【番外編】ソロキャンプは乙女の憩い 2
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「園子さん、大丈夫やろか……」
中戸が北堂の背後から顔を出した瞬間に、南条が彼女の腕を引っ張って連れて出て行ったことを思うと心配でならない様子の北堂が呟く。
「まあ、大丈夫やろ」
女子二人が探偵事務所を出たあとに起きてきた、カイリが気に病む様子もなく微笑んだ。
そこへ、また新たな訪問者がやってきた――それは、西刑事だった。
彼は四階まで上がってきて息が切れている。
何も言わず、汗をハンカチで拭きながら、言葉が出ない様子だった。
そんな、西刑事を冷めた目で見下ろして、北堂が告げた。
「西。れみさんなら、さっき園子さんを連れて出て行ったで。一体、彼女に依頼って何の依頼や?」
西刑事は胸に右手を当て、左手で北堂に『ちょっと待て』というような合図をおくる。
「まあまあ、いつき。先に西刑事に水を」
「しゃーないな。水を飲んだら白状してもらうからな!」
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その頃、南条と中戸は淀屋橋にある、オフィス街の地下に広がるイングリッシュガーデン風なカフェに来ていた。可愛い丸テーブルに向かい合わせで座る女子二人。
運ばれてきたアフタヌーンティーのティ―スタンドは、中戸の目に色あざやかに映る。
三段のティ―スタンドの下一段目にはセイボリーという軽食に、二段目にはスコーンとクロテッドクリームとジャム。一番上の三段目にはケーキなどのスイーツが並べられている。
「悪いな、付き合わせて。昼がまだだったんだ」
優雅に紅茶を自身のポットから、カップへと注ぐ南条を見て、目を丸くしているのは、中戸だった。
きっと、(南条警部ってこんな可愛いお店に来るんだ――)と思っているに違いない。
「あ、いいえ。私もお昼まだでしたから。それにしても、素敵なお店ですね」
「そうだろう? 女同士はこういう店に来るものだと聞いた。あいにく、私は女友達というモノがいないので、いつも一人できているのだが」
「そうなんですね」
中戸はにっこりと南条に笑って見せ、自分もカップに紅茶を注いだ。
立ちのぼる茶葉の香り、セイボリーのミニサンドウィッチを手に、二人無言で食事を開始する。
静かな時間。
店内には、軽やかなジャズが流れている。
食事が、ティ―スタンドの三段目のスイーツへと進んだ頃、中戸はしびれを切らして南条に質問を投げかけた。
「あの……ところで、私に依頼ってなんでしょう?」
南条は、相変わらずの無表情で顔をあげた。
そして「おとりになってほしい」と一言、中戸へと告げた。
続く ※近日更新!




