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夕暮れの訓練場は、昼間よりも静かだった。
学院の授業が終わった後、部隊の人間が臨時の鍛錬や報告の整理に使っている一角。
木剣のぶつかる音も、怒号も、今日はもうない。遠くで鳥が鳴いていて、乾いた風が砂をさらっていく。
隊長はそこで、一人で剣の手入れをしていた。
大剣を膝に置き、砥石を滑らせる。
こういう細かな作業は性に合わないが、他人に任せるのも違う気がして、結局いつも自分でやることになる。今日は襲撃事件後の諸々で頭が痛かったせいもあって、無心になれる単純作業がありがたかった。
副隊長はまだ学院長との打ち合わせだ。
他の隊員たちも、巡回やら報告やらで散っている。
だから、背後から近づいてくる足音に気づいたときも、隊長は特に振り返らなかった。
軽い足取り。
遠慮のない気配。
こんなふうに人の背後へ無防備に近づいてきて許されるのは、部隊の中でもほとんど一人しかいない。
「隊長」
呼びかける声は、やけに機嫌がよかった。
「なんだ」
振り返るより先に返事をすると、次の瞬間。
「た、い、ちょー!」
「のわっ!?」
背中に衝撃が来た。
勢いよく飛びつかれて、隊長の上体がぐらりと前へ揺れる。危うく砥石を落とすところだった。反射的に踏ん張ってどうにか耐えたものの、背中には当然のように重みが乗っている。
「おいコラ、急に飛びつくな!!」 「えー、ちゃんと名前呼んでから行ったよ?」 「予告になってねぇんだよ!!」 「でも受け止めたじゃん」 「受け止められちまっただけだ!」
首元から覗き込むように、レオがけらけら笑う。
完全に悪びれていない。むしろ成功して満足そうですらある。
隊長は盛大に顔をしかめた。
「降りろ」 「やだ」 「やだじゃねえ」 「おんぶ」 「は?」 「おんぶして」 「ガキかお前は」
だがレオは隊長の首に腕を回したまま、当然のように顎を肩に乗せる。
体格差があるから成立しているものの、見た目だけなら完全に年下の弟か何かの甘え方だ。
「疲れた」 「嘘つけ」 「本当だよ。今日は授業もあったし、子どもたちと紙飛行機飛ばしたし、おばあちゃんの荷物持ったし、魔術の実技で先生に怒られたし」 「最後だけ自業自得だろ」 「だってあの課題つまんないんだもん」 「だからって術式の出力を三倍にすんな」
隊長は呆れながらも、結局そのまま立ち上がった。
背中のレオが、当然のように足を浮かせる。完全に運ばれる気だ。
「重ぇ」 「筋トレだと思って」 「てめぇ本気で降ろすぞ」 「ひどいなぁ」
ひどくない。
ひどくないのだが、隊長は結局レオを背負ったまま歩き出してしまう。訓練場の端にあるベンチまで数歩。そこへ向かうだけのつもりだったが、背中の男はやけに機嫌がいい。
「隊長、今日ね、商店街のおばあちゃんにまた飴もらった」 「そうか」 「この前のまんじゅうくれた人とは別の人」 「へぇ」 「あと子どもたちに紙飛行機で負けた」 「そりゃよかったな」 「悔しい」
他愛のない報告を、ぽつぽつと口にする。
まるで犬が散歩から帰ってきて、今日あったことを全部飼い主に伝えたがるみたいに。
隊長は適当に相槌を打ちながら、ふと思う。
――こいつ、俺にだけはよく喋るな。
学院では王子様の顔で愛想よく笑い、隊員相手にはもっと軽薄にからかい、生徒たちには優しい先輩をやる。
だがそのどれとも少し違う調子が、今のレオにはあった。
他愛ないことを報告したがる。
面白かったことを共有したがる。
暇があれば物理的に近くへ寄ってくる。
気づけば視界の端にいる。
別に懐かれているからといって嬉しいわけではない。
ないのだが、まあ、悪い気もしない。たぶん。
「……お前、今日やたら機嫌いいな」 「うん」 「なんかあったか」 「んー」
レオは隊長の肩に顎を乗せたまま、少しだけ考えるように間を空けた。
夕日の赤が金髪に差し込んで、毛先がやわらかく光る。
「別に、なんか特別いいことがあったわけじゃないよ」
声は軽い。
いつも通りの、気楽な調子。
「ただ、今日はなんか、ちょっと隊長にくっつきたかっただけ」
隊長は足を止めた。
「……は?」 「え、何その顔」 「いや、お前がそんなこと言うと思わなくてな」 「失礼だなあ。僕だってたまには素直だよ」 「“たまに”で済むレベルじゃねぇだろ」
レオはくすくす笑った。
