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【番外編】ソロキャンプは乙女の憩い 6

 西刑事の話だと、犯人は長身のイケメンでソロキャンプ上級者を装って、近づいてくるとのこと。中戸は、荷下ろしをする手を一度止めて、辺りをキョロキョロと見渡した。

 今のところ、近くにそのようなイケメンはいない。

「長身のイケメンかぁ……どの程度のイケメンかしらないけど、女子を襲うなんて……このおとり捜査は絶対に成功させないとダメよね!」

 そこへ、中戸のLINEがぴこんと通知を知らせた。

「北堂さんからだ……なになに?」


『ブルーの水筒の中には、睡眠薬入りの紅茶が入ってるから、怪しいヤツが接触してきたら飲ませること』と書かれている。


「……薬!?」

 中戸はきっとこう思っていることだろう……(警察官がそんなことをしてはいけないと思うよ)と。

 ブルーの水筒を手にして、中戸はまっすぐに近場の水場へと中身を捨てに行くことにした。

 中戸の善人センサーは、通常通り働いているようだ。

「北堂さんを犯罪者にするわけにはいかないものね」

 そう呟きながら、ブルーの水筒の蓋を開け始めると――


「こんにちは。今日はいい天気ですね」と中戸に声をかける男の声があった。

「ひぇっ……!」

「あ……すみません。驚かせちゃいましたね」

 中戸が、恐る恐る振り返り、見上げた先には、まぶしい白いTシャツが目に入る。

 そこから少し視線を上げると、人の良さそうな男が微笑んでいた。

「背の高い……イケメン……」

「ん? 何か言った?」

 彼女のつぶやきは幸い彼に聴こえなかったようで、中戸は思いきり手を左右に振って、何でもないフリを装った。

「あ、いいえ。キャンプですか?」と次に中戸の咄嗟に口から出た言葉は、何とも拍子抜けする。

「ここはキャンプ場だからね」

 当たり前のことを聞いて、当たり前のように返される。

「あ……そ、そうですよね。ははは……」

「面白い人だね。今日は誰かと来ているの?」

「……いえ。初めてのソロキャンプなんです」

「奇遇だね、僕も初めてのソロキャンプでなんだ」

「初めて?」


『犯人は長身のイケメンでソロキャンプ上級者を装っている――』

 先ほどの西刑事の情報が、中戸の頭の中によみがえる。

 

 あれ? 犯人はソロキャンプ上級者ではないのか?

 中戸の脳内は疑問符が浮かんでいるのか、何かが違うといった目で、彼を見つめた。

「そう。初めてだから、肉を落としちゃって……それで洗いに来たんだけど、水道使ってもいいかな?」

「ああっ!? すみません! 私、邪魔でしたか! ど、どうぞ!!」

「ハハハッ、邪魔なんかじゃないよ。けど、助かるよ」

 そう言って、彼は水場で砂にまみれた肉を洗い始めた。


 


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