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数多の目を持つ者

…やや、呆気に取られる結生に、“枢機卿”は告げた。


「驚いたかね?無理もない。これはこの学園都市“39番”の地下に張り巡らされた、トンネル網の入り口だ。この街の中の重要施設の、ほぼ全てを行き来する事が出来る。」


「同志。避難の準備が出来ました。」


コンコンというノック音の後、緊迫感を感じさせる一声が響いた。


「待て、こちらから行く。」


“枢機卿”は声に応じて答え、出入り口の方へ行く。

そしてドアを背にして結生達に顔を向け、言った。


「小さな同志よ、これまでだ。私は何の力も持たない、ただの一般人。年老いた人民の下僕。ついて行って、役に立てる事はもう無い。その穴をくぐって、向かい給え。君の親友の元へ。確実に敵が待ち構えているだろう。闘う気が在るならば、向かうがいい。道案内は、ミニョーラ兄妹に頼るのだ。」


「……。」


結生は静かにベッドから立ち上がって、灰色の男に向き直った。


「…ありがとう。一回、疑ってしまってごめんなさい。」


「同志。私達は皆、過ちを犯す。取り返しがつく時もあれば、つかない時もある。何か物事が変化する時には、気をつける事だ。」


そう言い残すと、彼はドアの向こうへ去って行った。


「……。」


外からガァガァと、耳障りなカラスの鳴き声が響いて、ガラスの窓を震わせた。

四人はポッカリと開いた地下への入り口を囲んで集まり、互いに視線を交わし合った。

…やがてホセが、その整えられた髭面を結生に向けて言った。


「行くか?」


…頷きかけた結生を制する様にして、マリーアが言う。


「兄さん、まずは準備を整えるべきじゃないかな?最低限の水とか、武器とかなきゃ不味いんじゃない?」


「そうね。武器に関しては、私達は必要ないけど、マリーアとホセさんには必要ね。」


ファラフナーズはホセに視線を送りつつ、言った。


「ああ、少なくとも俺に関しては、向こうに着く“まで”と言う事になるがな。あっちには、生け贄にできる駒が沢山あるだろう。それまでは武器が必要だ。」


「…生け贄…?」


そう、結生が問うたその瞬間。


「武器ならここにあるぞ。」


階段の底、湿気とカビの匂いが染み付いた暗闇の向こうから、声がした。

その聞き覚えのあるしわがれた高い声を聞いて、全員が身を強張らせた…

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