隊長はそのままベンチまで歩き、ようやく背中の重みを揺すって降ろそうとする。だがレオはまだ離れない。
「おい」 「もうちょっと」 「なんでだ」 「なんとなく」
隊長がため息をついた。
「……お前、ほんと気まぐれだよな」 「そう?」 「そうだよ」
レオは少しだけ黙った。
首に回した腕の力が、ほんのわずかに緩む。
「……隊長さ」 「ん?」 「僕、たぶん、恩みたいなの感じてるよ」
隊長が眉を上げる。
あまりにも唐突だった。
「恩?」 「うん」
それきり、少し沈黙が落ちる。
夕暮れの風が吹いた。訓練場の端に積まれた木剣が、かすかに鳴る。
レオは冗談っぽく笑うでもなく、かといって深刻ぶるでもなく、ただ普通の声で続けた。
「隊長が拾ったでしょ、僕のこと」
隊長は何も言わない。
レオも答えを求めてはいなかった。
「親は捨てたし、周りはだいたい“あ、これ置いといたらダメなやつだ”って顔してたし。実際そうなんだけど」 「……」 「別にそれで傷ついたとかはないよ。なんとも思わなかった。だって事実だし」
あっけらかんとした言い方だった。
痛みを隠すための軽さではない。
本当に、痛みとして認識していない声音。
「ぶらぶらしてたの、あれはあれで結構楽しかったしね。腹減ったら盗んだり奪ったり、気が向いたら寝て、気に食わないやつがいたら壊して。面白いものがあれば見に行って、飽きたら捨てて」 「ろくでもねぇな」 「うん。ろくでもなかった」
笑う。
その笑いには、後悔も自嘲もない。
ただ事実を述べているだけの、妙に乾いた響き。
「でも、たぶん」
レオの声が少しだけ低くなる。
「たぶんだけど、あのままだったら、いつか“生きる”のに飽きてたと思う」
隊長の足が止まる。
完全に止まった。
背中越しに、レオの体温だけがやけに近い。
「飽きる?」 「うん。なんかね、そのうち思ったと思う。生きるの、もういいかなって」
あまりにもさらっと言うから、余計にぞっとした。
死にたい、とか。
苦しい、とか。
そんな湿った響きは一切ない。
ただ、飽きる。
遊びに飽きるみたいに。
面白い本を読み終えて閉じるみたいに。
今日の遊びはここまで、と切り上げるみたいに。
そういう軽さで、こいつは自分の命を手放したかもしれないのだと、隊長は理解する。
「“生きる”より、“死ぬ”方が面白そうだなって、たぶん思ったんじゃないかな」 「……」 「だってどうせ一回きりでしょ。やり直しきかないし。じゃあ、最後にそっち見てみるのもアリかなって」
冗談めいた口調ですらなかった。
淡々としている。
本当に、選択肢のひとつを並べるように。
隊長はゆっくり息を吐いた。
怒るべきか、叱るべきか、分からない。
だが少なくとも、胸の奥が妙にざわついた。
「……今は?」
問いかけると、背中でレオが笑ったのが分かった。
「今?」
楽しそうに、その言葉を繰り返す。
「今はいいよ。まだ面白い」
あっさりした返答だった。
けれど、その中身は思ったよりずっと重い。
「隊長が拾ったし」 「それだけか」 「それ、結構大きいよ」
今度こそ、レオは少しだけ首元に頬を寄せた。
甘えるみたいな仕草だった。無意識かもしれないし、分かってやっているのかもしれない。
「隊長、面白いもん」 「嬉しくねぇ評価だな」 「強いし、うるさいし、面倒見いいし、僕に怒るし」 「最後の二つは別に褒めてねぇだろ」 「褒めてるよ。だって普通、もっと早く見捨てるじゃん」
隊長は黙る。
レオは続ける。
「みんな僕のこと、危ないとか、怖いとか、気味悪いとか思うのに。隊長も思ってるでしょ」 「……ああ」 「正直でよろしい」 「嘘ついても仕方ねぇだろ」 「うん。でも、その上で拾ったじゃん」
それが不思議だった、とでも言うように、レオの声は少しだけ柔らかかった。
「手に余るの分かってて、それでも置いた。向ける先を絞って、首輪なんかつかないって知ってて、それでも放り出さなかった」 「放り出したらもっと面倒だからな」 「そういう言い方する」
けらりと笑う。
だが、すぐに少しだけ真面目な声に戻った。
「でも、そういう打算込みでもいいよ。結果として、僕はまだここにいるし」
ここにいる。
王直属部隊に。学院に。隊長の背中に。
「……だから、たぶん、恩みたいなのはある」
ぽつりと落ちたその言葉は、妙に素直だった。
レオは普段、感謝を言えないわけではない。礼も言う。助けられたら「ありがと」と返すし、お菓子をもらえば嬉しそうに笑う。
