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【番外編・完結】ソロキャンプは乙女の憩い 10

******



『そうっすね……一貫して、同じなのはあんまり覚えてないということと、犯人はキャンプ上級者でとても物知りだったとか』と西刑事は言っていた。

 暴行を受けたのに、あまり覚えていないということは、もしかしたら被害者たちは何か薬物を飲まされていた可能性がある。

 接触した時点の意識はあり、状況も覚えてはいるが暴行の詳細はあやふやなのだ。

「急ぐぞ」

「あかん、調子狂うわ……お前のその真剣になったら標準語になってまうんは、推理の時だけにしてんか」

「うるさい。それ、今言う事じゃないだろう?」

「はいはい」

 真っ暗な森の奥に、小さな灯りが集まっている。

 カイリと北堂は、その灯りを目指し全力で走っていた。

 ――その時、森の奥から人の争うような物音や、罵声が聞こえてきた。



******



 カイリと北堂が目にしたのは――

 迷彩柄のテントの前で、小柄な中戸園子が、今にも飛びかかってきそうな男たちと対峙している光景だった。

 ざっと数えても、十数名の男が迷彩柄のテント……南条のテントを取り囲んでいる。

 その入り口を守っているのが、中戸園子だった。

「さっさと、そこをどけや!」

「そうじゃ、そのテントの中の綺麗なおねぇさんを渡してもらおうか」

 どうやら、迷彩柄のテントには南条がいるようだ。

「はい、そうですかって私が渡すとでも思う? 私は大事な友達を守る! どっからでもかかってきなさい!!」

「その小さい体で、俺たちに敵うとでも思ってるんだ? ははは!」

 ドッとその場の男たちが笑ったが、中戸は真剣そのもの。

 そんな様子を木の陰から、カイリと北堂とが見ていた。

「あかん、はよ助けたらな……」

「いや、いつき。先に無線で応援を呼んでくれ」

「な、そんなことしてる間に――っ、くそ。わかった!」

 


 北堂が無線で、西刑事に応援を要求していると、男たちが次々と中戸へと飛びかかった。

「うわっ! 園子さんっ! 危ない!」

『ど、どうしたんすっか!?』

「すぐに南条警部補のテントまで応援をお願いします!」

『わわわ! 了解っす!』

 カイリが北堂の無線を奪い取り、応援要請を済ます。

 と同時に、中戸は男たちを次々に投げ飛ばしていた。


「ほな、俺は園子さんのフォローしてくるから、カイリはここで待っとって」

 勢いよく走りだそうとする北堂の服を引っ張るカイリが、「もう出番はないかもしれへん。見てみ」と彼を促した。

「一騎当千ちゅーんは、こういうことを言うんやな。中戸園子、文武両道はホンマやったんや……」

 すると、迷彩柄のテントの前から、中戸が北堂を呼ぶ。

「もう! 二人とも来ていたのなら手伝ってください!」

 地面にはいつくばって、苦しむ男たちを、中戸は紐で足と手を縛る。

「わぁ、これ、全部……ホンマに園子さんが?」

「カイリさん、見ていたんじゃないんですか?」

「ふふふ。良いものを見せてもらったわ」

 そこに、北堂が中戸の側に来て「ケガはないか?」と聞いた。

「私は大丈夫です。それより、私のテントにいる男と、このテントの中の南条さんをお願いします」

 


******



 後日。

 中戸は警察から感謝状を贈られた。


 主犯格の犯人は、中戸に最初に近づいた男、田中だったが彼はホイル焼きを食べていた最中に、中戸が捨てそびれた北堂特製睡眠薬入り紅茶を飲んでしまい、中戸に投げ飛ばされずに済んだ。

 南条は、見回りでテントを空けた時に、男たちのうちの一人が睡眠薬入りの水を荷物に忍ばせた。それを見回りが終わってから飲んでしまったようで睡眠状態に。


 男の魔の手が南条へ忍び寄っていたころ、田中が北堂特製睡眠薬入り紅茶を飲んで眠ってしまったので、慌てて南条にどうしようか相談をしに行った中戸が、南条を狙う男が他の男たちを迷彩柄のテントへ呼んでいたところへ出くわしたようだ。

 タイミングが良かったとしか言いようがないが。

 今回、この男たちが集うサイトも一斉に摘発された。


「それにしても、れみさんは園子さんがあれだけの腕やって、知ってたんやろか?」

 14時間の睡眠を終えたカイリに、北堂がきく。

「さあ。どうやろな……ふぁぁ~」

「お前は知ってたんやろ?」

「……まあ、履歴書に書いてあったからな」

「なんで教えてくれへんねん!」

「お前も履歴書、見てたやないか!」

「覚えてへーん!!!」


 

 ここは大阪淀屋橋・東伯カイリ探偵事務所。

 ビジネス街で、街は美しく整えられている。

 初夏の日差しは、強くアスファルトを跳ね返して気温がますます高くなった。

 東伯カイリ探偵事務所は、そんな街中のレトロビルの四階にある。

 そして、今日も南条れみ警部補はここへ訪れていた。

「中戸。昼は食べたか?」

「いいえ、これからです」

「そうか……じゃ……」

「ええ、行きますか。アフタヌーンティーに」

「ああ。助けてもらったお礼をしたい」

「お礼なんていいですよ。私たち友達でしょ?」

「ふっ……そうだな」


 身長170センチのロングヘアーの南条れみ。

 身長150センチ代のボブヘアーの中戸園子。


 なかなか良い凸凹コンビが、ここに生まれたのかもしれない。



 END


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