなんて!
ラッツさんの適当さに騙された!
「じゃあ、どれから読んだら良いの?」
めげないぞー。
「そうだな、これなんて良いな」
「コレ?」
少し薄めの本だ。
「あなたもコレで楽々野営生活〜食べれる野草百選〜、だ!」
「.......。」
タイトルが怪しい。
「待て待て、戻そうとするな。」
「おちゃらけたタイトルだが、内容はすごいぞ、軽い語り口で読んでるだけで頭に入る!コレには助けられたなぁ」
「......そうなんだ」
そうなんだ。
「じゃあ読んでみる」
「おう!楽しいぞ」
「ねーねーラッツさん、ラッツさん」
「なんだ、ミリシア」
「全部読んだよ」
「ん?なんて?」
「だから、全部読んだ。積んであった本」
「.....全部?」
「全部!」
頑張ったのだ!
「だから、剣、教えて!」
「あーー。待て待て。ちょっと待て」
「なんでー、良いって言ったじゃーん」
約束を守らないラッツさんなんてゆすってやる。
グラグラになっちゃえ!
「だから待てって」
軽くつままれてブラーんとしてる
猫みたいに扱われてる!
「全部って、この新訳薬草学も魔導力学概論も、小難しい内容の斥候のススメも、適材適所の軍略講座も全部か?」
「読んだ!」
「理解してる......のか?」
「.......うん!.....頑張った!」
ここは押し切れ!
「頑張れば、分かるもんなのか?」
ラッツさんが信じてくれない。
「頑張ったのに、ひどい」
泣くぞー。
必殺涙目で上目使い
「ラッツさん.......。」
「ぐっ....。いつもいつも同じ手を!」
「はぁ....、仕方ないか.....。」
お?いけた?
「内容はともかく、読んだのは本当だろうし、約束だからなぁ」
「ヤッターー!」
「じゃあ、始めるぞ」
「はい、師匠!」
「し、師匠?!」
あれ?ラッツさんが驚いてる。
「....ミリシア、お前、師匠ってなんだよ」
「だって、剣を教えてくれるんでしょ?だったら師匠だよ。本に書いてあった。」
「そうか、そうかぁ....」
「まあ、良いか....」
「じゃあまずは」
ラッツさんの声に前のめりになっちゃう。
「まずは?」
「........走れ!」
「........はい」
敵は強大だった。
「走れ!」
「はいぃぃーー」
息が切れるぅぅ
「走れ!」
「はいぃ」
少し慣れたぞ!
「走れ!」
「はい!」
余裕!
「.......走ってるな」
「いつもの分は、おわったよぉー」
ふふん
「ゆっくり振れ!」
「お、おもいぃぃ」
くぅううっ
「ゆっくり振れ!」
「はいぃ!」
「ゆっくり振れ!」
「はい!!」
「ゆっくり振れ」
「はい」
「動きを確認しながら振れ」
「はい!」
コレ、難しい!
「動きを確認しながら振れ」
「はい!」
まだおかしい。
「動きを確認しながら振れ」
「はい!」
こうかな?こうかな?
「縦横縦横縦横、順番に振れ!」
「はい!」
縦横縦横縦横!
「振って避ける!」
「はい!」
振って!よっけっる!
「打ち込め」
「はい!」
あたらなぃぃぃ!
「防げ!」
「はいぃぃ」
ひぃぃ!