だが今のは、それとは違う種類のものだった。
もっと根っこの、長く積もったもの。
名前をつけるのが下手だから“恩みたいなの”としか言えないだけで、本当はもっと複雑で重い感情だ。
隊長はようやくベンチに腰を下ろした。
背中のレオはまだ降りない。降りる気配もない。
「お前な」 「なに」 「そういう話は、せめて降りてからしろ。重ぇ」 「やだ」 「なんでだよ」 「今はこういう気分だから」
本当に勝手だ。
勝手で、気まぐれで、面倒で、危なっかしい。
だが、その面倒くさい男が、自分の背中にしがみついたままぽつぽつと本音をこぼしている。
その事実に、隊長はなんとも言えない気分になる。
「隊長ってさ」
レオがまた口を開く。
「人間の中だと、たぶん一番好きだよ」
隊長は、盛大にむせた。
「っ、おま、急に何言い出す!?」 「本当のこと」 「言い方!!」 「え、なんでそんな狼狽えてんの」 「お前が平然と爆弾投げるからだろうが!」
レオは本気で不思議そうだった。
背中越しに、きょとんとしている顔が見える気がする。
「好きだよ。たぶん、一番」 「たぶんって付けるな」 「だって厳密に順位つけたことないし」 「そういう問題じゃねぇ」
隊長は額を押さえたくなった。
だが背中にしがみつかれているのでできない。腹立たしい。
「お前の“好き”が信用ならねぇんだよ」 「ひどい」 「だってお前、面白い魔物にも“好き”って言うだろ」 「言うね」 「珍しい武器にも言うだろ」 「言う」 「子どもにも年寄りにも言うだろ」 「うん」 「だったら俺への“好き”がどの枠か分からん!」 「あー」
レオはちょっと考えた。
数秒して、あっさり答える。
「でも隊長は、死んだらやだなって思う方の好きだよ」
隊長は完全に黙った。
レオの声は、いつものように明るいままだ。
けれど言葉だけが、妙に真っ直ぐだった。
「面白いものが壊れたら残念、とはちょっと違うんだよね。隊長が死んだら嫌だなって、ちゃんと思う。たぶん、僕が知ってる“嫌”の中だとかなり大きいやつ」
風が吹いた。
訓練場の端で、旗がばさりと揺れる。
隊長は何を返せばいいのか分からなかった。
それはたぶん、レオなりの最大級の情だ。
普通の人間なら、もっと別の言い方をするだろう。大切だとか、失いたくないとか、恩人だとか。
でもこいつはそういう綺麗な言葉を持っていない。持っていても、選ばない。
だからこんな言い方になる。
死んだらやだなって思う方の好き。
それだけで、十分すぎるほど伝わってしまうのが厄介だった。
「……お前なぁ」
ようやく絞り出した声は、ひどく掠れていた。
「それ、他所で言うなよ」 「なんで?」 「誤解される」 「誰に?」 「色々だよ!」 「へえ」
レオはくすくす笑う。
どうやら少しはわざとらしい。人の反応を見るのが好きな顔だ。
だが、すぐにその笑いも薄れていく。
代わりに、ぽつりと小さな声が落ちた。
「……隊長が拾ってくれて、よかったよ」
今度は本当に、静かな声だった。
「生きるの、まだ面白いって思えるから」
隊長はしばらく黙っていた。
背中の重みが、いつもよりずっと生々しい。
こいつは危険物だ。
怪物だ。
放っておけば、たぶん本当にろくでもない終わり方をしただろう。誰かに殺されるか、自分から死地に突っ込むか、あるいはもっとどうでもいい理由で勝手に消えるか。
それを拾ったのは自分だ。
拾った理由は正義感でも慈愛でもない。戦力になると思ったし、野放しにする方が危険だったからだ。国益になると判断した。
そこに情がなかったわけじゃないが、最初から綺麗なものだったとも言えない。
それでも、今こうして背中にいる男が「まだ生きるのは面白い」と言うなら。
自分を理由のひとつに挙げるなら。
……少しくらいは、責任を感じてもいいのかもしれない。
隊長は大きく息を吐くと、片手を後ろへ回した。
レオの頭を、ぐしゃりと乱暴に撫でる。
「うわ、なに」 「うるせぇ。黙って撫でられとけ」 「雑」 「俺はお前みたいに器用じゃねぇんだよ」
レオが小さく笑う気配がした。
そのままされるがまま、頭を撫でられている。珍しいことだった。普段なら「髪崩れる」と文句を言うくせに、今日は言わない。
隊長は低い声で言った。
「死ぬのが面白そうとか、飽きたら終わりとか、そういうのは好きに考えりゃいい」 「うん」 「だが勝手に死ぬのは許さん」 「厳しい」 「厳しいに決まってるだろ。拾った責任がある」 「責任」 「そうだ。お前が死にたくなかろうが、飽きようが、面白かろうがつまらなかろうが、俺の許可なく死ぬな」 「何それ」
