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【番外編】ソロキャンプは乙女の憩い 4

******



 翌日の朝、東伯カイリ探偵事務所では……

『乙女の憩い』というソロキャンプのサイトには、中戸のアカウントが発行されていた。

 もちろん、身バレしない程度には配慮されている。

 男子禁制とされているこのサイトだが、実際にはどうだかわからない。

 とくに、アカウント発行時に本人確認などをしないようなサイトでは、利用者の自己申告によって任されている。なので、女性だと偽って登録している者もいるかもしれない。

 ネットとはそういうものだ。

 ただ、サイト管理者に関しては女性だったことが、捜査上裏付けられていた。


「わぁ。これが私のアカウントなんですね」

 南条警部補の持ってきたタブレット端末を中戸も覗き込む。

「そうだ。この投稿は西がしたものだが、明日はこの画像の車に乗って行ってもらう」

 可愛らしいベビーピンク色の軽自動車の画像を見て、中戸は嬉しそうに言う。

「かわいいですね! ソロキャンプなんて初めてだから嬉しいです。たしか……場所は、能勢でしたよね」

「そうだ。現地までは、カーナビに登録しているから安心してくれ。あと、ウイッグも用意した」

 南条は紙袋の中から、ロングヘアのウイッグを取り出すと、おかっぱ頭の中戸へと手渡す。

 この女子二人のやり取りは、ずっとカイリと北堂が眺めていた。

 ただ北堂いつきだけは、不機嫌極まりない様子だったが。

 

『ソロキャンプ初心者でーす! ハンドルネーム・そのちゃん、二十五歳独身OL……』 

「何が、そのちゃんだ……年齢も詐称やないか」

 とわざと聞こえる声で言う北堂に、本当は二十八歳の中戸はウイッグを被って言った。

「私がお役に立てるなんて、事務所的にも良いことじゃないですか。いつもは、カイリさんや北堂さんの後ろで何もできていないんです。今回は、黙って応援してください!」

「うっ……」

 その様子を見ていたカイリが大笑い。

 口元を抑えて、よろめく北堂も大事な事を思い出したようだ。

「俺、すっかり忘れてたわ……中戸さんが超がつくほどの『お人よし』やっていうこと!!」


 入念な打合せが終わった後、南条は中戸に「明日は頼む」と告げ帰って行った。

「車は、明日の朝に西刑事が、このビルの下に乗ってくるんやって?」

 とカイリが中戸の背後から声をかけた。

「はい。何だかドキドキしますね」

「運転、大丈夫なん?」

「久しぶりなので、そっちもドキドキです」

 すると、北堂が仏頂面のまま、中戸に声をかける。

「……ほな、キャンプ用の食材やら買いに行こか。現地で簡単にできるもん、教えたる」

 北堂は、目を輝かせた中戸を連れて、事務所を後にした。

「いつき、そない心配せんでもええと思うで」と、ひとり事務所に残された、そんなカイリのつぶやきは、北堂に届くことはないのだろう。


 暮れていく、大阪淀屋橋。

 北堂と中戸の凸凹な長い影が、歩道には並んでいた。



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