「ミリシアーーー!夕飯だぞーーー!」
「いつまで走ってんだーーー!」
「はーーーい」
ごっはんごっはん♪
「打ち込みやるぞーー」
「はーい!今日こそ一本!」
「まだまだ、負けてやれないぞ!」
「ふっ!はっ!やっ!」
「おっと、ほい、ほい」
「くぅう、かぁてぇなぁぁいぃぃぃ」
「へばってないで、もう一本行くぞ!さあ立て立て」
「はいぃぃ」
「ラッツさん!私、街に行きたい!」
「なんだ、急に」
「街だよ街!」
「いや、街は分かるけどよ。買い物か?」
「ちーがーうーー!」
「冒険者になる!」
「...........ダメだ」
「そっかー、って!なんでダメなの!」
「.......、まだ」
「まだ?」
「.......一本、取れてない。そうだ!まだ一本取れてないからダメだ!」
「ラッツさん、今考えたでしょ?」
「そそそ、そんな事、な、ないぞ?」
「じーーーーーー」
目を逸らしたってダメだよー。
「じーーーーーー」
「お前なぁ、自分で、じーーって言うなよ」
「じーーーーーー」
「あぁぁ、もう!分かった、分かった!」
「やった!ありがとうラッツさん!」
「ただし!」
「へ?」
「俺から、一本取ったら良いぞ!」
「そんな!ずるい!まだ一回も勝ててないのに!」
「ずるくない!俺程度に勝てないようじゃ、まだまだだ!」
「えぇぇーーー」
「と言う事で、この話は無しな」
「........。」
「分かった」
「そうか!分かってくれたか!」
「なら勝負よ!ラッツさん!」
「んんん?」
「どうして、そうなる?」
「だって、一本取れば良いんでしょ?」
そう壁は乗り越えるものなのだ!
「良いでしょう!やってやろうじゃないの!」
「そうだった。こいつはそう言う子だった......。」
大きく息を吸って
少し止める。
ゆっくり時間をかけて吐き出す
ラッツさんが教えてくれた。
「まずは、呼吸だ!一番大事だからしっかり覚えろ!」
うん、覚えてる。
目の前に立つラッツさんを見る。
手に持った木剣をダラリと下げて、いつもみたいに立ってる。
私程度じゃ、隙とか分からないから、待ってても仕方ないかな?
体調万全、しっかり寝た
朝ごはんは抜いたほうがいいって言ってたから食べてない。
少し空腹、でも丁度いい。
んじゃ、いっちょ行ってみますか!
最初はいつも通りでっと
やっぱり軽くあしらわれる。
なら、もっと早く!
足元!
後ろ!
隙っぽい左!
うーん、ダメだなぁ。
どこ打ち込んでも、避けられるか受け流されるなぁ。
リズムを変えて!
フェイント入れて!
わざと空振り!
!!!
あっぶな!
反撃してきた!
今のはダメだな。反省。
でも、ちょっと冒険、勢いよく!
「えいやぁ!!!」
うひゃー、あぶな!
迂闊な事すると、すぐ反撃飛んでくる。
すばしっこさには、自信あったんだけどなぁ?
ラッツさん、どこに目ついてんだろう?
うーん。
コレは、ちょっと.....。
よっし!
強めに当たって、反動で大きく距離を取る。
手に持った木剣を地面に突き刺す
その場であぐらをかいて、ドサっと座る。
「....なんだ?どうしたミリシアーー?」
「もう、終わりかーーー?」
ラッツさんうるさい
「ちょっと、黙ってて!!」
「あ、はい」
しょんぼりしてるラッツさんは、ほっといて。
うーん。
私の剣技って全部ラッツさんに教わったのだしなぁ。
動きも読まれてる、振った所に居ないか、もう剣がある。
呼吸?
リズム?
タイミング?
動き?
目線?
ラッツさんの知らない何かがいるなぁ
でもなぁ....。
知らないもの
知らないもの.....。
シャン
.......巫女様。
ものは試しだ!
何度だって挑戦するよ!
回数決めなかったしね♪
ゆっくりラッツさんの周りを回る。
足運びに気をつけながら、ゆっくりと。
何度も見た。
何度も聞いた。
体が覚えてる。
小さかった頃は出来なかった動きが。
今なら!
シャン
鈴の音のタイミングで近づく。
歩き方が独特で距離掴みにくいんだよね、コレ。
よし!ラッツさん受けにくそう。
すかさず離れる。
頭の中に流れる鈴の音に合わせて、剣を振る。
巫女様のように滑らかに力強く!