レオが吹き出す。
「隊長、独占欲強い?」 「違ぇよバカ。管理責任だ」 「ふぅん」 「納得してねぇ顔すんな」
だがレオは笑ったままだ。
楽しそうで、満足そうで、少しだけ安心したような笑い方だった。
「じゃあ、許可取るまでは死なないでおく」 「一生取るな」 「えー」 「えーじゃねぇ」
レオはけらけら笑う。
その笑い声を聞きながら、隊長はようやく肩の力を抜いた。
「……それと」 「ん?」 「お前が俺をどう思ってようが勝手だが、背中に飛びつくのはやめろ」 「なんで」 「危ねぇし重い」 「でも隊長、受け止めてくれるし」 「だからってやるな」 「じゃあ前から抱きつく?」 「もっとダメだ!!」 「基準が分かんないなあ」
分からなくていい、と隊長は吐き捨てた。
だがその声には、さっきまでの妙な重さはもうなかった。
レオもそれが分かったのか、満足そうに頬を肩へ擦り寄せる。
本当に、懐いた大型犬みたいな仕草だ。大型犬にしては牙が鋭すぎるし、うっかりしたら人も食いちぎれるが。
しばらくして、ようやくレオが背中から降りた。
隊長の隣にどかっと座り、足を投げ出す。夕焼けに照らされた横顔は、いつもより少しだけ静かだった。
「隊長」 「なんだ」 「僕、まだしばらく生きるね」 「そうしろ」 「どうせ死ぬなら、もっと面白いとこまで見てからにする」 「だから死ぬ前提で話すな」 「事実じゃん」 「事実でも口に出すな」 「はいはい」
返事は軽い。
けれど、その軽さの奥に、確かに何かが留まっている。
すぐに消えるかもしれない。
明日にはまた別の面白いものに気を取られるかもしれない。
それでも今この瞬間、レオはちゃんと“先延ばしにする価値がある”と思っているのだ。生きることを。自分の命を。
それはたぶん、奇跡みたいなものだった。
「ねえ隊長」 「今度はなんだ」 「飴いる?」 「なんで今出す」 「さっきもらったやつ、二個ある」 「……一個寄越せ」 「ん」
手のひらに落ちてきた飴は、薄い琥珀色をしていた。
隊長が呆れながら受け取ると、レオは隣で満足そうに笑う。
「やっぱ隊長好き」 「うるせぇ」 「照れた?」 「殴るぞ」 「ひどい」
ひどい、と言いながら、全然嫌そうじゃない。
むしろ楽しそうだ。
夕暮れの訓練場で、二人分の笑い声が小さく混ざる。
風は少し冷えてきていたが、不思議と寒くはなかった。
レオは空を見上げる。
赤く染まる雲の向こうに、いずれ夜が来る。いつか死ぬ。自分も、隊長も、誰だって。やり直しなんてきかない。
だからこそ、まあ、もう少し。
もう少しくらいは、生きてみてもいいかもしれない。
隊長がいるし。
面白いことはまだ尽きないし。
死ぬのは、どうせ最後に一回だけでいい。
そんなふうに思いながら、レオは飴を舌の上で転がした。
甘い。おばあちゃんがくれるやつはだいたい美味しい。
「隊長」 「なんだよ」 「明日、子どもたちとまた紙飛行機やる」 「そうか」 「見に来る?」 「行かねぇよ」 「えー」 「仕事だ」 「じゃあ終わったら結果報告する」 「いらん」 「する」 「勝手にしろ」
勝手にする。
そう返して、レオは笑った。
その横顔は、いつものように太陽みたいに明るい。
だけど今だけは、その熱が誰かを焼くためのものではなく、ただ少しだけ、生きる方へ身体を傾けるための温度に思えた。
たぶん彼はこれからも、残酷で、気まぐれで、危ういままだ。
死を面白そうだと思う感覚も、完全には消えないのだろう。
それでも今はまだ、終わりより先に見たいものがある。
その理由のかなり大きなところに、隊長がいる。
人間の中で一番好き。
死んだら嫌だと思う方の好き。
拾ってくれたから、まだ少し、生きてみようと思える。
そんな滅茶苦茶な告白を受けた隊長は、きっとこれからも胃を痛める。
でもたぶん、もう二度とレオを手放さない。
拾った責任と、見捨てきれない情と、厄介な怪物に懐かれてしまった諦めを抱えたまま。
「ほら、帰るぞ」 「んー」 「立て」 「おんぶ」 「調子に乗るな」 「ちぇー」
結局最後は襟首を掴まれて立たされながら、レオはまだ笑っていた。
その笑い方は、昔みたいにただ退屈しのぎのためだけのものではない。ほんの少しだけ、明日も悪くないと思っている顔だった。




