【番外編】ソロキャンプは乙女の憩い 5
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いよいよ、おとり捜査の当日。
朝から、ピンク色の軽自動車に乗った中戸は、高速を使い、一路能勢へと向かっている。
その後を一定の距離を保ち走行している警察の車が一台……しかし、ちゃんとカムフラージュされていて、はた目には荷物を運んでいるバン、冷凍車だ。
冷凍車の中身は荷物ではなく、南条たちの捜査本部となっている。ここから、ピンクの車の中戸と無線でやり取りをしていた。
『中戸、次の出口を降りてくれ』
無線から南条の声が軽自動車内に響く。
「わかりました。次の出口ですね、了解です!」
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「ああああああ……なあ、カイリ。俺ら、ホンマについていかんで良かったんか?」
留守番組の北堂とカイリは、淀屋橋の事務所で朝食を食べていた。
落ち着かない様子の北堂と、黙々と美しく食事をしているカイリ。
「なあ! お前は中戸さんのことが心配じゃないんか!?」
カイリは、ナイフとフォークを置くと、静かに顔をあげた。
ちなみに、今朝は北堂特製フレンチトーストとミルクティーというメニューだ。
ふわふわのフレンチトーストは、バニラの香りがして、事務所の空気を甘く満たしていた。
「おまえなぁ……黙って応援するんちゃうかったんか?」
「それは……」
「まあ、大丈夫や。れみさんも、みんなおるんやから」
「うぅっ」
きっと北堂は、自分もついていけば良かったと思っているのだろう。
それをカイリもわかっているが、半ば呆れているようにもみえた。
「ほら、ちゃんと朝食は食べんと。なんかあった時に動かれへんで?」
「え? カイリ、それって……」
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その頃。
中戸の車は高速を降り、能勢のキャンプ場へと到着する。
『中戸、お疲れさん。だが、これからが任務だ。頼むぞ』
「わかりました」
『何かあれば、スマホで連絡してくれ。私も500メートルくらいの場所でテントを張って様子を見ているから』
「それは、心強いです。ありがとうございます!」
南条との無線でのやり取りが終わると、中戸は車を降りた。
天気も良く、少々暑いくらいだが心地よい風が吹いている。
「んーっ! やっと着いた!」
車の側に、小さなテントを張って日よけのテントも設置する。
ソロキャンプ初心者なので、炭などで火を起こすようなことはせず、カセットコンロを取り出した中戸。
「さすが、北堂さん。仕込んできたお肉を焼くだけなんて、楽ちん」
中戸は、食事の支度をしながら、昨日、西刑事から聞いていた犯人の目撃情報を思い出していた。
それは、暗闇で襲われた女性たちから集められた非公開の情報だった。