リズムと動きが巫女様の動きと重なる。
シャンシャン
巫女様の舞のように!
軽やかに!
力強く!
リズムは鈴の音で!
すごい!打ち合えてる!
楽しい!
もっと!
もっと!
あっ。
まずい。
ズレた。
コレ...。
....当たる位置だ
ゆっくりになった視界に、ラッツさんの剣が見える。
避ける?
下がる?
受ける?
ダメ!
「前へ!!!」
一歩踏み込んで、前へ進む。
わずかな隙間に体を捩じ込む
ラッツさんのリズムが崩れた!
「ここだぁぁぁぁ!」
全身の力を一点に集中して振り抜く!
「ぐぅ!」
「え?ラ、ラッツさん!?」
「ぐおぉぉぉ!」
ラッツさんが、お腹を抱えて崩れ落ちた。
「ちょ、わぁ!ご、ごめんなさい!隙があったから、つい....。」
大変、大惨事!
慌てて駆け寄る
「い、いや。だ、大丈夫、だ!」
全然大丈夫そうに見えない.....。
持ったままだった剣を置く
ラッツさんが、ゴロンと仰向けに寝転がって.....。
あ、まだ痛そう。
「くぅう!......はぁぁぁっ」
ものすごく大きなため息、大丈夫かな?
「ミリシア」
「なに?」
「...............合格だ」
「合格?なにが?」
「何がって、お前。ほんとにお前は」
ラッツさんはいつも分かりにくい
「街、行っていいぞ」
「ほんと!」
「ああ」
「やった!ありがとうラッツさん!」
自然と笑顔が溢れる
「準備は出来たか?」
もう何度目か分からない、ラッツさんの確認が入る
「大丈夫!荷物も持った。装備も完璧!」
そう、装備揃ってる
「でも、コレ...、良いの?」
手甲に胸鎧に足鎧、剣まで。
いつ、揃えたんだろ?
「当たり前だ!装備もつけずに冒険者なるつもりだったのか?」
いつもにも増して、厳しい顔のラッツさんが言う
「そうじゃ無いけど.....。」
心配はそこじゃ無い
「高かったんじゃ?」
「お前なぁ....。娘を送り出すのに手ぶらなわけないだろう!」
「!」
娘.....。
「良いか、ミリシアよく聞け」
「危ないと思ったら、まず逃げろ!」
「危険な所には、近づくな!」
「必ず、生きて帰ってこい!」
「分かったな!」
.......。
あ、ダメだ
溢れる
コレ、反則だよぉ
「ちょ、ミリシアどうした!」
「どっか痛いのか?行くのやめるか!」
「やめない!」
溢れるものも
嬉しい言葉も
全部抱えて
「行ってきます!」
「お、おう...。そうか、じゃあ行ってこい!」
「はい!」
「ただいまーーー」
勢いよくお家のドアを開ける
「へ?」
びっくりした顔のラッツさんが、手に持った薪を落としてる
「あーー、お腹減ったぁー」
「ねーねー、ラッツさん。今日晩御飯なに?」
「後、薪落としてるよ?」
「え?何?え?あれ?何が.....。」
ラッツさんの様子がおかしい、壊れた?
「だから、晩御飯」
「ばんごはん」
「そう、もうお腹減ってお腹減って」
「あれ?え?ミリシア、お前なんで?」
「なんでって、なにが?」
「いや、お前、家、出るって....。」
ラッツさんが変なこと言ってる
「お家には帰るでしょう、普通に」
「普通に....。」
「そう、冒険者になって、依頼受けて、1週間くらい立ったから帰ってきた」
「あ、コレお土産」
「お、おう。」
「あれ?晩御飯準備してないの?じゃあ私が作るね」
何があるかなぁ?
あ、解体したうさぎ!
じゃあ鍋だ!
台所で準備してたらラッツさんがやってきた。
「..........一緒にやった方が早い」
なんでか仏頂面でラッツさんが手伝ってくれた
お鍋は美味しかった。
ただいま、お父さん。




