【番外編】ソロキャンプは乙女の憩い 8
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一方、大阪淀屋橋・東伯カイリ探偵事務所にいるハズの二人は――
「おい! いつき!! これスピード違反やで!」
「アホ! 高速道路にそんなんあらへん!! まわり見てみ、同じくらいの速度や!」
警察官なのに、警察官なのに……とカイリはきっと思っている。
「オービスに映ってしまっても知らんからな!」
「俺を誰やと思うてんねん! オービスの場所くらい把握しとる! 大丈夫や!!」
大丈夫――?
きっとそんなことはない、制限速度を大幅に超える車両を自動で二十四時間検知する装置だぞ。
運転者である北堂の顔と、この車のナンバープレートを撮影したら、警察官だとより厳しい罰則があるに違いないと思う。知らんけど。
二人が慌てて向かっているのは、中戸たちがいる能勢のキャンプ場だ。
一時間ほど前に大阪府警より、応援要請の連絡が北堂に入ったのだった。
「しかし、もしかしたら犯人は一人じゃないかもしれんって、現場には報告してるんやろか?」
「いや、どうも今回上は、れみさんにもおとりを指示しているらしい……」
「そっか……次の被害者を出さないために、力を入れてるんか」
「あああ~っ、間に合うかなぁ。園子さんは俺が助けるで!!」
北堂は、アクセルを一応は加減して踏み込んだ。
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「中戸さーん!」
呼ばれた声に振り向くと、先ほどの田中すぐるが走ってこちらへと向かってきている。
「どうかしたんですか?」
「はあはあ、いや……あの、一人で食べるのも何なので、一緒に食べないかと誘いに来たんですよ」
「…………」
「あ! いや、ご迷惑ならいいんです!」
「迷惑じゃないんですけど、そうなると、ソロキャンプじゃなくなるというか……」
「げっ! 本当だ」
「ふふふ。田中さん、やっぱりいい人ですね」
「いい人? もしかしてナンパだと思いました?」
「まあ、そんなところです」
すると、田中は中戸のキャンプしている辺りの様子を見て、告げた。
「ありがとうございます。やっぱり移動しませんか。こんな寂しい場所より、僕のいる辺りは、まばらに人もいるし、何かあった時に安全ですから」
中戸は少しためらいを見せる。
それもそのはずだ、だって彼女は遊びに来ているわけじゃない。
だけど、この誘いを断るのも変だ。
『何かあった時に安全』だと心配をしてくれる知らない人に、『何かあった時に安全』じゃ困るんですとは言いづらい。
「やっぱり、嫌ですよね……」
「あ、いえ。そうではないんですけど……そうですよね。じゃあ、移動します」
「やった! それじゃ、移動するのを手伝いますよ」
中戸は、外に出していた荷物などをピンク色の車へとひとまず片づける。
それを田中も手伝ってくれた。
「カセットコンロなんて、頭がいいです。それにホイル焼きなんて、手が込んでますね……いい匂いがします」
田中の言葉の端々に、親しみやすさが滲み出る。
「お手伝いをして下さったので、ごちそうしますよ」
中戸はそういうと、助手席の小型無線をオフにした。
田中は助手席へと乗り込み、彼のテントのある場所まで中戸を誘導し始めた。




