第235話 夜遅くに、アイツが来た。
コン、コンッ
(……なんだよ、こんな夜遅い時間に)
寝たふりしてれば帰ってくれるかな、
というかカロリちゃん起こして対応させようか、
いや、わざわざメイド使って間接的に相手させるくらいなら俺が出よう。
コンッ、コン……コンッ
(しつこそうだな、誰だよまったくもう)
ベッドから降りる、
うーん、誰だよまったく、
想像つかないぞ、考え込んだら出るかもだがまあ良いや、先に出ちゃおう。
「はいはい、いま開けますから」
扉を開くと、そこに居たのは……!!
「夜分失礼、君がグランくんだね?」
うっわ、白髭の爺さん!
これはアレだ、見た感じなのだけれども、
前世でいうボードゲーム『モノ●リー』に出てくるシルクハットのアイツだ!!
(そうそう、アイツに瓜二つだ)
アイツが来ちゃったよ、アイツが。
「どちら様ですか」
「一度しか言わない、いや、言えないが」「はい」
「国王だ」「……はいっ?!」「ドルルフだ」「……あっ」
慌ててひれ伏す!!
「中に入って良いか」
「は、はい、どうぞどうぞ」
お付きとか居ないんだ!
ひとりくらい連れて来いよ、
メイド姿の淫乱バーサーカーとかさあ!
「その、メイドを起こして紅茶を」
「良い、今日は話だけに来た」「はあ、いえ、ははっ」
「失礼する」「はははっ、わざわざこんな子爵の三男の部屋へ」
ソファーに座った陛下の前で、
正座で再度、頭を深々と下げる。
「……グンタに頼みがあってな、来ないから来た」
「そう申されても、僕は」「グンタと一番、繋がりがあろう」
「いえ、たまたま」「たまたまでもだ」「まあ、そうなっている、のでしょうか」
陛下を騙すのは、
さすがにハイリスクだよなあ、
でもこればっかりは仕方がない。
「なので次にグンタに会った時に伝えて欲しいのだが」「はいっ」
「ワシには息子はひとりしかおらぬ、娘は無駄に四人居るがの」「ははっ」
「それでだ、これは非公開だが、息子は種無しだ」「そ、そうなんですかっ?!」
会話に気付いてカロリちゃんが起きて来ちゃった、
様子を見て慌ててら、一応、念話魔法を飛ばしておくか。
『なんかひとりで国王陛下が来ちゃった』
『この白髭のお爺ちゃんがですかーっ?!』
『無駄になっていいから紅茶用意して』『はいっ』
引っ込んで慌ててメイド服を着るっぽいな。
「それでだ、このままでは次期国王に指名できん」
「なるほど、それでまだ陛下が」「娘の婿共が早く譲れと煩くてな」
「でもその、王子様は優秀では」「地味だ、普通だ、正直に言えば全て周囲が助けておる」
うん、お飾り国王になるにしても、
じゃあその後はってなると直系が居ないときついのか、
大陸で七番目の国だっけ、それがこの先、生き残るにはやはり実子の男系で繋げたいのだろう。
「それで、補佐役にグンタさんをとか」「違う」
「では姫の旦那さん、婿さん同士の争いをグンタで治めたいと」「違うな」
「えっ、まさかグンタさんを次期国王に」「そんな訳は、なかろう」「ですよねー」
やべえ、
陛下となんか喋り慣れてないから不敬になったらどうしよう。
「グンタに頼みたいことはな」「はい」
「治療だ」「えっ」「息子の身体を治したい」
「ええっと、子供が作れないっていうことはエリクサーでは」「無理だった」
試したのか、
もったいない……
とはいえ国王家の未来を考えれば仕方ないか。
「でも、エリクサーでも駄目ならグンタさんの魔法でも」
「可能性は僅かでも試したい、それに欠損を治す力があっても、おかしくは無い」
「その情報はどちらで」「国家機密だ」「ははっ」「とにかく今、縋れるのはそのグンタしか居ない」
ここまでくると、
国家存亡の危機レベルか、
だからわざわざ国王陛下が単独で。
(度胸が据わっているというか、それだけ必死というか)
俺を公開縛り首直前の状態にしておいて、
グンタが24時間以内に来ないと実行を……
とかやらないだけ平和的な爺さんだ、そんなことされたらさすがに国を捨てるけど。
(もちろんグンタ=グランと確信してやって来てる可能性もあるが)
ティーナさんには別人だって思わせられたと思ったんだけどなあ。
「ではグンタさんに、息子さんの、王子の不妊治療魔法をと」
「魔法でも何でも良い、もう人外にでも何にでも頼るしかない」
「えっグンタさんって人じゃないんですか?」「さあな、ただ昔、王城に紛れ込んだのが居た気もするが」
淫魔校長のことか、
いやいや陛下はどこまで知っているんだ?!
今は緊張して考える余裕は無いが、さて、どうしよう。
「わかりました、もしグンタさんに会ったら伝えておきます」
「頼んだぞ、グランの方から接触できるのであれば急いで欲しい」
「動きがあるんですか」「このままでは婿同士で殺し合いが始まる」「ひえっ」
カロリちゃんが紅茶を持って来た、
メイド姿で……まだそこまで温まってない気もするが、
それを一気に飲み干した陛下、よくよく考えたら毒とか入ってたらどうすんだよ。
(どうこうする理由なんて無いけど)
そして立ち上がった。
「では頼んだぞ、グンタであれば直接来てくれ、直接な」「は、はいっ」
カロリちゃんと並んで頭を下げてお見送り、
ふう、こんな寮まで陛下がわざわざいらっしゃるとは、
さてと考えよう、陛下はどこまで知っているのか、どこから情報を仕入れたのか……。
(考えられるのはやはり……あそこ、か)
というか、
あそこしか考えられないな。




